キャリアパス要件・職場環境等要件とは|処遇改善加算【令和8年度】の要件と証拠書類

結論(この記事でわかること)
ミナ施設長から「うちは処遇改善加算Ⅲのままだけど、Ⅱイに上げるには何をそろえればいいの?」と聞かれました。キャリアパス要件や職場環境等要件は、何があれば満たしたことになるんでしょうか。
ジムチョー計画書にチェックを入れるだけでは足りなくて、規程・計画・記録の書類で裏付けるものなんだ。Ⅲから上げるなら、年額440万円の職員の設定と、職場環境等要件の項目を増やすこと、それに取組の公表が要るよ。
ミナ要件ごとに「どの書類があれば説明できるか」を先に決めておく、ということですね。
ジムチョーそういうことだね。令和8年度は誓約で先に算定できる事業所もあるけれど、ロの特例要件を満たす事業所に限られるんだ。誓約した分は、2027年3月末までに書類をそろえておこう。
処遇改善加算の区分は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、月額賃金改善要件、職場環境等要件、令和8年度特例要件の組み合わせで決まる。どの要件も、規程・計画・記録の書類で裏付けられて初めて満たしたことになる。届出に一律に添付はしないが、指定権者に求められたらすぐ出せるよう保管する(令和8年度の基本通知(老発0313第6号。以下「基本通知」)6・9(1)②)。
押さえる点は3つ。
- 令和8年度の誓約は、ロの特例要件を満たす事業所だけ。従来から対象のサービスで、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳと職場環境等要件を「令和9年3月末までに整える」と誓約して算定できるのは、ケアプランデータ連携システムの利用などの特例要件を満たす事業所に限られる(基本通知 3(1)②〜⑤・⑦)。令和7年度は、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲと職場環境等要件を、どの事業所も誓約できた
- 年額440万円は数え方で結果が変わる。手当・賞与は含め、社会保険料などの事業主負担は含めない。改善の前からすでに440万円以上の人は数えない
- 職場環境等要件は記録と公表まで。Ⅰ・Ⅱは、取組の項目と具体的な内容を、介護サービス情報公表システムの「事業所の特色」欄などで公表する
区分ごとの加算率と制度の全体像は処遇改善加算の区分と要件にまとめた。この記事は、要件の中身と、満たしたことを示す書類に絞る。
区分ごとに必要な要件(Ⅰイ〜Ⅳと新しく対象になったサービス)
表を見ると、ⅢとⅡイの間で要件がいちばん増えるんですね。
そうなんだ。440万円の職員、職場環境等要件の項目の上乗せ、取組の公表の3つが一度に加わるよ。逆にⅡイからⅠイは、キャリアパス要件Ⅴの1つだけなんだ。
訪問介護、通所介護、施設系など従来から対象のサービスの要件(基本通知 別紙1 表2-2)。どの区分も、加算額以上の賃金改善が前提になる。
| 要件 | Ⅰロ | Ⅰイ | Ⅱロ | Ⅱイ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 月額賃金改善要件 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − |
| キャリアパス要件Ⅳ(年額440万円) | ○ | ○ | ○ | ○ | − | − |
| キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置) | ○ | ○ | − | − | − | − |
| 職場環境等要件 | 各2・生産性3 | 各2・生産性3 | 各2・生産性3 | 各2・生産性3 | 各1・生産性2 | 各1・生産性2 |
| 見える化(取組の公表) | ○ | ○ | ○ | ○ | − | − |
| 令和8年度特例要件 | ○ | − | ○ | − | − | − |
「各2・生産性3」は、生産性向上以外の5区分で各2項目以上、生産性向上で3項目以上。
2026年6月から対象になった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援は区分が1つで、令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用か、社会福祉連携推進法人への所属)か、加算Ⅳに準ずる要件(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件 各1・生産性2)のどちらかを満たす(基本通知 3(2)、別紙1 表2-3)。月額賃金改善要件と見える化はかからず、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱは「職員」について整える。特例要件を満たさなくても、令和9年3月末までに整えると誓約できる。
令和7年度までとの違い
| 項目 | 令和7年度(老発0207第5号) | 令和8年度(老発0313第6号) |
|---|---|---|
| 月額賃金改善要件 | ⅠとⅡ(Ⅱは一部の事業所だけ) | 1つだけ(Ⅱはなくなった) |
| キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲの誓約 | どの事業所も、令和8年3月末までの整備を誓約できた | 特例要件を満たす事業所だけ、令和9年3月末まで |
| キャリアパス要件Ⅳの誓約 | なし(合理的な説明による例外だけ) | 特例要件を満たす事業所は誓約できる |
| 職場環境等要件の誓約 | どの事業所も誓約できた | 特例要件を満たす事業所だけ(6区分28項目の中身は同じ) |
令和6年度だけの扱いだった、キャリアパス要件Ⅳを月額8万円以上の改善で代える方法(令和6年度 Q&A 第3版 問5-1)や、職場環境等要件の旧24項目は、もう使えない。令和7年度に誓約して整えられなかった要件は原則として返還の対象だが、令和8年度に特例要件を満たして計画書で改めて誓約した事業所は、令和7年度分の返還を求めないとされている(処遇改善加算 Q&A 第1版 問4-10。以下「Q&A」)。
キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ(整えるものと証拠書類)

キャリアパス要件Ⅰと要件Ⅲは、どちらも賃金規程の話に見えます。何が違うんですか?
Ⅰは職位ごとの任用の条件と給与の体系、Ⅲはそこに「どうなったら昇給するか」を足したものなんだ。Ⅰだけなら、昇給の決まりまでは求められていないよ。
従来から対象のサービスでは、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲは「介護職員」について整える。令和7年度から算定している事業所は、すでに満たしている取組について、ほかの職種のための新たな取組は求められない(Q&A 問4-11)。
キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
次の3つを全部満たす(基本通知 3(1)②)。
- 介護職員の職位・職責・職務内容などに応じた任用の要件(賃金に関するものを含む)を定める
- それに応じた賃金体系を定める。一時金など臨時に払うものは入らない
- 1と2を就業規則などの書面で整え、全ての介護職員に周知する。常時雇用する人が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所は、内規でもよい
整えるもの。等級(例: 初級・中級・上級)ごとに、任用の条件(経験年数・資格・研修)、職責、基本給の幅と手当を書いた表を、賃金規程の別表にする。「等」には法人全体の取扱要領や10人未満の事業所の内規が入り、計画書の様式(別紙様式2)の参考2に小規模事業所用の例がある(Q&A 問4-1)。
証拠書類。就業規則・賃金規程(等級表)、周知の記録(配布・掲示・説明会)。就業規則と別に作った任用要件・賃金体系の規程も、保管して求めに応じて出す書類に入る(基本通知 6)。
キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標と、次のaかbの具体的な計画を作り、研修の実施または機会の確保をして、全ての介護職員に周知する(基本通知 3(1)③)。
- a: 計画に沿って研修の機会の提供か技術指導(OJT・OFF-JT)をし、あわせて能力評価を行う
- b: 資格取得を支援する(受講のための勤務シフトの調整、休暇、受講料・交通費の援助など)
意見は面談やメールでの募集などで、できるだけ多くの職員から聴く(Q&A 問4-2)。計画に様式や期間の決まりはなく(Q&A 問4-4)、能力評価は自己評価に上司が評価を付ける方法などでよい(Q&A 問4-5)。
証拠書類。年間の研修計画(テーマ・対象者・実施月)、意見を聴いた記録、受講記録、aなら能力評価の面談シート、bなら資格取得支援の規程と費用を負担した記録。実績報告書(別紙様式3-1)では、aかbにチェックして具体的な取組内容を書く。
キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
次のいずれかの昇給の仕組みを、就業規則などの書面で整えて全ての介護職員に周知する。10人未満の事業所は内規でもよい(基本通知 3(1)④)。
| 仕組み | 中身 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 経験に応じて昇給 | 勤続年数・経験年数に応じて昇給 | 何年でいくら上がるかを書く |
| 資格等に応じて昇給 | 介護福祉士の取得、実務者研修の修了などに応じて昇給 | 別の法人で資格を取ってから入った人も昇給する仕組みにする |
| 一定の基準で定期に判定 | 実技試験や人事評価の結果で昇給 | 客観的な評価基準、昇給の条件、判定の時期を明文化する(Q&A 問4-9) |
昇給は基本給が望ましいが、手当や賞与でもよい(Q&A 問4-7)。非常勤を含め、全ての介護職員が対象になりうる仕組みにする(Q&A 問4-8)。証拠書類は、賃金規程の昇給の条項、評価基準表と評価の記録、昇給の実績が分かる賃金台帳。
キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)
440万円は、賞与や手当も入れて数えていいんですか?
入れていいんだ。ただ社会保険料の事業主負担は入れないし、改善の前からすでに440万円を超えている人は数えないから、そこは気をつけよう。
経験・技能のある介護職員のうち1人以上の、賃金改善後の見込額(処遇改善加算による改善を含む)が年額440万円以上であること。改善の前から440万円以上の人は除く(基本通知 3(1)⑤)。
| 論点 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 含める賃金 | 基本給・手当・賞与を含める。社会保険料などの事業主負担は含めない | Q&A 問5-1 |
| 対象者 | 介護福祉士で勤続10年以上が基本。他法人での経験の通算など事業所の裁量で決められ、介護福祉士がいない小規模事業所は資格のない人でもよい | 基本通知 2(2)、Q&A 問5-3 |
| 法人で一括申請 | 一括する事業所の数以上の人数が、法人全体にいればよい | Q&A 問5-2 |
| 年度の途中で退職 | 指定権者に合理的な理由を説明すれば、満たしたものとして扱える | Q&A 問5-4 |
小規模で職員間の賃金のバランスに配慮が要る、地域の賃金水準が低い、規程の整備や経験の蓄積に期間が要る、などの理由で設定できない場合は、計画書に理由を書けば指定権者の判断で幅広く認められる(Q&A 問5-8)。証拠書類は、対象者の年収の試算表(基本給・手当・賞与の内訳と、処遇改善加算による分)と賃金台帳。計画書(別紙様式2-3)と実績報告書(別紙様式3-2)に、440万円以上になる職員の数を書く。
キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
事業所か併設の本体施設で、サービスごとに決まった加算を届け出ていること(基本通知 3(1)⑥、別紙1 表3)。
| サービス | 届け出ている必要がある加算 |
|---|---|
| 訪問介護 | 特定事業所加算Ⅰ・Ⅱ |
| 通所介護、通所リハ、グループホーム、小規模多機能、老健など | サービス提供体制強化加算Ⅰ・Ⅱ |
| 特定施設 | サービス提供体制強化加算Ⅰ・Ⅱ、または入居継続支援加算Ⅰ・Ⅱ |
| 特養・地域密着型特養 | サービス提供体制強化加算Ⅰ・Ⅱ、または日常生活継続支援加算Ⅰ・Ⅱ |
| 短期入所 | サービス提供体制強化加算Ⅰ・Ⅱ、または併設の本体施設が処遇改善加算Ⅰを届出 |
これらの加算を届け出られなくなって区分が変わるときは、変更届が要る(基本通知 5(1)④)。入居継続支援加算と日常生活継続支援加算は、喀痰吸引が必要な利用者の割合などを満たせない状態が3か月続くまでは区分を変えなくてよく、4か月目から変える(Q&A 問6-1・6-2)。区分の判定はサービス提供体制強化加算の区分判定と特定事業所加算(訪問介護)にまとめた。証拠書類は、体制届の控えと、介護福祉士の割合などを計算した表。
月額賃金改善要件(令和8年度の扱い)
月額賃金改善要件は、6月から変わったんですか?
中身は「加算Ⅳ相当額の半分以上を、基本給か毎月決まって払う手当で」のままだよ。令和7年度まであった月額賃金改善要件Ⅱはなくなって、1つになったんだ。
処遇改善加算Ⅳの加算額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当(以下「基本給等」)の改善に充てる。Ⅳ以外の区分を算定する事業所は、仮にⅣを算定した場合の見込額の2分の1で判定する(基本通知 3(1)①)。
- 新しく算定を始める事業所でなければ、賃金総額を増やす必要はない。手当や一時金の一部を基本給等に付け替えて満たしてもよい。その際、一人ひとりの賃金が下がらないよう努める(Q&A 問3)
- 「決まって毎月支払われる手当」は、労働と直接関係があり、個人の事情と関係なく払う手当。額が月ごとに変わってもよい。通勤手当・扶養手当は入らない(Q&A 問1-3)。時給・日給の引上げは基本給の引上げとして扱う(Q&A 問1-4)
令和8年度の変わった点は3つ。
- 令和7年度まであった月額賃金改善要件Ⅱ(旧ベースアップ等加算相当額の3分の2以上を新たに基本給等で引き上げる要件)はなくなった
- 新しく対象になった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などにはかからない(別紙1 表2-3)
- 別に、令和7年度より増えた加算額(上位区分やロへの移行、加算率の引上げなどで増えた分)は新たな賃金改善に充て、ベースアップ(賃金表の改訂で基本給等を一律に引き上げること)を基本とする。それだけでできなければ手当や一時金と組み合わせてもよい(基本通知 2(2))
証拠書類は、給与規程(基本給表、手当の定め)と賃金台帳。計画書(別紙様式2-1の3(1))と実績報告書(別紙様式3-1の3(1))に、加算Ⅳ相当額の2分の1と基本給等による改善額を並べて書く。手当の設計は処遇改善加算を給与にどう反映させるかにまとめた。
職場環境等要件と見える化(公表)
職場環境等要件は、毎年新しい取組を足さないといけないんですか?
前の年から続けて算定しているなら、続けていればいいんだ。それより、取り組んだことが記録で示せるか、Ⅰ・Ⅱなら公表まで済んでいるかを確かめておこう。
6区分28項目から取組を選んで実施する(基本通知 3(1)⑦、別紙1 表4)。
| 区分 | 項目(番号と要旨) | 残しておくとよい書類の例 |
|---|---|---|
| 入職促進 | ①理念・ケア方針・人材育成方針の明確化、②事業者の共同による採用・研修、③経験や資格にこだわらない幅広い採用(実績でも可)、④職業体験の受入れ・地域行事への参加 | 方針の文書、採用の記録 |
| 資質の向上・キャリアアップ | ⑤実務者研修などの受講支援、⑥研修受講やキャリア段位制度と人事考課の連動、⑦エルダー・メンター制度、⑧キャリア面談など定期的な相談の機会 | 受講支援の規程、費用負担や面談の記録 |
| 両立支援・多様な働き方 | ⑨育児・介護との両立のための休業制度の充実、⑩短時間正規職員・正規職員への転換の制度、⑪有給休暇の取得目標と声かけ、⑫複数担当制などで業務の偏りを解消 | 育児・介護休業規程、有給休暇の取得状況の表 |
| 心身の健康管理 | ⑬相談窓口、⑭短時間勤務の人も受けられる健康診断・ストレスチェック、休憩室、⑮腰痛対策などの研修、⑯事故・トラブルへの対応マニュアル | 窓口の周知文、実施記録、マニュアル |
| 生産性向上 | ⑰業務改善の体制づくり(委員会など)、⑱現場の課題の見える化(業務時間調査など)、⑲5S活動、⑳業務手順書・記録様式の工夫、㉑介護ソフト・タブレット、㉒介護ロボット・インカム、㉓役割分担と介護助手の活用、㉔委員会の共同設置など協働化 | 委員会の議事録、調査結果、機器の契約書 |
| やりがい・働きがい | ㉕ミーティングでの気づきを踏まえた改善、㉖地域の児童・生徒・住民との交流、㉗理念などを学ぶ機会、㉘好事例や謝意を共有する機会 | ミーティングや研修の記録 |
| 算定する区分 | 生産性向上以外の5区分 | 生産性向上の区分 | 見える化 |
|---|---|---|---|
| Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ | 区分ごとに2以上 | 3以上(⑰か⑱を必ず含む) | 要る |
| Ⅲ・Ⅳ、新しく対象のサービス | 区分ごとに1以上 | 2以上 | 要らない |
- 生産性向上推進体制加算を算定していれば、生産性向上の区分は満たしたものとする(基本通知 3(1)⑦。生産性向上推進体制加算の要件)
- 1法人で1つの施設・事業所だけを運営する小規模事業者は、㉔を実施していれば生産性向上の区分を満たす(計画書では「㉔の2」を選ぶ)
- 1つの項目に並ぶ取組は、どれか1つでよい(Q&A 問7-2)。前年度から続けて算定するなら、毎年新しい取組を足す必要はない(Q&A 問7-1)
見える化(公表)。Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロは、介護サービス情報公表制度で処遇改善加算の算定状況を報告し、実施した取組の項目と、その具体的な取組内容を「事業所の特色」欄に書く。報告の対象でない事業所は、自社のホームページなどで公表する(基本通知 3(1)⑦)。証拠書類は、各取組の記録と、公表した画面の写し。取組の例は厚生労働省の職場環境等要件 取組の事例集にある(Q&A 問7-6)。
区分が上がると月いくら増えるか(計算例)

区分が1つ上がると
モデルは通所介護、1か月の介護報酬300万円(処遇改善加算を除く基本報酬と各種加算の合計。300,000単位 × 1単位10.00円、地域区分「その他」)。加算率は基本通知 別紙1 表1-2(Ⅳ 8.3%、Ⅲ 9.9%、Ⅱイ 10.9%、Ⅱロ 11.8%、Ⅰイ 11.1%、Ⅰロ 12.0%)。
| 上がり方 | 満たす要件 | 加算額/月 | 増える額/月 | 増える額/年 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅳ → Ⅲ | キャリアパス要件Ⅲ | 249,000円 → 297,000円 | +48,000円 | +576,000円 |
| Ⅲ → Ⅱイ | キャリアパス要件Ⅳ、職場環境等要件を13項目以上に、見える化 | 297,000円 → 327,000円 | +30,000円 | +360,000円 |
| Ⅱイ → Ⅰイ | キャリアパス要件Ⅴ | 327,000円 → 333,000円 | +6,000円 | +72,000円 |
| Ⅱイ → Ⅱロ | 令和8年度特例要件 | 327,000円 → 354,000円 | +27,000円 | +324,000円 |
| Ⅰイ → Ⅰロ | 令和8年度特例要件 | 333,000円 → 360,000円 | +27,000円 | +324,000円 |
ⅣからⅠロまで上げると、月111,000円、年1,332,000円増える。通所介護では、キャリアパス要件Ⅴで上がる分(月6,000円)より特例要件で上がる分(月27,000円)が大きい。一方、訪問介護で1か月の介護報酬200万円(200,000単位 × 10.00円)なら、ⅡイからⅠイ(24.9% → 27.0%)で月498,000円が540,000円になり、月42,000円(年504,000円)増える。訪問介護のⅤは特定事業所加算Ⅰ・Ⅱの届出で満たす。
月額賃金改善要件の下限
上の通所介護で、加算Ⅳ相当額は月249,000円、年2,988,000円。その2分の1の年1,494,000円(月124,500円)以上を基本給等の改善で払う。Ⅰロを算定していても、判定はⅣ相当額で行う。介護職員15人に均等に配るなら、1人あたり月8,300円。
年額440万円に届くかの試算
介護福祉士・勤続11年のリーダー職員(通所介護)の、改善後の年額の見込み。
| 内訳 | 計算 | 年額 |
|---|---|---|
| 基本給 | 250,000円 × 12か月 | 3,000,000円 |
| 資格手当・リーダー手当 | 25,000円 × 12か月 | 300,000円 |
| 処遇改善手当 | 30,000円 × 12か月 | 360,000円 |
| 賞与 | 2回分 | 600,000円 |
| 合計 | 4,260,000円 |
440万円まで140,000円足りない。処遇改善手当を月11,700円上げると年140,400円増え、4,400,400円で届く。法定福利費の事業主負担を15%と置くと、事業所が払う額は年161,460円。事業主負担を足して「440万円を超えた」と数えるのは誤りで、判定は本人に払う賃金だけで行う。
通所介護だと、ⅡイからⅠイは月6,000円しか変わらないんですね。ⅢからⅡイの月30,000円のほうが大きいです。
通所介護ではそうなんだ。同じⅡイからⅠイでも、訪問介護の例だと月42,000円変わるから、サービスによって重みが違うんだよ。
440万円の職員への上乗せは、ⅢからⅡイで増える加算でまかなえそうですね。
例の数字なら足りるね。加算は全額を賃金に回すものだから、増えた分をその職員と全体のベースアップにどう分けるかを、先に決めておこう。
自社の数字は処遇改善加算シミュレーターで試算できる。実際は利用者ごと・月ごとに端数を処理するため数百円〜数千円ずれ、1単位の単価は地域区分で変わる(地域区分と1単位の単価)。
実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

2027年1月から区分を上げるとしたら、いつまでに何を出せばいいですか?
通所介護なら12月15日までに、変更届出書と計画書の様式、体制届を出すんだ。その前に、規程の改定と職員への周知を済ませておくと安心だよ。
| 時期 | 作業 | 担当 | 帳票 |
|---|---|---|---|
| 届出の前 | 任用の要件と賃金体系(Ⅰ)、昇給の仕組み(Ⅲ)を規程にし、研修計画(Ⅱ)とあわせて全ての介護職員に周知。440万円の対象者の年額を試算(Ⅳ) | 事務長・管理者 | 就業規則・賃金規程、研修計画、年収の試算表、周知の記録 |
| 規程を変えたとき | 常時10人以上の事業所は、過半数組合か過半数代表者の意見を聴いて労働基準監督署に届け出る(労働基準法 第89条・第90条) | 事務長・社労士 | 就業規則変更届、意見書 |
| 区分を変える月の前月15日まで(施設系は当月1日)。2027年1月から上げる通所介護なら2026年12月15日 | 変更届出書と計画書の様式、体制届を提出 | 事務長 | 別紙様式4、別紙様式2-1〜2-3、体制等状況一覧表 |
| 情報公表の報告のとき(Ⅰ・Ⅱ) | 「事業所の特色」欄に取組の項目と具体的な内容を書く | 管理者 | 公表した画面の写し |
| 毎月 | Ⅴの加算を届け出られているか、440万円の対象者が在籍しているかを確かめる | 管理者・事務長 | 職員一覧、加算の台帳 |
| 2027年3月末まで | 誓約した要件の整備を終える | 事務長 | 規程、研修計画、取組の記録 |
| 2027年7月31日まで(通常) | 実績報告書で要件の状況と誓約した要件の整備を報告。就業規則を変えた場合は変更届出書も | 事務長 | 別紙様式3-1・3-2、別紙様式4 |
その年度に初めて算定するときの計画書は、算定を始める月の前々月の末日まで(基本通知 4(2))。年度の途中で区分を変えるときは、居宅系は前月15日、施設系(短期入所・特定施設・グループホーム・地域密着型特養を含む)は当月1日まで(基本通知 4(1)・5(1)③〜⑤)。処遇に関する就業規則の改訂だけなら、実績報告書と一緒に変更届出書を出す(5(1)⑥)。計画書・実績報告書と根拠資料、特例要件の根拠資料(ケアプランデータ連携システムは送受信の記録が分かる画面の写し)は2年間保存する(基本通知 4(2)(3)、Q&A 問8-4)。集計は処遇改善加算の実績報告にまとめた。
よくあるつまずき
就業規則に処遇改善手当のことは書いてあるんですが、職位ごとの給与の決まりはありません。それでもキャリアパス要件Ⅰは満たせますか?
手当の定めだけでは、職位・職責に応じた任用の要件と賃金体系にはならないんだ。等級ごとの任用の条件と基本給の幅を、規程に書き足しておこう。
誓約したまま、3月末を過ぎてしまったらどうなりますか?
要件を満たさない区分で算定していたことになって、返還の対象になりうるんだ。誓約した要件ごとに担当と期日を決めて、毎月進み具合を確かめておこう。
- 就業規則に任用の要件と賃金体系が書いていない。手当の定めだけ、一時金だけの体系では、キャリアパス要件Ⅰを満たさない
- 研修計画が名ばかり。意見を聴いた記録がない、受講の記録がない、aを選んだのに能力評価をしていない
- 昇給の仕組みが「経営状況を見て決める」だけ。評価で昇給するなら、評価基準・昇給の条件・判定の時期を明文化する
- 440万円の数え方を間違える。事業主負担を足す、改善前から440万円以上の人を数える、法人一括なのに事業所の数より人数が少ない
- Ⅴの加算が落ちたのに変更届を出さない。介護福祉士の退職でサービス提供体制強化加算が外れると、処遇改善加算もⅠからⅡに下がる
- 見える化を忘れる、項目だけ選んで終わる。Ⅰ・Ⅱは、取組の具体的な内容まで公表する。計画書に書いただけでは公表にならない
- 特例要件を満たさないのに誓約する、誓約の期限が切れる。要件を満たさない場合、指定権者は加算の一部または全部を返還させるか、加算を取り消すことができる(基本通知 7)
- 要件のための費用を賃金改善額に入れる。研修費や機器の代金は、賃金改善額に含められない(Q&A 問1-5)
経理・管理側の視点
経営会議では、区分を上げる話をどう説明すればいいですか?
加算は全額を賃金に回すから、事業所の利益は増えないんだ。「職員の賃金をいくら上げられるか」と「要件を毎年保てるか」の2つで説明するといいよ。
増えた加算は全額を賃金改善に充てるので、損益計算書では介護報酬収入と人件費が同じだけ増える。例の通所介護をⅢからⅡイに上げると年360,000円増え、440万円の職員への上乗せ(事業主負担込みで年161,460円)に充てても、198,540円をほかの職員に回せる。増えた加算額はベースアップが基本なので(基本通知 2(2))、上乗せと全体の引上げの配分は計画の段階で決めておく。
要件を満たすための費用(研修の受講料、機器の導入、規程を作る社労士への報酬など)は賃金改善額に入れられず、事業所の持ち出しになるので、区分を上げる前に年額で見積もる。また、Ⅳは440万円の職員の在籍、Ⅴは介護福祉士の割合と、毎年の維持が要る。上げた区分を落とすと加算は減るが、上げた賃金は簡単には下げられないので、退職の見込みを人事と毎月確かめる。
書類は、要件ごとに「何の書類で示すか」「どこにあるか」「誰が更新するか」を1枚の台帳にしておくと、運営指導でも実績報告でもそのまま使える(運営指導で見られる帳票)。
まずは、要件ごとに今ある書類と足りない書類を一覧にしてみます。
それがいちばんの近道だね。足りない書類に担当と期日を書いて、誓約した分は3月末までに埋めていこう。
出典
- 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)(老発0313第6号 令和8年3月13日)2(2)、3(1)①〜⑧、3(2)、4、5(1)、6、7、別紙1 表1-2・表2-2・表2-3・表3・表4、別紙様式2-1・2-3・3-1・3-2
- 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)(令和8年3月13日)問1-3〜1-5、問2-2、問3、問4-1〜4-11、問5-1〜5-8、問6-1・6-2、問7-1・7-2、問8-4
- 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)(老発0207第5号 令和7年2月7日)1、3①〜⑧
- 介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第3版)(令和6年6月20日)問5-1・問7-1
- 厚生労働省 介護職員等処遇改善加算 職場環境等要件 取組の事例集(令和7年3月)
- 厚生労働省 介護職員等処遇改善加算 特設ページ
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条・第90条
記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。
