バックオフィス実務

介護テクノロジー導入支援事業とは?令和8年度の補助率5分の4・上限額と申請の流れ

「補助金」の文字と硬貨

結論(この記事でわかること)

ミナ

施設長から「インカムと記録ソフトを入れたいから、県の補助金を調べておいて」と頼まれました。介護テクノロジー導入支援事業のことですか?

ジムチョー

そうだよ。都道府県が窓口の補助金で、令和8年度は導入費の5分の4が補助される形が中心なんだ。ただ後払いだから、いったん全額を立て替えることになるよ。

ミナ

8割は戻るけれど入金は年度末近くで、それまでの資金は事業所で用意する、ということですね。

ジムチョー

そういうことだね。委員会やケアプランデータ連携といった条件もついてくるから、補助額と条件を一緒に見ておこう。

介護テクノロジー導入支援事業は、見守り機器、インカム、介護記録ソフト、移乗支援・入浴支援の機器などの導入費を、都道府県が補助する事業。令和8年度は、国の「介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」(令和7年度補正予算の繰越分)に沿って、各県が募集している。

項目令和8年度の内容(国の要綱)
対象介護保険の全サービスの事業所(訪問介護・居宅介護支援を含む)、養護老人ホーム、軽費老人ホーム
補助率5分の4(事業所の負担は5分の1)
上限(基準額)移乗・入浴の機器とインカムは1台100万円、見守り機器などは1台30万円、介護ソフトは職員数に応じて100万〜250万円、パッケージ型は400万〜1,000万円(県が決める)
主な条件研修などの業務改善支援、業務改善計画、施設系は委員会、在宅系はケアプランデータ連携システムの利用、SECURITY ACTION の宣言
支払い導入・支払い・実績報告のあとの後払い。翌年度から3年間、効果を県に報告する

押さえる点は3つ。

  1. 募集は県ごとで、時期がばらばら。令和8年度は6月から10月まで開きがあり、締め切った県もある
  2. 後払いなので立替えが要る。支払いから入金まで数か月かかる
  3. 条件は加算の要件と重なる。委員会とケアプランデータ連携は、生産性向上推進体制加算や処遇改善加算のロ区分の条件でもある

令和8年度の事業の中身(補助率・上限額・対象経費)

一万円札と電卓
ミナ

調べると「導入支援事業」と「定着支援事業」の2つの名前が出てきました。別の補助金なんですか?

ジムチョー

国の予算の出どころが2つあるんだ。令和8年度の県の募集は、補正予算を繰り越した「定着支援事業」の要綱に沿ったものが中心で、補助率は5分の4だよ。

ミナ

県のページの名前が「導入支援事業」でも、中身は定着支援事業の要綱ということがあるんですね。

ジムチョー

そうなんだ。名前ではなく、県の要綱に書いてある補助率と上限で見分けるといいよ。

国の予算の1つは地域医療介護総合確保基金の「介護テクノロジー導入支援事業」(令和8年度予算案で基金86億円の内数)で、令和7年度までの補助率は、要件を満たせば4分の3、それ以外は2分の1が下限だった。もう1つが令和7年度補正予算の「介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業」(220億円)で、国は令和8年4月7日の老健局長通知(老発0407第3号)の別紙1で「介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」を示した。

この記事で確かめた5県は、いずれも補助率5分の4で募集した。事業名は、宮城県と鹿児島県が「介護テクノロジー導入支援事業」、千葉県・静岡県・沖縄県が「介護テクノロジー定着支援事業」。

補助額は、実際に払った額に5分の4をかけた額と、下の基準額のうち少ないほう。

区分基準額(国の要綱)
移乗支援・入浴支援の機器、インカム1台100万円
見守り機器など、上記以外の介護テクノロジー1台30万円(Wi-Fi 工事などの付帯経費を含む)
介護ソフト、バックオフィスソフト(給与・勤怠など)職員数(常勤換算)10人以下100万円、11〜20人150万円、21〜30人200万円、31人以上250万円。職員数で料金が変わらない契約は一律250万円
介護ソフトと一緒に入れる端末・Wi-Fi・ベンダーのサポート(定着促進)介護ソフトの基準額に15万円を上乗せ
在宅系が令和8年度中にケアプランデータ連携システムで5事業所以上と連携する介護ソフトの基準額に5万円を加算
パッケージ型(介護ソフト+インカム、介護ソフト+見守り機器など)400万〜1,000万円で県が決める(定着促進を合わせると15万円上乗せ)
コンサルティング会社などによる業務改善支援48万円

介護ソフトは、記録・情報共有・請求を転記なしでできるものに限られ、在宅系はケアプランデータ連携の標準仕様、施設系は LIFE の CSV に対応していることも要件。厚生労働省の「介護記録ソフト機能調査結果」で確かめる。主な製品の対応は介護ソフト比較にまとめている。

1回に補助する台数は県が決める。鹿児島県は利用定員×0.2台、沖縄県は見守り機器が利用定員の5割、インカムが職員数、移乗・入浴の機器が2台まで。

対象になる経費対象にならない経費
TAIS(福祉用具情報システム)で「介護テクノロジー」に選ばれた機器(重点分野は9分野16項目)開発の費用、販売価格が公表されていない機器
機器と一緒に入れる Wi-Fi 工事・端末通信費
リース・レンタル・サブスクリプションは、その年度に払う分介護ソフトを入れずに端末だけを買う費用
チャットツールなど職員間の連絡に使う ICTほかの補助金(IT導入補助金など)で助成されたもの

補助を受ける条件(生産性向上の取組)

「業務改善」の積み木
ミナ

条件が多いですね。うちは通所介護と特養がありますが、事業所で違うんですか?

ジムチョー

違うんだ。特養のような施設系は委員会の設置、通所や訪問のような在宅系はケアプランデータ連携システムの利用が条件になるよ。在宅系は、令和8年度から連携の実績まで求められているんだ。

ミナ

どちらも、処遇改善加算のロ区分の条件と重なっていますね。

ジムチョー

よく気づいたね。補助金の条件をそろえると、ロの条件にも近づくんだ。別々に準備するより、まとめて計画しておこう。

条件対象中身
業務改善支援すべてコンサルティング会社などの支援か、厚生労働省のセミナー(ビギナー・フォローアップ)、デジタル中核人材養成研修、県の相談センターの研修の受講
業務改善計画すべて厚生労働省の様式で作って県に出す。原則、県の介護生産性向上総合相談センターに相談する
委員会の設置短期入所・特定施設・(看護)小規模多機能・グループホーム・施設系利用者の安全、サービスの質、職員の負担軽減を検討する委員会
ケアプランデータ連携システム訪問系・通所系、短期入所、福祉用具貸与、小規模多機能、居宅介護支援など令和8年度中に利用を始める。令和8年度からは連携の実績が要る
セキュリティすべてSECURITY ACTION(情報処理推進機構)の一つ星か二つ星を宣言する
導入のあとすべて翌年度から3年間、効果を県に報告する。LIFE の情報収集と国の効果検証に協力する

施設系の委員会は、2024年度改定で運営基準に入った委員会と同じもの(設置の義務の経過措置は2027年3月31日まで)。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の要件でもあり、(Ⅱ)は委員会で安全対策を検討して業務改善を続け、見守り機器・インカム・介護記録ソフトなどを1つ以上入れ、年1回データを出すと算定できる。(Ⅱ)の算定は、施設系が処遇改善加算のⅠロ・Ⅱロを取る条件(令和8年度特例要件)になる(生産性向上推進体制加算の要件と準備)。

在宅系のケアプランデータ連携システムの利用は、訪問系・通所系が処遇改善加算のロを取る条件でもある。始め方はケアプランデータ連携システムの記事、区分の全体は処遇改善加算の区分と要件にある。

都道府県の公募の例と次の募集の見通し

ミナ

うちの県の募集は、もう締め切られていました。次はいつ頃ですか?

ジムチョー

令和8年度は県によって6月から10月まで開きがあったんだ。2027年度の予定はまだ示されていないから、県のページを見ておこう。

以下は2026年9月30日時点の各県のページによる。募集が終わる日や日程は県が変えることがあるので、申請の前に県のページで確かめる。

県受付特徴その後の日程
宮城県7月14日〜8月14日(締切)補助率5分の4。県のセミナーの受講が条件。交付決定のあとに契約・購入1月12日までに実績報告、2月中旬〜3月末に振込
沖縄県7月1日〜8月7日(締切)補助率5分の4。パッケージ型の上限600万円、単体は1事業所500万円。交付決定の前の契約・購入は原則対象外審査のあと順次、内示と交付申請
千葉県事前協議6月10日〜7月13日(締切)補助率5分の4。1事業所の上限1,000万円。県のセミナー(5月26日、録画も可)の受講が条件1月15日までに実績報告、3月31日までに支払い
鹿児島県9月18日〜10月14日午後5時(受付中)補助率5分の4。令和8年4月以降の購入も対象。初めて申請する事業所を優先11月中旬に内示、2027年3月に交付

県の受付は、三重県が6月1日から、鹿児島県が9月18日からと4か月近い開きがあった。申請が予算を上回れば採択しないことや台数を減らすことがあり(宮城県・千葉県)、三重県は二次募集をしなかった。

2027年度(令和9年度)の事業の有無・募集の時期・補助率は、2026年9月末時点で示されていない。令和8年度の5分の4は令和7年度補正予算を財源とする事業の率なので、次の年度は県の要綱で確かめる。改定でのテクノロジーの評価は2027年度改定の生産性向上・ICT論点で追っている。

インカムと介護記録ソフトを入れる計算例

トランシーバー

特養(定員50人、地域区分「その他」)が介護記録ソフトとインカムをパッケージ型で入れると仮定する。金額は仮定の見積もりで、千葉県・静岡県のように税抜の額に5分の4をかける例で計算する。

項目計算金額
記録ソフトの初期費用(設定・データ移行)仮定500,000円
タブレット50,000円 × 10台500,000円
Wi-Fi 工事(アクセスポイント・配線)仮定800,000円
インカム40,000円 × 15台600,000円
合計(税抜)2,400,000円
支払う額(税込)2,400,000 × 1.12,640,000円
補助金2,400,000 × 4/5(パッケージ型の基準額の範囲内)1,920,000円
自己負担2,640,000 − 1,920,000720,000円

毎月の効果は、介護職員20人の記録の転記や職員を探す時間が1人月4時間減り、人件費(社会保険料の会社負担込み)を1時間1,800円、ソフトの月額を税込55,000円と仮定する。

項目計算結果
減る時間の人件費20人 × 4時間 × 1,800円月144,000円
毎月の効果144,000 − 55,000月89,000円
元が取れるまで(補助あり)720,000 ÷ 89,000 = 8.19か月目
元が取れるまで(補助なし)2,640,000 ÷ 89,000 = 29.730か月目
減る時間が半分のとき(補助あり)720,000 ÷(72,000 − 55,000)= 42.443か月目
減る時間が半分のとき(補助なし)2,640,000 ÷ 17,000 = 155.3156か月目(13年)

介護ソフトの月額も、その年度に払う分は補助の対象にできる(国の Q&A 問9)が、ここでは初期費用だけで計算した。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)を取れば、50人 × 10単位 × 10円(1単位10円)で月5,000円が加わる。

宮城県の日程に当てはめると、立替えは次のようになる。

時期動き手元のお金
9月中旬交付決定
10月契約・納品・支払い−2,640,000円
1月12日まで実績報告
2月中旬〜3月末補助金の振込+1,920,000円

10月に払えば、1,920,000円を4〜5か月ほど立て替えることになる。

ミナ

補助があると9か月目、ないと30か月目。差がこんなに大きいんですね。

ジムチョー

時間の減り方が見込みの半分でも、補助があれば4年足らずで戻るんだ。補助がないと13年かかるから、補助で判断が変わる投資だね。

ミナ

ただ、減った時間がそのままお金になるわけではないですよね。

ジムチョー

そこが大事なんだ。お金になるのは残業代や派遣の費用が減ったときだから、どの時間を減らすかを業務改善計画に書いておこう。

自社の数字は介護ソフト導入コスト・回収期間シミュレーターで試せる。初期費用に税込の見積額を、補助金の見込みに補助額を入れる。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ミナ

来年度に向けて、今から何を始めればいいですか?

ジムチョー

確かめた県の受付期間は、どこも1か月ほどなんだ。研修、SECURITY ACTION の宣言、在宅系ならケアプランデータ連携の実績づくりは、募集の前に進めておこう。

時期やること担当使うもの
募集の前課題を洗い出して入れる機器を決め、県の相談センターに相談する。国のセミナーか県の研修を受ける事務長・管理者業務改善計画書の下書き、受講の記録
募集の前GビズID(プライム)を取り、事業所ごとに SECURITY ACTION を宣言する事務長自己宣言の完了メール
募集の前在宅系は、ケアプランデータ連携システムで取引先と連携を始める請求担当送受信の記録
募集の前TAIS の掲載を確かめ、事業所ごとの台数がわかる見積もりを取る事務長見積書、カタログ
受付期間事前協議・交付申請事務長所要額調書、業務改善計画書、見積書
交付決定のあと契約・納品・支払い事務長・経理契約書、納品書、領収書
実績報告の期限まで実績報告。納品と支払いを済ませておく事務長・経理実績報告書、精算書
年度末額の確定通知を受け、補助金を請求して受け取る経理確定通知、請求書
翌年度から3年間業務改善計画の効果を県に報告する事務長効果の報告

よくあるつまずき

ミナ

交付決定を待っていると、導入が年明けになりそうです。先に発注して、あとから申請しても大丈夫ですか?

ジムチョー

それは避けたほうがいいね。宮城県や沖縄県のように、交付決定の前に契約・購入したものを対象外にする県があるんだ。4月以降の購入を認める県でも、採択されなければ全額が自己負担になるよ。

ミナ

在宅系は、ケアプランデータ連携システムに加入していれば足りますか?

ジムチョー

令和8年度からは連携の実績が要るんだ。加入で止めずに、取引先の居宅介護支援事業所と実際にやりとりを始めておこう。

  • 交付決定の前に契約・発注する。宮城県・沖縄県・三重県・兵庫県は、交付決定の前の契約や購入を対象外にしている。鹿児島県は令和8年4月以降の購入も対象にしているが、採択されるとは限らない
  • 実績報告までに支払いが終わらない。納品と支払いが済んでいないと、交付決定を受けていても補助が出ないことがある(千葉県・鹿児島県)
  • 研修を受けないまま申請する。業務改善支援は必須。国の Q&A では、研修はその年度に、原則として導入の前に受ける
  • SECURITY ACTION の準備が遅れる。宣言にはGビズID(プライム)が要り、事業所が複数あれば事業所ごとにメンバーのIDを作る。千葉県は、GビズIDの書面申請に1か月程度かかると案内している
  • 過去に補助を受けている。兵庫県は令和8年度、過去にこの補助を受けた事業所を対象外にし、鹿児島県は初めての事業所を優先した
  • 補助で入れたものを早く手放す。単価30万円以上の機器には処分制限期間があり(介護ソフト・介護ロボットは5年)、期間内に廃棄や譲渡をするなら承認の手続きが要り、納付を求められることがある

経理・管理側の視点

ミナ

補助金が入ったら、経理ではどう処理すればいいですか?

ジムチョー

消費税がかからない収入で、法人税では収益になるんだ。機器の購入に充てた分は圧縮記帳を使える場合があるから、決算の前に税理士と扱いを決めておこう。

  • 消費税。補助金は資産の譲渡等の対価に当たらず、消費税はかからない(消費税法基本通達5-2-15)。千葉県・静岡県は税抜の額に補助率をかけるので、消費税分は事業所の負担になる。税込の額を対象にする県では、補助金にかかる仕入控除税額を県に報告して返す定めがある(鹿児島県の交付要綱第16条)
  • 法人税(株式会社など)。固定資産の取得に充てる国や地方公共団体の補助金は、事業年度の終わりまでに返さなくてよいことが確定していれば、補助金の額の範囲で帳簿価額を減らし(圧縮記帳)、その額を損金にできる(法人税法第42条)。確定していなければ特別勘定の定めがある(第43条)。圧縮すると、その後の減価償却費は小さくなる。決算月と入金の時期がずれるときや、利用料・コンサルティング費用に充てた分の扱いは税理士に確かめる
  • 社会福祉法人。設備の整備のために国や地方公共団体から受けた補助金は、純資産の国庫補助金等特別積立金に計上する(社会福祉法人会計基準第6条第2項)
  • 資金繰り。立て替える額と期間を資金繰り表に入れ、介護報酬の入金の時期(介護事業所の資金繰りと国保連の入金)とあわせて見る
  • 帳簿と財産の管理。補助事業の帳簿と証拠書類は5年間保存する(鹿児島県の交付要綱)。補助で取得した機器は台帳に載せ、処分制限期間を書いておく
  • 賃金への還元。収支が改善したら賃金にも還元し、職員に知らせることが補助の条件。還元のしかたも経営会議で決めておく

処遇改善加算のロで上がる分は全額を賃金に回すので、回収の計算に入れず、賃金の原資が増える分として別に示す。

ミナ

まずは来年度の募集に向けて、研修と SECURITY ACTION の宣言、通所のケアプランデータ連携から始めます。

ジムチョー

それがいいね。見積もりと資金繰り表も用意しておけば、募集が出てから慌てずに済むよ。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。