加算・算定実務

生産性向上推進体制加算の要件と準備|処遇改善加算「ロ」区分の鍵になる加算

結論(この記事でわかること)

ミナ

生産性向上推進体制加算って、月8,000円しか増えないんですよね。委員会を作ってデータも出して、割に合いますか?

ジムチョー

単体で見ると割に合わないよね。この加算の価値は、処遇改善加算のロ区分の条件になったことなんだ。80人の特養なら、ロに上がる分が月31万円。8,000円の40倍で判断しよう。

生産性向上推進体制加算は、(Ⅱ)が利用者1人につき月10単位、(Ⅰ)が月100単位。80人の特養で(Ⅱ)なら月8,000円、(Ⅰ)でも月80,000円(その他地域)で、単体では大きな加算ではない。

この加算の価値は2026年6月に変わった。介護職員等処遇改善加算のⅠロ・Ⅱロ(令和8年度特例要件)の条件のひとつになったため、(Ⅱ)を取るだけで処遇改善加算の加算率が上がる。80人の特養で処遇改善加算をⅡイからⅡロに上げると、加算率は15.9%から17.2%に1.3ポイント上がり、月30万円規模の増収になる。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)そのものの8,000円より、こちらのほうが40倍大きい。

対象は施設系・居住系・短期入所系・多機能系だけで、訪問系・通所系は算定できない。訪問・通所の事業所が処遇改善加算のロを取るなら、ケアプランデータ連携システムの利用で特例要件を満たす。

単位数と対象サービス

区分単位数算定単位
生産性向上推進体制加算(Ⅰ)100単位利用者1人につき1月あたり
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位利用者1人につき1月あたり

(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない。(Ⅰ)は(Ⅱ)の要件をすべて含む上位区分。

対象サービスは、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護。

単位数と対象サービスは令和6年度改定で設けられたもので、令和8年度の臨時改定では変わっていない。介護予防の短期入所・特定施設・小規模多機能・認知症対応型共同生活介護も対象に含まれる。

要件

ミナ

(Ⅱ)と(Ⅰ)、どちらから始めればいいですか?

ジムチョー

(Ⅱ)からがいいよ。(Ⅰ)は見守り機器を全居室に入れて、導入後3ヶ月以上の成果をデータで示す必要があるんだ。(Ⅱ)で算定を始めて、成果が出てから(Ⅰ)に上げよう。

(Ⅱ)の要件

要件内容用意する記録
委員会の設置利用者の安全と介護サービスの質の確保、職員の負担軽減を検討する委員会を3ヶ月に1回以上開催委員会規程、開催記録(日時・参加者・議題・決定事項)
テクノロジーの導入見守り機器、インカム等の職員間連携ツール、介護記録ソフト等のICTのうち1種類以上を導入し活用導入した機器の一覧、活用状況の記録
業務改善の取組導入したテクノロジーを活用した業務改善を継続的に実施業務改善計画、見直しの記録
データの提出業務改善の効果を示すデータを1年に1回、厚労省に提出提出したデータの控え

(Ⅰ)で追加される要件

要件内容
3種類すべての導入見守り機器は全居室に設置、インカム等は全介護職員が使用、介護記録ソフトを導入
成果の確認導入後3ヶ月以上継続して、データにより業務改善の成果が確認されていること
役割分担の取組介護助手の活用など、職員間の適切な役割分担の取組を実施

提出するデータ

項目内容集計時期
利用者の満足度WHO-5精神的健康状態表などを用いて、利用者5人程度に調査年1回
職員の業務時間全職員の1ヶ月分の総業務時間と残業時間10月分
年次有給休暇の取得状況全職員の取得日数年間
職員のストレス・モチベーション(Ⅰのみ)SRS-18などを用いて調査年1回

委員会は3ヶ月に1回以上開き、取組状況を確認する。データは1年以内ごとに1回、厚労省の様式で提出する(令和7年度分は令和8年3月31日が期限だった)。(Ⅰ)は、取組を3ヶ月以上続けたうえで導入前後を比べ、業務の効率化、ケアの質の確保、職員の負担軽減ができたことをデータで示す必要がある。業務時間の調査月は様式の指定に従う。

月あたりいくら増えるか(計算例)

モデルは入所者80人の介護老人福祉施設、地域区分「その他」(1単位10.00円)、月間の所定単位数2,400,000単位(1人あたり月30,000単位)。処遇改善加算は現在Ⅱイ(15.9%)で、生産性向上推進体制加算(Ⅱ)を取ってⅡロ(17.2%)に上げる。

項目計算月額年額
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位 × 80人 × 10.00円8,000円96,000円
処遇改善加算の上乗せ(ⅡイからⅡロ)2,400,000 × (17.2% − 15.9%) × 10.00円312,000円3,744,000円
合計320,000円3,840,000円

処遇改善加算の上乗せ分は全額を賃金改善に回す義務があるが、生産性向上推進体制加算の8,000円は事業所の収入として使える。年間96,000円は、見守り機器のリース料やインカムの通信費に充てる程度の額で、加算単体で機器代を回収する発想は成り立たない。

見守り機器やインカムの導入コストと、削減できる工数・取れる加算を合わせた回収期間は介護ソフト導入コスト・回収期間シミュレーターで試算できる。

所定単位数の前提(1人あたり月30,000単位)は要介護度と加算の算定状況で大きく変わるので、自社の請求実績に置き換える。処遇改善加算のロの特例要件に生産性向上推進体制加算の(Ⅰ)または(Ⅱ)が含まれることは、厚労省の特設ページで施設サービス等の要件として示されている。

ミナ

合計で月32万円。でも処遇改善の分は全部給与に回すんですよね。

ジムチョー

そうなんだ。事業所に残るのは8,000円だけ。ただ職員の賃金が上がって、機器で夜間の負担も減る。導入コストは補助金で最大4分の3戻るから、施設系で(Ⅱ)を取らない理由はほぼないよ。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ジムチョー
時期作業担当帳票
導入の3ヶ月前委員会を設置し、第1回を開催。導入する機器と業務改善の計画を決める施設長委員会規程、議事録
導入の2ヶ月前機器の見積と補助金(介護テクノロジー導入支援事業)の申請。交付決定前に発注しない事務長見積書、補助金申請書
導入月機器の設置、職員研修、記録ソフトの運用開始管理者導入記録、研修記録
算定開始月の前月1日まで介護給付費算定に係る体制等に関する届出(施設系は前月1日、居住系・多機能系は前月15日)事務長体制等状況一覧表、生産性向上推進体制加算に係る届出書
3ヶ月ごと委員会の開催と議事録の作成施設長議事録
10月全職員の業務時間・残業時間の集計労務勤怠データ
年1回(厚労省の指定時期)データの提出事務長提出用の様式

体制届の期限はサービス種別と指定権者で違うので、案内で確認する。(Ⅰ)は導入後3ヶ月以上の成果確認が要るので、(Ⅱ)で算定を始めてから(Ⅰ)に上げる順番が現実的。

よくあるつまずき

ミナ
ミナ

委員会は開いていますが、議事録は簡単なメモだけです。

ジムチョー

日時・参加者・議題・決定事項の4点は、毎回残しておこう。運営指導で最初に見られるのがこの議事録なんだ。

  • 委員会の議事録がない。開催したが記録が残っていない、参加者が書かれていない。運営指導で最初に見られる書類なので、日時・参加者・議題・決定事項の4点を毎回残す
  • (Ⅰ)で見守り機器が全居室に入っていない。一部の居室だけの導入は(Ⅱ)にしかならない。ユニットの一部で試行してから全居室に広げる計画なら、算定区分もそれに合わせる
  • 10月の業務時間集計を忘れる。データ提出は年1回だが、集計対象は10月分。勤怠システムから残業時間を職員別に出せる状態にしておく
  • 通所介護で申請しようとする。対象外。通所・訪問の事業所が処遇改善加算のロを狙うなら、ケアプランデータ連携システムの利用で特例要件を満たす
  • 処遇改善加算のロと切り離して判断する。生産性向上推進体制加算単体の8,000円で判断すると「やる意味がない」になる。処遇改善加算の上乗せと合わせた月32万円で判断する

経理・管理側の視点

この加算は「加算をもらうため」ではなく、処遇改善加算の上位区分を取るための入場券として位置づける。判断の順番は次のとおり。

  1. 処遇改善加算のⅡイ(またはⅠイ)の要件を満たしているか。満たしていないなら先にそちら
  2. 満たしているなら、ロに上げたときの上乗せ額を計算する(月の所定単位数 × 加算率の差 × 単価)
  3. 上乗せ額の年額と、見守り機器・インカム・記録ソフトの導入コスト(補助金差引後)を比べる
  4. 委員会の運営とデータ提出の工数を、事務長か施設長の時間で見積もる

上乗せ分は賃金改善に回すので事業所の利益にはならないが、職員の賃金が上がることで採用・定着に効く。機器の導入コストは補助金で最大3/4が戻る。この2つを合わせると、施設系で(Ⅱ)を取らない理由はほぼない。

ミナ

順番としては、まず処遇改善加算のⅡイの要件を満たしているかの確認からですね。

ジムチョー

そこが先だね。満たしていれば、ロに上げたときの上乗せ額と機器の導入コストを比べる。委員会とデータ提出の工数は、施設長か事務長の時間で見積もっておくといいよ。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。