処遇改善加算の賃金改善額の計算方法|計画書の見込額から実績の突合まで
結論(この記事でわかること)
ミナ処遇改善計画書に「賃金改善見込額」を書く欄があるんですが、何をどう計算すればいいんでしょうか。
ジムチョー管理する数字は3つだけなんだ。加算総額の見込み、それ以上の賃金改善見込額、月額賃金改善要件の下限。この順番で出していこう。
ミナまず加算総額を出して、それを下回らないように賃金改善を組み、その中で月額要件も満たす、という順番ですね。
ジムチョーそういうことだね。年度末には実績報告で実際の加算総額と突き合わせることになるから、計画の段階から毎月の差額を追える形にしておこう。
処遇改善加算の計算で事務長が管理する数字は3つだけ。
- 加算総額の見込み = 前年度の月平均単位数 × 加算率 × 1単位の単価 × 12ヶ月
- 賃金改善見込額 = 加算総額以上。基本給・手当・一時金の増額分に、法定福利費の事業主負担増加分を足したもの
- 月額賃金改善要件の充足額 = 加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、基本給または毎月決まって支払う手当で
この3つを計画書(別紙様式2)に書き、年度末に実績報告書(別紙様式3)で実際の加算総額と賃金改善実績額を突き合わせる。実績で賃金改善額が加算総額を下回れば、差額を追加支給するか返還する。この記事では計算の順番と、経理がつまずく端数・年度帰属・法定福利費の扱いを整理する。
加算額の計算式
加算額は、事業所全体の単位数に加算率をかければ出せますか?
実際は利用者ごと・月ごとに計算されて、単位数と金額でそれぞれ端数を処理するんだ。見込みを立てるときは、前年度の総単位数を12で割った月平均で概算するのが通例だよ。
1単位の単価は、どの事業所も10円で計算していいですか?
地域区分とサービス種別で、10.00円から11.40円の間で決まるんだ。自社の地域区分の単価で計算しておこう。
加算は利用者ごと・月ごとに次の式で計算され、国保連から支払われる。
加算単位数 = 所定単位数 × 加算率(1単位未満四捨五入)
加算額 = 加算単位数 × 1単位の単価(1円未満切り捨て)
「所定単位数」は、処遇改善加算を除く基本報酬と各種加算・減算の合計。1単位の単価は地域区分とサービス種別で10.00円〜11.40円の間で決まる。
事業所全体の年間見込額は、利用者ごとの計算を積み上げる代わりに、前年度の総単位数を12で割った月平均を使って概算するのが通例。
賃金改善額の定義
手当を増やした分だけが賃金改善ですか? 社会保険料も増えますよね。
法定福利費の事業主負担が増えた分も、賃金改善に含めていいんだよ。だから加算額の全額を額面の給与に回す必要はない。ただし月額要件の判定には入らないから、そこは分けて考えよう。
法定福利費の増加分は、給与計算のたびに実額を出さないといけませんか?
合理的な方法での概算が認められているよ。ただ任意加入の退職手当共済の掛金は含められないから、そこだけ外して計算しよう。
「賃金改善」は、加算を算定しなかった場合の賃金水準と比べて、どれだけ増やしたかを指す。計画書では前年度の賃金総額を基準に、本年度の賃金総額の見込みとの差を「加算による賃金改善見込額」として書く。
対象になる賃金は次のとおり。
| 区分 | 賃金改善に含められるか | 月額賃金改善要件に使えるか |
|---|---|---|
| 基本給の引き上げ | 含められる | 使える |
| 毎月決まって支払う手当(処遇改善手当等) | 含められる | 使える |
| 一時金・賞与の増額 | 含められる | 使えない |
| 法定福利費等の事業主負担の増加分 | 含められる | 対象外(月額要件は賃金そのもので判定) |
法定福利費の事業主負担増加分を含められる点が重要。賃金を増やせば健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の事業主負担が連動して増えるが、その増加分も「加算を賃金改善に使った額」として認められる。加算額の全額を額面の給与に回す必要はない。
含められる法定福利費等は、健康保険・介護保険・厚生年金・子ども・子育て拠出金・雇用保険・労災保険の事業主負担の増加分と、法人事業税の外形標準課税の付加価値額の増加分。退職手当共済のような任意加入の制度の掛金は含められない。金額は実額でなくてよく、合理的な方法による概算が認められている(厚労省 Q&A 問1-7)。月額賃金改善要件は基本給と毎月決まって支払う手当で判定するので、法定福利費はそこには入らない。
計算例
モデル事業所は通所介護、地域区分「その他」(1単位10.00円)、前年度の総単位数1,440,000単位(月平均120,000単位)、目標区分はⅠロ(加算率12.0%)、賃金改善の対象職員15人。
加算総額の見込み
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 月間の加算単位数 | 120,000 × 12.0% | 14,400単位 |
| 月間の加算額 | 14,400 × 10.00円 | 144,000円 |
| 年間の加算総額見込 | 144,000 × 12 | 1,728,000円 |
| うち加算Ⅳ相当額(年) | 120,000 × 8.3% × 10.00円 × 12 | 1,195,200円 |
| 月額賃金改善要件の下限(年) | 1,195,200 × 1/2 | 597,600円 |
賃金改善の配分計画
法定福利費率は事業主負担分の合計を15%と置く。
| 項目 | 計算 | 金額(年) |
|---|---|---|
| 処遇改善手当(月額) | 6,000円 × 15人 × 12ヶ月 | 1,080,000円 |
| 手当にかかる法定福利費 | 1,080,000 × 15% | 162,000円 |
| 小計(月額要件の判定対象は手当の1,080,000円) | 1,242,000円 | |
| 残額を一時金で配分 | (1,728,000 − 1,242,000) ÷ 1.15 | 422,608円 |
| 一時金にかかる法定福利費 | 422,608 × 15% | 63,391円 |
| 賃金改善見込額の合計 | 1,727,999円 |
手当の1,080,000円は月額賃金改善要件の下限597,600円を上回るので要件を満たす。一時金は年2回に分けて、稼働の実績を見ながら金額を調整する。
法定福利費率の15%は、健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・子ども・子育て拠出金の事業主負担分を丸めた目安で、解説では15〜17%を例示することが多い。自社の計画では法人の実績率(前年度の法定福利費 ÷ 給与総額)に置き換える。
一時金の計算で1.15で割っているのは、一時金にも法定福利費がかかるからですか?
そうなんだ。残りをそのまま一時金にすると、法定福利費の分だけ加算総額を超えてしまうよ。法定福利費率を自社の実績率に置き換えたら、ここで割る数も合わせて変えよう。
実績との突合
年度末に実際の加算総額を集計すると、稼働の増減で見込みからずれる。
| ケース | 加算総額(実績) | 賃金改善実績額 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 稼働が増えた | 1,760,000円 | 1,727,999円 | 不足32,001円を年度末の一時金に上乗せ |
| 稼働が減った | 1,690,000円 | 1,727,999円 | 賃金改善が加算を上回るので要件上は問題なし。差額37,999円は事業所の持ち出し |
不足分を追加支給しないまま実績報告を出すと、加算の一部返還を求められる。3月の稼働が確定した時点(4月中旬)で加算総額を仮集計し、年度末一時金で調整する運用にしておくと返還を避けられる。
不足分を賞与などの一時金として追加で配分すれば、返還を求めない扱いにできる(処遇改善加算 Q&A 問1-9)。いつまでに支給するかは、基本通知にも Q&A にも定めがない。実績報告書にはその年度の加算に対応して支払った賃金改善額を書くので、少なくとも実績報告書を出す前(令和8年度分は通常、令和9年7月31日が提出期限)に支給を終え、扱いを指定権者に確認しておく。
手当を月6,000円にして残りを一時金にすると、加算総額とほぼ同じ額になるんですね。
一時金を「残りの調整弁」にしておくのがコツだね。稼働が増えて加算総額が見込みを上回ったら、年度末の一時金で埋める。逆に減ったら持ち出しになるけれど、要件上は問題ないよ。
不足が出ているかどうかは、年度が終わってから確かめるんですか?
3月の稼働が確定する4月中旬に、加算総額を仮集計するんだ。そこで不足が分かれば、年度末の一時金で調整できるよ。
実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)
前年度の総単位数は、何を見て集計すればいいですか?
国保連に出した介護給付費請求書の控えが使えるよ。2〜3月に集計して見込みを出しておけば、3月に配分を決めて、4月15日の計画書に落ち着いて間に合わせられるんだ。
| 時期 | 作業 | 担当 | 使う帳票 |
|---|---|---|---|
| 2〜3月 | 前年度の総単位数を集計し、加算総額の見込みを計算 | 事務長 | 国保連の請求実績(介護給付費請求書の控え) |
| 3月 | 配分方法(手当額・一時金)を決め、月額賃金改善要件の充足を確認 | 事務長・管理者 | 配分計画表、賃金台帳(前年度) |
| 4月15日まで | 処遇改善計画書を提出 | 事務長 | 別紙様式2 |
| 毎月 | 加算額と支給額を突合し、累計の差額を記録 | 経理 | 支払決定額通知書、給与台帳 |
| 4月中旬 | 3月サービス分の請求で年間の加算総額を仮集計 | 経理 | 請求明細 |
| 5〜6月 | 不足分を一時金で精算 | 事務長 | 給与台帳 |
| 7月31日まで | 実績報告書を提出 | 事務長 | 別紙様式3-1・3-2 |
よくあるつまずき
国保連からの入金額を足していけば加算総額になりますか?
そこは気をつけたいところなんだ。入金は保険給付の7〜9割で、利用者負担の1〜3割が抜けている。加算は10割で集計しよう。ここを間違えると賃金改善額が足りているように見えて、あとで返還になってしまう。
3月サービス分の加算は5月に入ってくるので、翌年度の分として集計してしまった場合は?
実績報告はサービス提供月で集計するから、3月サービス分は前年度に入れるんだ。入金月で見るとずれるので、集計表はサービス提供月ごとに作っておこう。
- 加算総額に利用者負担分を入れ忘れる。加算は保険給付(7〜9割)と利用者負担(1〜3割)の合計が事業所の収入。国保連からの入金額だけで集計すると1〜3割少なく見積もってしまい、賃金改善額が過小になる
- 年度帰属をサービス提供月ではなく入金月で見る。3月サービス分の加算は5月に入金される。実績報告の集計はサービス提供月(4月〜翌3月)で行う
- 返戻・月遅れ請求の反映漏れ。返戻で翌月に再請求した分や、月遅れ請求分は、元のサービス提供月に戻して集計する。年度をまたぐ返戻は前年度の実績報告を修正する必要が出ることもある
- 前年度の賃金総額に前年度の加算分を含めたまま比較する。基準は「加算がなかった場合の賃金」。前年度の賃金総額から前年度の加算による賃金改善額を除いたものと比べる
- 法定福利費を二重に数える。手当にかかる法定福利費を賃金改善額に入れたうえで、さらに一時金の計算で総額から引き忘れると、賃金改善額が加算総額を超えて計画してしまう
- 月額賃金改善要件を一時金で満たそうとする。加算Ⅳ相当額の2分の1は基本給か毎月決まって支払う手当でなければならない。年2回の一時金では満たせない
経理・管理側の視点
処遇改善加算の収入は、会計でも別の勘定にしておくべきですか?
別勘定にする必要はないんだ。ただ補助科目か部門で加算収入を追えるようにしておくと、実績報告の集計が給与台帳と会計データの突合だけで済むよ。
処遇改善加算は、入金と支出が同額になる預り金に近い性格で管理するとずれが出ない。月次で「加算額(10割ベース)」と「処遇改善手当+法定福利費」の差額を累計し、年度末の一時金でゼロに戻す。差額の累計がプラスのまま年度を越えると返還リスク、マイナスなら持ち出しになる。
勘定科目は、手当は給料手当、一時金は賞与または給料手当、法定福利費は法定福利費に計上する。処遇改善加算の収入を別勘定にする必要はないが、補助科目や部門で加算収入を追えるようにしておくと、実績報告の集計が給与台帳と会計データの突合だけで済む。
社会福祉法人は拠点区分ごとの区分経理に処遇改善加算も乗るので、法人一括で計画書を出す場合は事業所ごとの按分ルールを先に決めておく。
毎月、加算額と手当の差額を累計しておけば、年度末に慌てなくて済みますね。
預り金と同じ扱いだと考えると分かりやすいよ。累計がプラスのまま年度を越えたら返還、マイナスなら持ち出し。年度末の一時金でゼロに戻そう。
出典
記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。
