加算・算定実務

訪問介護の特定事業所加算とは?【令和8年度】Ⅰ〜Ⅴの算定要件・加算率と月いくら増えるか

訪問介護の職員と笑顔の高齢の女性

結論(この記事でわかること)

ミナ

訪問介護の管理者から「うちは特定事業所加算のどの区分まで取れるか調べて」と頼まれました。そもそも、どのくらいの加算なんですか?

ジムチョー

訪問1回ごとの単位数に、(Ⅰ)なら20%、(Ⅱ)(Ⅲ)なら10%、(Ⅳ)(Ⅴ)なら3%を上乗せする加算なんだ。所定単位数が月16万単位の事業所なら、(Ⅱ)で月16万円ほど、(Ⅰ)なら32万円ほどになるよ。

ミナ

率で上乗せされるので、訪問が多い事業所ほど額が大きくなるんですね。

ジムチョー

そういうことだね。そのぶん、研修や会議の記録、介護福祉士の割合のどれか1つが崩れると、まとめて返還になることもあるんだ。区分を選ぶときは、要件を毎月保てるかまで考えておこう。

訪問介護の特定事業所加算は、身体介護・生活援助・通院等乗降介助の1回ごとの所定単位数に、区分ごとの率(加算率)をかけて上乗せする加算。2024年度(令和6年度)改定で区分が組み替わり、令和8年度改定(2026年6月の処遇改善加算の拡充と、食費の基準費用額の見直し)では変わっていない。居宅介護支援(ケアマネジャーの事業所)の特定事業所加算は別の加算で、要件も違う(居宅介護支援の特定事業所加算)。

区分加算率取るための主な条件
(Ⅰ)20%体制要件+介護福祉士等の割合とサービス提供責任者(以下サ責)の資格・経験+重度者20%以上か看取り期の対応
(Ⅱ)10%体制要件+介護福祉士等の割合かサ責の資格・経験
(Ⅲ)10%体制要件+常勤サ責の上乗せ配置か勤続7年以上30%以上+重度者20%以上か看取り期の対応
(Ⅳ)3%体制要件+常勤サ責の上乗せ配置か勤続7年以上30%以上
(Ⅴ)3%体制要件+中山間地域等(片道7km超)の利用者への継続的な訪問と、訪問介護計画の随時の見直し

(Ⅰ)〜(Ⅳ)はどれか1つしか取れない。(Ⅴ)だけは(Ⅰ)〜(Ⅳ)と一緒に取れる。事務長・管理者が押さえる点は3つ。

  1. 体制要件は5つとも記録で証明する。研修計画、会議、指示と報告、健康診断、緊急時の対応方法の明示
  2. 割合は常勤換算で、前年度(3月を除く)か届出前3か月の平均で見る。前3か月で届け出たら毎月記録する
  3. (Ⅰ)(Ⅱ)は処遇改善加算Ⅰの条件でもある。落とすと処遇改善加算の率も2.1ポイント下がる

自社の加算の合計額は加算算定シミュレーターで概算できる(1回ごとの四捨五入はしないので、下の計算例と数十単位ずれることがある)。

区分ごとの算定要件(2024年度改定後・令和8年度も同じ)

チェックの入った用紙と家の模型
ミナ

要件の表を見ると、どの区分にも「体制要件」が入っていますね。

ジムチョー

5つの区分に共通の土台なんだ。研修計画、会議、指示と報告、健康診断、緊急時の対応方法の明示。ここが崩れると、どの区分も取れなくなるよ。

ミナ

(Ⅴ)はほかの区分と一緒に取れるんですよね。(Ⅰ)と(Ⅲ)も両方取れますか?

ジムチョー

(Ⅰ)から(Ⅳ)の中では1つだけなんだ。一緒に取れるのは(Ⅴ)だけで、その(Ⅴ)も特別地域加算や中山間地域の2つの加算とは一緒に取れないから、そこは気をつけよう。

体制要件(全区分に共通)

要件内容残す記録
研修計画登録ヘルパーを含む全ての訪問介護員等とサ責に、1人ずつ目標・内容・期間・実施時期を定めた研修計画を作り、研修(外部研修を含む)を実施または予定する全体と個別の研修計画、受講の記録
会議利用者の情報や留意事項の伝達、技術指導のための会議をおおむね月1回以上。サ責が主宰し、登録ヘルパーを含む全員が参加(グループ別、テレビ電話装置等も可)会議の概要の記録
指示と報告サ責が担当ヘルパーに、利用者のADLや意欲、主な訴え、家族を含む環境、前回の状況などを文書等(手渡し・FAX・メール等)で伝えてから始め、終了後に報告を受ける指示と報告の記録
健康診断常時使用する労働者に当たらないヘルパーも含め全員に、1年以内ごとに1回以上、事業主の費用で健診の実施の記録
緊急時等の対応方法の明示対応方針・連絡先・対応できる時間などを書いた文書を利用者に交付して説明(重要事項説明書への記載で可)重要事項説明書

新たに算定するときの健康診断は、1年以内に実施する計画があれば足りる。会議は、認知症専門ケア加算の会議と同じ日に開き、議題に認知症ケアの技術指導を含めて全員が参加すれば、両方を開いたものと数えられる(Q&A Vol.1 問24。認知症専門ケア加算)。

人材要件と重度者等対応要件

要件内容使う区分
介護福祉士等の割合訪問介護員等の総数(常勤換算)のうち介護福祉士が30%以上、または介護福祉士・実務者研修修了者等の合計が50%以上(Ⅰ)は必須。(Ⅱ)はサ責の要件とどちらか
サ責の資格・経験全てのサ責が実務経験3年以上の介護福祉士か、5年以上の実務者研修修了者等。基準でサ責を2人以上置く事業所は常勤のサ責が2人以上(Ⅰ)は必須。(Ⅱ)は介護福祉士等の割合とどちらか
常勤サ責の上乗せ配置基準で置く常勤のサ責が2人以下の事業所で、基準のサ責を常勤で置き、さらに常勤のサ責を1人以上多く置く(Ⅲ)(Ⅳ)は勤続年数とどちらか
勤続7年以上の割合訪問介護員等の総数(常勤換算)のうち勤続7年以上が30%以上(Ⅲ)(Ⅳ)は常勤サ責の上乗せ配置とどちらか
重度者の割合利用者のうち要介護4・5、認知症の日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等が必要な人が20%以上(Ⅰ)(Ⅲ)は看取り期の対応とどちらか
看取り期の対応24時間連絡体制、対応方針と同意、見直し、研修をそろえ、看取り期の利用者(医師が回復の見込みがないと診断した人)への対応が1人以上(下の表)(Ⅰ)(Ⅲ)は重度者の割合とどちらか

サ責は、利用者40人またはその端数を増すごとに1人以上置く(常勤が原則で、利用者数に応じて常勤換算も可。一定の体制では50人ごと。居宅サービス基準第5条第2項・第5項)。

(Ⅴ)は、通常の事業の実施地域の中で中山間地域等に住み、最寄りの訪問介護事業所までの実際の移動距離が片道7kmを超える利用者に継続的に訪問していることと、サ責が起点となって関係者と共同し、訪問介護計画を随時見直していることが条件。見直しのためだけに会議や書類を新しく作る必要はない(同 問5)。月の途中で転居した利用者は、中山間地域等に住んでいる間に訪問していれば、その月の利用実人員に数えてよい(令和6年11月のQ&A Vol.11 問1。Vol.1 問4は削除)。(Ⅴ)は特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算とは一緒に取れず、これらを算定している利用者は(Ⅴ)の人数に数えない(Vol.1 問3)。

2024年度改定では、旧(Ⅳ)(要介護3以上などの利用者60%以上)を廃止し、勤続年数の旧(Ⅴ)を新しい(Ⅳ)にして、中山間地域の(Ⅴ)を新設した。(Ⅰ)(Ⅲ)の重度者要件に看取り期の対応が加わり、(Ⅲ)には人材要件が加わった。訪問介護にはサービス提供体制強化加算がない(サービス提供体制強化加算の記事)。

看取り期の対応要件で整える体制と記録

(Ⅰ)(Ⅲ)は、重度者20%以上の代わりに、看取り期の対応でも取れる。次の4つをそろえる(告示 第3号イ(7)(二)、留意事項通知)。

要件内容と残す記録
24時間連絡できる体制看護師のいる病院・診療所・訪問看護ステーションと連携し、夜間も連絡でき、必要なら呼び出しに応じて出勤できる体制(常駐は不要。Q&A Vol.1 問2)。連携先との夜間の取り決め、観察項目の一覧、職員への周知を残す
対応方針と同意管理者を中心に、介護職員・看護職員・ケアマネジャー等で協議して方針を定め、利用開始の際に説明して同意を得る。方針には、連携体制、同意・意思確認の方法、同意書の様式、職員の対応などを入れる。口頭の同意は日時と内容を介護記録に残す
見直しと研修方針は、医師・看護職員・訪問介護員等・ケアマネジャー等の意見を踏まえ、実績に応じて見直す(会議の場でなくてもよい。同 問14)。看取りの職員研修も行う
対応実績医師が回復の見込みなしと診断し、方針に基づく説明を受けて同意した利用者が1人以上。身体状況の変化と、本人・家族の意向と対応の経過を介護記録に残す

実績は、前年度(3月を除く)に1人でも対応していれば翌年度は通年で、なければ算定する月の前3か月に1人以上いるかで月ごとに決まる(令和6年5月のQ&A Vol.6 問1。Vol.1 問1は削除)。入院後も家族や医療機関と関わり続けるため、医療機関が事業所へ本人の状態を伝えることを、入院のときに本人・家族へ説明して文書で同意を得ておく。

どの区分を目指すか

どの区分も体制要件が前提。次の計算例の事業所では、(Ⅰ)と(Ⅱ)の差が月158,000円になる。

事業所の状況目指す区分
介護福祉士等の割合か、全サ責の資格・経験のどちらかを満たす(重度者・看取りの要件はない)(Ⅱ)10%
介護福祉士等の割合と全サ責の資格・経験の両方を満たし、重度者20%以上か看取り期の対応もある(Ⅰ)20%
勤続7年以上30%以上か常勤サ責の上乗せ配置があり、重度者20%以上か看取り期の対応もある(介護福祉士の割合・サ責の資格は問わない)(Ⅲ)10%
勤続7年以上30%以上か常勤サ責の上乗せ配置だけある(Ⅳ)3%
片道7km超の中山間地域等の利用者に継続して訪問している(Ⅴ)3%を上乗せ

割合は毎月動く。いまの数字だけでなく、介護福祉士やサ責の退職・採用の予定を入れて、3か月先も保てる区分を選ぶ。

割合の計算方法と毎月の確認

電卓のテンキー
ミナ

介護福祉士の割合は、ヘルパーの人数で数えればいいですか?

ジムチョー

人数ではなく常勤換算なんだ。登録ヘルパーも入れて、前年度の4月から2月の平均か、届出の前3か月の平均で出すよ。

ミナ

前3か月の平均で届け出た場合は、そのあとも見ておく必要がありますか?

ジムチョー

そこが大事なところなんだ。直近3か月の割合を毎月記録して、下回ったら直ちに届け出ることになっているよ。記録がないと、満たしていたことも示せないからね。

割合分母数え方期間
介護福祉士等の割合訪問介護員等の総数(登録ヘルパーを含む)常勤換算。資格は各月の前月末日の時点で取得している人。生活援助従事者研修の修了者は0.5をかける前年度(3月を除く11か月)か、届出日の属する月の前3か月の1か月あたりの平均
勤続7年以上の割合同上常勤換算。勤続年数は各月の前月末日の時点で数える同上
重度者の割合利用者の総数利用実人員か訪問回数同上
看取り期・中山間地域等の利用者—利用実人員で1人以上(中山間は1か月あたりの平均で)前年度(3月を除く)か前3か月

常勤換算の出し方そのものは、人員基準の計算と同じ考え方になる(常勤換算の数え方)。重度者の割合は、たとえば前3か月の利用実人員が月平均60人で、要介護4・5が9人、要介護3以下で認知症の自立度がⅢ以上の人が4人なら、(9+4)÷60=21.7%で、20%以上になる。

  • 前年度の平均で届け出た事業所は、年度の途中で人が辞めても、その年度の判定の数字は変わらない。影響は翌年度に出る。ただし、サ責の資格・経験や常勤サ責の人数、体制要件のように平均で見ない要件は、満たさなくなった日から算定できない
  • 勤続年数は同一法人等で通算する。同じ法人の他の事業所や病院・社会福祉施設で直接サービスを提供した年数、産前産後休業・病気休暇・育児休業・介護休業の期間も含める(Q&A Vol.1 問7・問8)
  • たんの吸引等が必要な利用者を数えられるのは、喀痰吸引等の登録を受けた事業所だけ

月あたりいくらか(計算例)

1か月に身体介護(30分以上1時間未満、387単位)を300回、生活援助(45分以上、220単位)を200回提供する事業所と仮定する。所定単位数は 387 × 300 + 220 × 200 = 160,100単位。同一建物減算、夜間・早朝の加算、2人での訪問はなく、地域区分は「その他」(1単位10円)とする。1単位の単価は地域区分で変わり、級地が上がるほど金額も増える(地域区分と1単位の単価)。

率をかける加算は、1回ごとの単位数にかけて、そのたびに四捨五入する(老企第36号 第二の1(1))。

区分1回あたり(身体介護/生活援助)月の加算単位月額年額
(Ⅰ)20%464/264単位(+77/+44)77 × 300 + 44 × 200 = 31,900単位319,000円3,828,000円
(Ⅱ)(Ⅲ)10%426/242単位(+39/+22)39 × 300 + 22 × 200 = 16,100単位161,000円1,932,000円
(Ⅳ)(Ⅴ)3%399/227単位(+12/+7)12 × 300 + 7 × 200 = 5,000単位50,000円600,000円

月額は、保険給付と利用者負担(1〜3割)を合わせた金額。(Ⅴ)は、告示(訪問介護費の注10)が算定する利用者の居住地を限っていないので、事業所の全訪問にかけて計算した。運用は指定権者の案内でも確かめる。

要件を1つ割ったときに失う額

(Ⅱ)を介護福祉士の割合で取り(サ責の要件は満たしていない)、処遇改善加算はⅠイ(訪問介護は27.0%)の事業所とする。訪問介護員等の常勤換算10.0のうち介護福祉士が3.2(32%)で、常勤の介護福祉士1人(1.0)が辞めて介護福祉士でない人を採用すると、2.2 ÷ 10.0 = 22%。辞めた月を含む直近3か月の平均でも(3.2 + 3.2 + 2.2)÷ 30.0 = 28.7%で、30%を下回る。

項目計算月額
特定事業所加算(Ⅱ)がなくなる16,100単位 × 10円161,000円
処遇改善加算がⅠイ(27.0%)からⅡイ(24.9%)に下がる176,200単位 × 27.0% = 47,574単位 → 160,100単位 × 24.9% = 39,865単位。差は7,709単位77,090円
合計161,000 + 77,090238,090円(年2,857,080円)

処遇改善加算は、処遇改善加算を除く総単位数に率をかけるので、(Ⅱ)があれば 176,200単位が元になる。処遇改善加算は全額を賃金に回すので利益ではないが、賃金改善の原資が減る。

前3か月の平均で届け出た事業所がこれに気づかず6か月算定を続ければ、特定事業所加算だけで少なくとも161,000円 × 6か月 = 966,000円(利用者負担分を含む)を返す。処遇改善加算の差額の扱いは指定権者に確かめる。利用者が払いすぎた負担分も利用者ごとに返す(老企第36号 第一の6。手続きは過誤申立と返戻の手順)。

ミナ

介護福祉士が1人辞めただけで、処遇改善加算まで下がって、月24万円近く減るんですね。

ジムチョー

訪問介護では、特定事業所加算の(Ⅰ)か(Ⅱ)が処遇改善加算Ⅰの条件になっているからね。2つの加算が一緒に動くことを、先に数字でつかんでおくといいよ。

ミナ

うちの事業所に置き換えるときは、どこを変えればいいですか?

ジムチョー

1か月の所定単位数と、いまの常勤換算の人数だね。退職や採用の予定を入れて、直近3か月の割合が月ごとにどう動くかを並べておこう。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

置き時計とノート
ミナ

加算を新しく取るとき、最初に何から手をつければいいですか?

ジムチョー

まず研修計画と会議の形を整えて、割合を計算するところからだね。届出は、算定を始める月の前月15日までに出せば翌月から、16日以降だと翌々月からになるよ。

時期作業担当帳票
年度の初め全体と1人ずつ(登録ヘルパー・サ責を含む)の研修計画を作る管理者・サ責研修計画(全体・個別)
毎月1回以上サ責が会議を主宰し、欠席者にも内容を伝えるサ責会議の記録
訪問のたび文書等で指示してから訪問し、終了後の報告を記録するサ責・ヘルパー指示と報告の記録
年1回以上全員の健康診断を事業所の費用で行う事務長健診の受診一覧
毎月末介護福祉士等・勤続7年以上・重度者の割合を出して記録する事務長勤務形態一覧表、割合の計算表、利用者の状況の一覧
3月前年度(4月〜2月)の平均で、翌年度も要件を満たすか判定する事務長割合の計算表(年間)
算定を始める月の前月15日まで体制届を出す(16日以降は翌々月から)事務長体制等届出書、体制等状況一覧表、特定事業所加算の届出書と添付書類(書類の例は「よくある質問」)
サ責の退職・異動が決まった日サ責の資格・経験と常勤サ責の人数が保てるか確かめる管理者・事務長サ責の経歴書、勤務形態一覧表
要件を満たさなくなった日その日から算定せず、速やかに届け出て介護ソフトの設定を戻す事務長体制届(変更)

届出の期限と算定開始月の関係は体制届の提出期限と同じ。毎月の確認は、ほかの加算とあわせて1枚の台帳にしておくと漏れにくい(加算の算定管理の仕組み化)。

よくあるつまずき

ミナ

研修計画は、事業所全体の年間スケジュールを出せば足りますか?

ジムチョー

それだけだと不備になりやすいんだ。1人ずつ目標・内容・期間・時期を書いた計画も要るよ。東京都も、全員が同じ目標の計画を不備の例に挙げているんだ。

ミナ

登録ヘルパーの健康診断は、希望する人だけでもいいですか?

ジムチョー

それは避けたほうがいいね。常時使用する労働者に当たらないヘルパーも含めて、全員を事業所の費用で受けさせるのが要件なんだ。受診の予定と結果を一覧にしておこう。

  • 研修計画が全体のスケジュールだけ、全員が同じ目標。東京都の不備事例に挙がっている。外部研修の費用を職員が負担している場合も、事業者が実施しているとは言えないとされる
  • 会議が経営の定例会議やサービス担当者会議になっている。収支や利用者数の報告の会議は、この要件の会議にならない。欠席者に内容を伝えていないのも不備の例
  • 指示が初回訪問時の手順書だけ、報告が「OK」だけ。前回の状況を踏まえて毎回伝え、報告は何に対するものかが分かるように残す
  • 健康診断が常勤だけ、希望者だけ、本人負担。東京都の不備事例には、受診する医療機関や予定時期の記載がない例、検査項目(11項目)が足りない例も挙がっている
  • 緊急時の対応方法が、事業所内のマニュアルのまま。利用者に交付して説明した文書(重要事項説明書など)が要る
  • 届出に使う「前3か月」がずれる。5月1日から算定する届出を4月10日に出すなら、1〜3月の実績で判断し、サ責の勤務形態一覧表は3月分を出す(東京都の不備事例)
  • 前3か月で届け出たのに、毎月の割合を記録していない。下回った月に届け出ていなければ、その月からの算定は返還の対象になる
  • サ責の交代で要件が崩れる。サ責の資格・経験で(Ⅱ)を取っている事業所は、後任も実務経験3年以上の介護福祉士などでなければ満たさない

よくある質問

ミナ

管理者から、指示の書き方や届出の書類について質問が来ています。まとめて答えられるようにしたいです。

ジムチョー

質問の多いところは、根拠の通知と一緒に答えを決めておこう。現場も事務も迷わなくなるよ。

指示と報告は、訪問のたびに必要ですか?

必要。サ責が文書等(手渡し・FAX・メール等)で利用者の情報と留意事項を伝えてから訪問を始め、終わったら報告を受けて記録を保存する。前回の状況以外は変わったときだけ書けばよく、同じヘルパーが同じ利用者を1日に複数回訪ねる場合は、体調の急変などがなければ省略できる。サ責が不在のときは、事前の一括指示と事後の報告でもよい(留意事項通知 第2の2(14)①ハ)。

サ責が実務者研修修了者でも、(Ⅰ)(Ⅱ)のサ責の要件を満たせますか?

実務経験が5年以上あれば満たせる(介護福祉士は3年以上)。実務経験は、サ責としての期間ではなく、在宅か施設かを問わず介護に関する業務に就いた期間で、資格を取る前も含む。全てのサ責が対象で、1人でも満たさなければ要件を満たさないが、(Ⅱ)は介護福祉士等の割合で取る方法がある(告示 第3号イ(6)、留意事項通知)。

開業したばかりの事業所でも取れますか?

前年度の実績が6か月に満たない事業所(新規・再開を含む)は、前年度の実績では届け出られず、届出日の属する月の前3か月の実績で届け出る。届出のあとも、直近3か月の割合を毎月記録して維持する。実績が3か月分そろう前の届出の扱いは、指定権者に確かめる(留意事項通知)。

届出はどこに、いつまでに、何を出しますか?

指定権者(都道府県、指定都市・中核市)に、電子情報処理組織を使う方法で届け出る(告示の注10)。毎月15日までなら翌月から、16日以降なら翌々月から算定できる(留意事項通知 第一の1(6))。書類は指定権者で違い、大阪府は区分に応じて、届出書(別紙9。(Ⅴ)は別紙9-2)、個別の研修計画、要件確認表、全サ責の資格者証の写しと実務経験証明書などを求めている。提出前に指定権者の案内で確かめる。

特定事業所加算のメリットとデメリットは何ですか?

メリットは、率で上乗せされるので訪問が多いほど増収が大きいこと(計算例では(Ⅱ)で年1,932,000円)と、(Ⅰ)(Ⅱ)で処遇改善加算Ⅰの条件を満たせること。デメリットは次の3つ。(1)利用者負担が加算の分だけ増え、限度額いっぱいまで使う人は限度額を超えることがある。(2)研修・会議・健康診断の費用と時間、毎月の割合の記録がかかる。(3)要件を満たさなくなった日から算定できず、気づかず続けると返還になり、(Ⅰ)(Ⅱ)は処遇改善加算にも響く(額と手間の比べ方は次の節)。

経理・管理側の視点

ミナ

加算率が高いので、取れる区分は全部取りに行けばいいと思っていました。

ジムチョー

額は大きいけれど、利用者の負担と限度額にも響くんだ。限度額いっぱいまで使っている人は、加算の分で限度額を超えることがあるから、先にケアマネジャーと話しておこう。

算定構造の資料で支給限度額管理の対象外とされているのは特別地域加算、中山間地域の2つの加算、処遇改善加算などで、特定事業所加算は含まれていないので、利用者負担にも限度額の計算にも入る。届出を前月15日までとしているのも、利用者やケアマネジャーに知らせる期間をとるためとされている(老企第36号 第一の1(6))。

経理で持っておく数字は3つ。

  1. 加算の額と処遇改善加算への影響。計算例では(Ⅱ)が月161,000円、落ちると処遇改善加算とあわせて月238,090円減る。2つを1組で管理する(処遇改善加算の区分と要件)
  2. 要件を保つ費用。健康診断は登録ヘルパーを含む全員分を事業所が負担する。指示による研修の時間と、業務として求める報告書の作成時間は労働時間になり(基発第0827001号)、参加を指示する全員参加の会議も同じ考え方になる。仮に登録ヘルパー20人が月1時間の会議に出て時給1,500円なら年360,000円で、(Ⅱ)の年1,932,000円と比べて判断する。扱いに迷う点は社労士に確かめる
  3. 割合の月次の推移。介護福祉士等・勤続7年以上・重度者の割合を毎月並べ、サ責の退職予定とあわせて見る。区分が落ちる月を先に知れば、採用や区分を下げる届出を前もって決められる

研修計画、会議録、指示と報告の記録は、運営指導で加算の根拠として見られる書類でもある(運営指導で確認される書類)。

ミナ

割合の月次の推移と、サ責の要件、それに処遇改善加算との関係。この3つを毎月見ればいいんですね。

ジムチョー

そうだね。辞める人が出たときに、どの区分がいつ落ちて月いくら減るかを、その場で答えられるようにしておこう。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。