加算・算定実務

加算の算定管理をどう仕組み化するか|加算管理台帳と月次チェックの作り方

結論(この記事でわかること)

ミナ

先月、加算の届出を1日遅らせてしまって、1ヶ月分が算定できませんでした。どうすれば防げますか?

ジムチョー

同じ原因で取りこぼしも返戻も起きるんだ。「どの加算を、どの要件で、誰が、いつ確認しているか」が1枚にまとまっていない。要るのはシステムではなくて、台帳と月次チェック、それに変更のきっかけの一覧だよ。

加算の取りこぼしと返戻・返還は、同じ原因から起きる。「どの加算を、どの要件で、誰が、いつ確認しているか」が1枚にまとまっていないことだ。仕組み化に必要なのは高度なシステムではなく、次の3つ。

  1. 加算管理台帳。加算ごとに区分・単位・年額・要件・根拠書類・担当・確認頻度・次回期限を1行で持つ
  2. 月次チェック。人員の割合、回数の上限、届出の有無を毎月同じ日に確認する
  3. 変更トリガーの一覧。退職、利用者数の変動、改定のどれが起きたら、どの加算を見直すかを決めておく

通所介護で加算の合計が月43万円(年間520万円)の事業所なら、体制届の1日の遅れで13万円、人員割合の見落としで数ヶ月分の返還が出る。台帳の維持にかかる工数は月2時間程度で、この額と比べれば安い。自社の加算の合計額は加算算定シミュレーターで出せる。

加算管理台帳の作り方

ミナ

10列もあるんですね。どれが一番大事ですか?

ジムチョー

「現在の余裕」の列だね。加算が落ちるまでの距離を示すんだ。この列が小さい加算から、採用や研修を動かしていこう。

台帳は加算1つにつき1行。列は次の10項目で足りる。

内容例(サービス提供体制強化加算)
加算名・区分算定中の区分(Ⅰ)
単位・算定単位単位数と1日/1月/1回22単位/日
月額・年額直近の実績から132,000円/月、1,584,000円/年
要件の要約数値で書ける要件は数値で介護福祉士の割合70%以上(前年度の常勤換算平均)
根拠書類運営指導で出す書類勤務形態一覧表、資格証の写し、割合の計算書
確認の頻度月次/四半期/年次月次(割合の再計算)
担当確認する人と代替者事務長(代替: 管理者)
次回期限届出・報告・評価の期限4月(前年度平均の確定)
変更トリガー何が起きたら見直すか介護福祉士の退職、介護職員の採用
現在の余裕要件に対する余裕割合74%(あと1人の退職で70%を割る)

「現在の余裕」の列が最も重要で、加算が落ちるまでの距離を示す。この列が小さい加算から採用や研修を動かす。

月次チェックの項目

毎月同じ日(請求前の月末など)に、台帳を上から確認する。

種類チェック内容使う帳票
人員の割合介護福祉士の割合、常勤換算、勤続年数の割合勤務形態一覧表、資格・勤続の一覧
回数の上限口腔機能向上加算は月2回、口腔・栄養スクリーニングは6月に1回など介護ソフトの算定回数一覧
期限のある提出LIFEの翌月10日、処遇改善の計画書・実績報告、生産性向上のデータ提出提出スケジュール表
計画・評価の期限個別機能訓練計画の3月ごとの評価、居宅訪問の3月に1回利用者別の評価月一覧
届出との整合体制届の区分と介護ソフトの設定が一致しているか体制等状況一覧表、ソフトの設定画面
減算の該当人員基準、定員超過、BCP・虐待防止の措置常勤換算計算表、委員会の記録

チェックの結果は台帳の「現在の余裕」に書き戻す。これで台帳が生きた状態に保たれる。

変更トリガーの一覧

加算の要件は、事業所で何かが変わったときに崩れる。変わる出来事ごとに見直す加算を決めておく。

出来事見直す加算・減算動く人
介護福祉士の退職・採用サービス提供体制強化加算、処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅴ事務長
常勤職員の退職人員基準欠如減算、中重度者ケア体制加算、認知症加算の加配要件事務長・管理者
機能訓練指導員・看護職員の変更個別機能訓練加算、口腔機能向上加算、栄養改善加算管理者
利用者数の増減サービス提供責任者・ケアマネの必要数、定員超過利用減算、要介護3〜5の割合事務長
研修修了者の異動認知症専門ケア加算、認知症介護実践リーダー研修修了者の配置管理者
介護報酬の改定すべて。体制届の出し直し、ソフトの設定更新事務長
介護ソフトの入れ替え加算の設定、LIFE連携、請求データの出力請求担当

取りこぼしを防ぐ側の管理

返戻・返還を防ぐ管理と、取れる加算を取る管理は表裏になる。年に1回、次の3点で「取っていない加算」を洗い出す。

  1. 要件をすでに満たしているのに届け出ていない加算。介護福祉士が増えて上位区分に上がれるのに届出を出していない、LIFE提出をしているのに科学的介護推進体制加算の体制届がない
  2. 少しの追加で取れる加算。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)は委員会と機器1種類で取れ、処遇改善加算のロ区分につながる
  3. 加算額と要件対応コストの比較。上位区分の増分と、人員の加配や研修のコストを並べる

計算例として、通所介護で介護福祉士の割合が48%(サービス提供体制強化加算Ⅲ)の事業所が、介護福祉士1人の採用で52%(Ⅱ)になる場合。

項目金額
(Ⅲ)から(Ⅱ)への増分(18 − 6)単位 × 延べ600人日 × 10.00円 = 72,000円/月、864,000円/年
介護福祉士と無資格者の人件費の差月2万円の資格手当なら年間 276,000円(法定福利費込み)
差引年間 588,000円のプラス

通所介護のサービス提供体制強化加算は、(Ⅰ)22単位で介護福祉士70%以上または勤続10年以上の介護福祉士25%以上、(Ⅱ)18単位で介護福祉士50%以上、(Ⅲ)6単位で介護福祉士40%以上または勤続7年以上の職員30%以上。割合は前年度(3月を除く)の常勤換算の平均で判定し、新規事業所は届出日前3ヶ月の平均を使う。

ミナ

介護福祉士を1人採用すると、加算の増分から資格手当を引いても年間58万円プラスなんですね。

ジムチョー

取っていない加算の洗い出しは、年1回やるといいよ。要件をすでに満たしているのに届け出ていないものが、意外に多いんだ。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ジムチョー
時期作業担当帳票
初回算定中の加算を介護ソフトの設定と体制届から書き出し、台帳を作る事務長加算管理台帳
初回加算ごとの根拠書類を集め、保管場所を台帳に書く事務長・管理者根拠書類ファイル
毎月末月次チェックを実施し、「現在の余裕」を更新事務長台帳、勤務形態一覧表
退職・採用の都度変更トリガーの一覧に従って該当する加算を確認。要件を割ったら変更届事務長変更届
4月前年度平均で判定する加算(サービス提供体制強化加算等)の割合を確定し、区分を見直す事務長割合の計算書
年1回取っていない加算の洗い出しと、上位区分への変更の検討事務長・管理者加算算定シミュレーターの試算
改定時台帳を新しい加算体系で作り直す事務長台帳

よくあるつまずき

ミナ
ミナ

介護ソフトに算定中の加算が全部入っているので、それが台帳代わりになりませんか?

ジムチョー

ソフトは「算定している加算」は示してくれるけれど、要件の余裕や根拠書類の所在は示さないんだ。ソフトの設定と台帳を、年1回突き合わせよう。

  • 介護ソフトの設定が台帳代わりになっている。ソフトは「算定している加算」は示すが、要件の余裕や根拠書類の所在は示さない。ソフトの設定と台帳を年1回突き合わせる
  • 要件の判定期間を取り違える。サービス提供体制強化加算の割合は前年度(4月〜2月)の平均、認知症加算の割合は前3ヶ月など、加算ごとに違う。台帳の要件欄に判定期間を書く
  • 担当が1人で、退職と同時に管理が止まる。台帳と根拠書類の保管場所を共有し、代替者を決める
  • 加算を取ってから要件の維持を考える。上位区分に上げた月から、要件を割ったときの減収が固定される。取る前に「現在の余裕」を書いておく
  • 返戻の原因を台帳に戻さない。返戻の多くは台帳の不備(届出漏れ、回数超過)から起きる。返戻が出たら台帳の該当行を直す

経理・管理側の視点

加算の管理は、経理から見れば売上の20〜30%を占める項目の与信管理に近い。基本報酬は利用者数で決まるが、加算は要件の維持で決まり、要件は人の異動で崩れる。人の異動を経理が把握できていない事業所では、加算の減収は請求の返戻で初めて分かる。

台帳の「年額」列を合計すれば、加算の売上依存度が分かる。加算が売上の25%を超える事業所は、人事と経理が同じ台帳を見る体制にする。退職の申し出があった日に台帳を開けば、減収の見込みと採用の優先順位がその場で出る。

ミナ

退職の申し出があった日に台帳を開けば、減収の見込みが分かるんですね。

ジムチョー

加算は売上の2〜3割を占めるからね。人事と経理が同じ台帳を見る体制にしておこう。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。