介護事業の区分経理とは?共通経費の按分基準と保険外サービスの消費税の扱い

結論(この記事でわかること)
ミナ通所と保険外の宿泊を同じ建物でやっているんですが、経理は一緒にまとめてはいけないんですか?
ジムチョー事業ごとに分けて持つのが前提なんだ。理由は3つあって、制度上の報告、消費税の課税と非課税の違い、それに経営判断。合算した損益だと赤字の事業が見えなくなってしまうんだよ。
ミナ社会福祉法人ではない株式会社でも、事業ごとに分ける必要があるんですね。
ジムチョー株式会社でも、運営基準で事業所ごとの経理の区分が求められているし、処遇改善加算の実績報告では事業所別の加算総額が要るんだ。補助金でも事業別の数字を求められることがあるよ。法人の形に関係なく、分けて持つ前提で準備しておこう。
介護事業所の経理は、事業ごとに収支を分けて持つことが前提になる。理由は3つ。
- 制度上の要請。指定居宅サービス等の運営基準は、法人の種類を問わず、事業所ごとの経理の区分と、介護保険事業とその他の事業の会計の区分を求めている(訪問介護は第38条)。社会福祉法人はさらに、会計基準で拠点区分とサービス区分を設けて計算書類を作る。処遇改善加算の実績報告では事業所別の加算総額が要り、補助金の実績報告でも事業別の数字を求められることがある
- 消費税。介護保険サービスは非課税、保険外サービス(自費の宿泊・家事代行・配食など)は課税。課税事業者で非課税売上と課税売上が混在すると、課税売上割合の計算が要る
- 経営判断。通所と訪問、介護保険と障害福祉で採算が違う。合算した損益では赤字の事業が見えない
実務の中心は共通経費の按分基準を決めて固定すること。管理者の人件費、家賃、水道光熱費を、勤務時間比・面積比・メーターの実測などのどれで分けるかを決め、毎年同じ基準で計算する。老振発第18号(平成13年3月28日)も、どんな按分方法で区分したかが分かるように記録しておくことを求めている。基準が毎年変わると、年度比較ができず、運営指導でも説明しにくくなる。
区分の単位

株式会社の場合は、どの単位で分ければいいですか?
会計ソフトの部門コードを「事業所 × サービス種別」で作って、売上と直接費をそこに付けるんだ。共通経費は、月次か年次で按分しよう。
| 法人形態 | 区分の単位 | 根拠 |
|---|---|---|
| 社会福祉法人 | 事業区分(社会福祉事業・公益事業・収益事業)→ 拠点区分(一体として運営される施設・事業所・事務所)→ サービス区分(指定基準等で会計の区分が求められる介護保険・障害福祉など) | 社会福祉法人会計基準第10条、運用上の取扱い・留意事項 |
| 株式会社・NPO等 | 会計基準上の様式はないが、運営基準で事業所ごとの経理の区分と、介護保険事業とその他の事業の会計の区分が求められる。部門別会計で対応する | 指定居宅サービス等の運営基準(第38条など)、老振発第18号 |
株式会社の場合、会計ソフトの部門コードを「事業所 × サービス種別」で設定し、売上と直接費を部門に付ける。共通経費は月次または年次で按分する。
老振発第18号は、事業所単位で経理が区分されることを前提に、会計単位分割・本支店会計・部門補助科目・区分表の4つの方式を例に挙げている。通知の表による按分がしにくいときは、実態に即した合理的な方法で事業ごとに会計が区分され、その状況が明らかにされていればよい。ただし、調査などで会計の状況の記載を求められたときに答えられる区分にしておく必要がある。
社会福祉法人のサービス区分は、指定基準等で当該事業の会計とその他の事業の会計を区分すべきとされている事業(介護保険サービス、障害福祉サービスなど)を単位にする。ただし、介護予防サービスなど、介護サービスと一体で行っていて両者のコストを区分しにくいものは、介護予防サービスなどの収入額だけ把握できれば同じサービス区分にしてよい(訪問介護と第1号訪問事業、通所介護と第1号通所事業など)。サービス区分が1つだけの拠点区分は、拠点区分資金収支明細書と拠点区分事業活動明細書の作成を省略できる。介護保険サービスを行う拠点は、サービス区分ごとの事業活動の状況を見る拠点区分事業活動明細書を作り、拠点区分資金収支明細書は省略できる(運用上の留意事項5、運用上の取扱い26)。
消費税の区分

介護保険のサービスは非課税だから、消費税は気にしなくていいと思っていました。
保険外の宿泊や家事代行、配食は課税なんだ。非課税売上が大半だと、家賃や消耗品にかかった消費税のほとんどが控除できずにコストになる。ここは税理士と一緒に整理しておこう。
補助金も、売上と同じように扱っていいんですか?
補助金は不課税だから、売上とは分けて処理するんだ。事業の収益性を判断するときも、補助金は別にして見ておこう。
| 取引 | 消費税 |
|---|---|
| 介護保険の給付対象サービス(保険給付分・利用者負担分とも) | 非課税 |
| 居宅介護支援(ケアプラン作成) | 非課税 |
| 支給限度額を超えて全額自己負担で使う指定居宅サービス | 非課税(基通6-7-2) |
| 福祉用具貸与・特定福祉用具販売 | 介護保険の対象というだけでは非課税にならない。身体障害者用物品に当たるものは非課税、当たらないものは課税(基通6-7-3) |
| 日常生活に要する費用(通所系の食材料費・おむつ代、入所系の食材料費・居住費・理美容代など) | 非課税 |
| 利用者が選ぶ特別な食事・特別な居室、通常の事業実施地域外の送迎や交通費 | 課税 |
| 介護保険外の自費サービス(宿泊、家事代行、配食など) | 課税 |
| 障害福祉サービス(法定) | 非課税。就労継続支援などの生産活動として行う物品の販売等は課税(基通6-7-5) |
| 補助金・助成金 | 不課税(基通5-2-15) |
非課税売上が大半の事業所では、課税仕入(家賃、消耗品、外注費)にかかった消費税のほとんどが仕入税額控除できず、コストになる。課税事業者で、課税売上割合が95%未満か、課税売上高が5億円を超える場合は、個別対応方式か一括比例配分方式で控除額を計算する(消費税法第30条第2項・第4項)。課税売上割合は「課税資産の譲渡等の対価の額 ÷ 資産の譲渡等の対価の額」で、補助金のような不課税の収入は分母にも分子にも入らない(同条第6項)。
基準期間(原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、適格請求書発行事業者に登録していなければ、消費税の納税義務が免除される(同法第9条)。免税事業者なら課税売上割合の計算は要らず、仕入れにかかった消費税はそのまま費用になる。特定期間の判定などの例外もあるので、自社がどちらに当たるかは税理士に確かめる。
適格請求書(インボイス)は、課税資産の譲渡等を受ける他の事業者から求められたときに交付するもので(同法第57条の4)、非課税の介護報酬には交付義務がない。個人の利用者向けの自費サービスも、相手が事業者ではないので交付義務の対象外になる。登録するかどうかは、課税売上の相手先に事業者がいるか、登録して課税事業者になると納税が生じることを踏まえて決める。
食費・居住費などの非課税の範囲や、保険外サービスの課税の判定は、消費税法基本通達6-7-1〜6-7-3と国税庁の質疑応答事例(出典欄)で確かめられる。判断に迷う個別の取引は、税理士に相談する。
共通経費の按分基準

家賃は面積比、管理者の人件費は勤務時間比と、経費ごとに基準が違ってもいいんですか?
経費ごとに合う基準を選べばいいんだ。大事なのは、決めた基準を経理規程か内規に書いて、年度の途中で変えないことだよ。
どうしても基準を変えたくなった場合は?
変える理由と適用開始年度を記録に残しておこう。あとで年度を比べるときに、どこで基準が変わったかを説明できるようにしておくんだ。
| 経費 | 按分基準の例(老振発第18号の表から) | 根拠資料 |
|---|---|---|
| 給与費(管理者・事務職員の人件費など) | 勤務時間割合。困難な場合は職種別人員配置割合、届出人員割合、延利用者数割合など | 勤務形態一覧表、勤務表 |
| 賃借料・地代家賃、建物の減価償却費 | 建物床面積割合(賃借料は、リース物件などその物件の使用割合が分かればその割合) | 図面、賃貸借契約書、使用区分表 |
| 光熱水費 | メーター等による測定割合。困難な場合は建物床面積割合 | 検針票 |
| 車両費 | 使用高割合。困難な場合は送迎利用者数割合、延利用者数割合 | 運行記録 |
| 消耗品費・日用品費など | 各事業の消費金額。困難な場合は延利用者数割合 | 請求書、出庫記録 |
| 通信費・旅費交通費・雑費など | 延利用者数割合、職種別人員配置割合、給与割合 | 契約書、請求書 |
| 本部経費、システム利用料など(通知の表にない科目) | 類似の科目の考え方を基に按分して差し支えない(例:各事業の収入比) | 決算書、契約書 |
通知の表によりがたい場合は、実態に即した合理的な按分方法によってよい。そのうえで、どの方法で区分したかが分かるように記録しておくことが求められているので、按分基準は経理規程か内規に書き、年度の途中で変えない。変える場合は理由と適用開始年度を記録する。
計算例:通所介護と保険外サービスの区分
以下は説明のための仮定の数字。通所介護(非課税売上 年4,800万円)と、保険外の宿泊サービス(課税売上 年600万円、税抜)を同じ建物で行う事業所とする。
| 項目 | 通所介護 | 保険外宿泊 | 按分基準 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 48,000,000円 | 6,000,000円 | 直接 |
| 直接人件費 | 28,000,000円 | 3,500,000円 | 直接(勤務表) |
| 管理者人件費(600万円) | 5,400,000円 | 600,000円 | 勤務時間比 9:1 |
| 家賃(360万円) | 2,880,000円 | 720,000円 | 面積比 8:2 |
| 水道光熱費(240万円) | 1,920,000円 | 480,000円 | 面積比 8:2(メーターで分けられない前提) |
| その他経費 | 4,000,000円 | 500,000円 | 直接+収入比 |
| 営業利益 | 5,800,000円 | 200,000円 | |
| 利益率 | 12.1% | 3.3% |
合算では利益600万円(11.1%)に見えるが、分けると保険外宿泊はほぼ利益が出ていない。仮に家賃の按分基準を面積比から収入比に変えると宿泊の家賃負担は40万円になり利益率が上がる(家賃に収入比を使うのは通知の基準ではなく、見え方の違いを示すための仮の比較)。基準の選び方で事業の見え方が変わる。だから基準は固定する。
消費税は、この例の課税売上が年600万円なので、基準期間の課税売上高も1,000万円以下なら、適格請求書発行事業者に登録していない限り納税義務が免除される。免税事業者なら課税売上割合の計算は要らず、仕入れの消費税はそのまま費用になる。登録などで課税事業者になる場合の課税売上割合は 600 ÷ (4,800 + 600) = 11.1%(いずれも税抜)で、95%未満になる。一括比例配分方式なら、課税仕入れ等にかかった消費税のうち控除できるのは11.1%分だけで、残りはコストとして各事業に按分する。
数字はすべて説明のための仮定の例。自社が課税事業者に当たるかの判定と、仕入税額控除の計算は、税理士に確認する。
通所介護の設備を使って夜間・深夜に保険外の宿泊サービスを行う場合は、サービスの内容を提供の開始前に指定権者へ届け出る(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第95条第4項)。届出の内容と経理上の区分がずれないよう、宿泊の売上と経費は最初から別の部門コードで持っておく。
合算だと利益率11%なのに、分けると宿泊は3%しか出ていないんですね。
按分基準の選び方で事業の見え方が変わるんだ。だから基準は規程に書いて固定する。毎年変えると年度比較ができなくなって、運営指導でも説明しにくくなるよ。
宿泊の課税売上があっても、年600万円なら免税事業者のこともあるんですね。
そうだね。基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、登録もしていなければ納税義務は免除されるんだ。課税事業者になるなら課税売上割合の計算が要って、控除できない消費税はコストとして各事業に按分することになるよ。どちらに当たるかは、税理士と確かめながら進めよう。
実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)
国保連の支払決定額も、事業所ごとに分けて仕訳するんですか?
そうなんだ。毎月の仕訳の段階で事業所別に分けておけば、決算の事業別損益も処遇改善の実績報告も、そこから作れるよ。
| 時期 | 作業 | 担当 | 帳票 |
|---|---|---|---|
| 事業開始時 | 会計ソフトに部門(事業所×サービス種別)を設定 | 経理 | 部門マスタ |
| 事業開始時 | 按分基準を経理規程・内規に定める | 経理責任者 | 経理規程 |
| 毎月 | 売上・直接費を部門に仕訳。国保連の支払決定額は事業所別に分ける | 経理 | 仕訳帳、支払決定額通知書 |
| 毎月 | 兼務職員の勤務時間を事業別に集計 | 労務 | 勤務形態一覧表 |
| 四半期または年度末 | 共通経費を按分基準で配賦 | 経理 | 配賦計算表 |
| 決算時 | 事業別の損益を作成。社福は拠点区分ごとの計算書類(サービス区分を設けた拠点区分は事業活動明細書を付ける) | 経理 | 事業別損益計算書 |
| 処遇改善の実績報告時 | 実績報告書を作成。事業所ごとの加算総額は国保連の「福祉・介護職員等処遇改善加算総額のお知らせ」に基づいて記入 | 経理 | 別紙様式3-1・3-2 |
よくあるつまずき
管理者の人件費は、メインの通所に全部付けていました。
それだと他の事業の採算が実態より良く見えてしまうんだ。兼務の勤務表をもとに、勤務時間比で分けよう。
処遇改善加算を法人でまとめて受けて、事業所別に分けていない場合は?
実績報告書の別紙様式3-2は、事業所ごとの加算総額を書く様式なんだ。加算総額は国保連の「お知らせ」で事業所別に分かるから、毎月の仕訳を事業所別にしておくと突き合わせやすいよ。法人でまとめて作ってもいいけれど、事業所別の内訳は要るんだ。
- 按分基準が毎年変わる。年度比較ができず、運営指導で説明しにくい。基準は規程に固定する
- 兼務職員の人件費を主たる事業に全額付ける。他の事業の採算が実態より良く見える。勤務時間比で分ける
- 保険外サービスの消費税を非課税として処理する。課税事業者なら課税売上の申告漏れになる。保険外は課税で、免税かどうかは基準期間の課税売上高で判定する
- 補助金を売上に混ぜる。補助金は不課税で、事業の収益性の判断からも分ける
- 処遇改善加算の事業所別の加算総額を把握していない。実績報告書の別紙様式3-2は事業所ごとの加算総額を書く。国保連の支払決定を事業所別に仕訳しておく
- 社福で拠点区分の設定を誤る。一体として運営される施設・事業所・事務所ごとが原則で、特養や老健などの施設は施設ごとに独立の拠点区分。収益事業は別の拠点区分にする
経理・管理側の視点
区分経理は、制度に合わせるための作業だと思っていました。
もう1つの大事な目的は、どの事業が利益を生んでいるかを毎月見ることなんだ。基本報酬が固定されているから、事業別の利益率の差は稼働率と人件費率の差として表れるよ。
区分経理の目的は、制度への対応だけでなく、どの事業が利益を生み、どの事業が食っているかを毎月見ること。介護事業は基本報酬が固定されているので、事業別の利益率の差は稼働率と人件費率の差であり、それは事業所ごとの運営の差でもある。
月次で事業別の損益を出せる体制は、2027年度改定の影響額をサービス別に試算する土台にもなる。報酬の変わり方はサービスごとに違うので、合算した損益では改定の影響が読めない。
月次で事業別の損益が出せれば、改定の影響もサービス別に読めるんですね。
報酬の変わり方はサービスごとに違うから、合算では読めないんだ。区分経理は制度対応だけでなく、2027年度改定の試算の土台にもなるよ。
出典
- 介護保険の給付対象事業における会計の区分について(平成13年3月28日老振発第18号 厚生労働省老健局振興課長通知)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第38条・第95条
- 社会福祉法人会計基準(平成28年厚生労働省令第79号)第10条
- 社会福祉法人会計基準の運用上の取扱いについて(平成28年3月31日 厚生労働省社会・援護局長等通知)
- 社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項について(平成28年3月31日 厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長等通知)
- 国税庁 消費税法基本通達 第6章第7節 社会福祉事業等関係(6-7-1〜6-7-5)
- 国税庁 質疑応答事例(消費税)非課税となる「居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」の具体的な範囲
- 国税庁 質疑応答事例(消費税)居宅サービスにおける利用者負担の交通費等の費用の取扱い
- 国税庁 質疑応答事例(消費税)福祉用具貸与に係る取扱い
- 国税庁 消費税法基本通達5-2-15(補助金、奨励金、助成金等)
- 消費税法(第9条・第30条・第57条の4)
- 令和8年度 処遇改善加算 基本通知(老発0313第6号 令和8年3月13日)
記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。
