バックオフィス実務

介護事業所の資金繰り|国保連の入金は翌々月。開業時に必要な運転資金の計算

結論(この記事でわかること)

ミナ

4月にサービスを提供した分の入金が6月末って本当ですか? 5月の給与はどうやって払うんでしょう。

ジムチョー

本当なんだ。翌月10日までに国保連に請求して、入金は翌々月。この2ヶ月のずれが介護事業所の資金繰りの土台になる。だから開業時は手元資金が要るし、既存の事業所でも賞与月と返戻が重なると残高が落ちるんだよ。

介護報酬は、サービス提供月の翌月10日までに国保連へ請求し、翌々月に入金される。4月分のサービスの代金が入るのは6月の下旬から月末。この2ヶ月のずれが、介護事業所の資金繰りの土台になる。

開業時に必要な運転資金は、この式で概算できる。

必要運転資金 ≒ 月間支出 × 3ヶ月分 − 利用者負担の入金(2ヶ月分)

月の支出が250万円の訪問介護なら、国保連の初回入金までに750万円が出ていき、その間に入るのは利用者負担分(10割の1割)が2ヶ月分の60万円程度。手元に700万円前後がないと、初回入金の前に資金が尽きる。稼働が立ち上がるまでの期間を含めると、さらに増える。

既存の事業所でも、返戻の集中、賞与月、処遇改善加算の一時金の支給月で残高が落ち込む。自社の12ヶ月の資金繰りは国保連入金カレンダー・資金繰りシミュレーターで、サービス提供月から入金日を逆算して確認できる。

介護報酬の入金サイクル

ミナ

10日を1日過ぎたらどうなりますか?

ジムチョー

翌月扱いになって、1ヶ月分の入金が丸ごと1ヶ月ずれてしまうんだ。請求担当が休む月は代理を決めておこう。

時期出来事事業所の動き
4月サービス提供実績記録、利用者負担の請求準備
5月1日〜10日国保連へ請求(伝送)請求データの作成と送信。10日を過ぎると6月請求(月遅れ)
5月末利用者負担の入金(口座振替の場合)4月分の1〜3割
6月中旬国保連から審査結果(支払決定額・返戻)の通知返戻分を確認し、7月請求で再提出
6月下旬〜月末国保連から入金4月分の保険給付分(返戻分を除く)
7月下旬〜月末返戻分の再入金6月に再請求した4月分

国保連の支払日は都道府県で違い、20日、25日、末日などがある。自社の国保連の年間スケジュールを確認して、資金繰り表の入金日を固定する。

請求の受付は毎月1日から10日で、10日が土日祝でも締切は動かず当日も受け付ける国保連が多いが、扱いは都道府県で違う。支払日も国保連ごとに年間予定表が出るので、自社の国保連の予定表を資金繰り表に写しておく。

計算例:開業時に必要な運転資金

モデルは訪問介護、4月開業、月間の介護報酬300万円(10割、加算込み)、利用者負担は全員1割、返戻率2%、人件費200万円+その他支出50万円で月250万円。稼働は初月から満額とする。

国保連入金利用者負担支出収支累計
4月0円0円2,500,000円−2,500,000円−2,500,000円
5月0円300,000円2,500,000円−2,200,000円−4,700,000円
6月2,646,000円300,000円2,500,000円+446,000円−4,254,000円
7月2,646,000円+返戻分54,000円300,000円2,500,000円+500,000円−3,754,000円
8月以降毎月+500,000円12月末で−1,254,000円

累計が最も落ち込むのは5月末の470万円。手元資金が470万円未満なら、6月の初回入金の前に支払いが止まる。累計がプラスに転じるのは翌年の3月で、開業から1年近くかかる。

稼働が満額になるまで6ヶ月かかる現実的な前提にすると、最低額は800万円前後まで広がる。この差が、開業時に「運転資金は3ヶ月分」では足りない理由になる。

数値は例。国保連入金は 300万円 × 90%(保険給付分)× 98%(返戻を除く)= 2,646,000円、返戻分は 300万円 × 90% × 2% = 54,000円で計算している。

ミナ

5月末で470万円のマイナス。「運転資金は3ヶ月分」で足りない理由が分かりました。

ジムチョー

稼働が立ち上がるまでの期間を入れると、800万円前後になるんだ。初回入金の前に支払いが止まるかどうかは、この最低額を先に見ているかで決まるよ。

既存事業所で残高が落ちる月

開業後も、次の月は残高が落ちる。資金繰り表に先に入れておく。

要因時期影響
賞与6月・12月など月間人件費の1〜2ヶ月分が一度に出る
処遇改善加算の一時金年度末(3月)や実績報告前(6月)加算総額と賃金改善額の差額を精算
返戻の集中年度替わり(4〜5月請求分)、改定直後(4月・6月)介護度の更新漏れ、体制届の反映漏れで返戻が増える
月遅れ請求請求担当の不在、システム移行の月1ヶ月分の入金が丸ごと翌月にずれる
借入の返済開始据置期間の終了月毎月の固定支出が増える
社会保険料の改定9月(算定基礎届の反映)4〜6月の残業が多いと事業主負担が増える

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ジムチョー
時期作業担当帳票
毎月1〜10日国保連へ請求。10日までに伝送完了請求担当介護給付費請求書、明細書
毎月10日まで前月分の請求額(10割)を資金繰り表の翌々月の入金予定に記入経理資金繰り表
毎月中旬審査結果を確認し、返戻分を翌月請求に回す。返戻額を入金予定から減らす請求担当・経理返戻通知、支払決定額通知書
毎月末利用者負担の入金を照合し、未収を一覧にする経理利用者請求書、入金一覧
毎月末翌3ヶ月の資金繰り表を更新。残高の最低額を確認事務長資金繰り表
賞与月の2ヶ月前賞与・一時金の資金手当を確認。不足なら借入の相談事務長資金繰り表、借入申込書

よくあるつまずき

ミナ
ミナ

利用者負担の未収が少しずつ溜まっています。金額は小さいのですが。

ジムチョー

10割のうち1〜3割は、事業所が直接回収する分なんだ。放置すると資金繰りだけでなく貸倒れになる。口座振替に切り替えよう。

  • 入金を「翌月」と思って計画する。国保連の入金はサービス提供月の翌々月。開業時の資金計画を1ヶ月見誤ると、初回入金の前に資金が尽きる
  • 利用者負担の未収を放置する。10割のうち1〜3割は事業所が直接回収する。口座振替にしていない事業所は未収が積み上がり、資金繰りだけでなく貸倒れになる
  • 返戻の再請求を翌月に回さない。返戻を放置すると入金が2ヶ月、3ヶ月と遅れる。月遅れ請求には期限(原則2年)もある
  • 10日の請求期限を1日でも過ぎる。11日以降の請求は翌月扱いで、1ヶ月分の入金が丸ごとずれる。担当者の不在に備えて代理を決めておく
  • 改定月の返戻を見込まない。2027年4月の改定直後は、新しい体制届やソフトの単位数更新の遅れで返戻が増える。4〜6月請求分は返戻率を高めに見る
  • 借入の返済日と入金日のずれ。返済日が月初で入金が月末だと、月初の残高で返済できない月が出る。返済日を入金日の後に設定する

経理・管理側の視点

介護事業所の資金繰りは、売掛金の回収期間が2ヶ月で固定されている商売として考えると整理しやすい。売上が増えるほど、増えた分の2ヶ月分を先に立て替える必要がある。成長期ほど資金が苦しくなるのはこのため。

月次の資金繰り表は、13ヶ月先まで「国保連入金(提供月ベース)」「利用者負担入金」「人件費」「その他支出」「賞与・一時金」「借入返済」「残高」の7行で足りる。国保連入金の欄は請求時点で確定するので、2ヶ月先までの残高はほぼ正確に読める。

残高の最低額が月間支出の1ヶ月分を切るなら、当座貸越や介護報酬の早期資金化サービスを検討する。早期資金化は手数料がかかるので、恒常的に使うのではなく、賞与月や改定月の一時的な手当てに限る。

早期資金化サービスの手数料は事業者と条件で違うので、使う前に年率換算で借入金利と比べる。

ミナ

資金繰り表は13ヶ月先まで、7行でいいんですね。

ジムチョー

国保連入金の欄は請求した時点で確定するから、2ヶ月先までの残高はほぼ正確に読めるんだ。最低額が月間支出の1ヶ月分を切るなら、早めに手を打とう。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。