処遇改善加算の実績報告でつまずく点|7月末までに揃える帳票と集計の順番
結論(この記事でわかること)
ミナ実績報告書って、計画書と何が違うんですか? 提出が7月末と聞いて焦っています。
ジムチョー1年分の加算総額と1年分の賃金改善実績額を並べて、後者が上回っていることを示す書類なんだ。数字は毎月の管理表からの転記で済むよ。つまずくのは集計のやり方で、順番を守れば怖くない。
ミナ加算総額を入金で拾う、対象期間を支給月で切る、法定福利費を入れ忘れる。この3つを避ければいいんですね。
ジムチョーそういうことだね。どれも最後は返還か追加支給につながるんだ。7月末から逆算して、集計の順番と使う帳票を先に決めておこう。
実績報告書は、1年分の加算総額と1年分の賃金改善実績額を並べて、後者が前者以上であることを示す書類。提出期限は「最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日」で、3月サービス分が5月に支払われる通常の事業所は7月31日。様式は別紙様式3-1(法人・事業所単位の報告)と3-2(事業所一覧)。
つまずきの原因はほぼ集計にある。加算総額を入金ベースで拾って過小に出す、賃金改善額の対象期間を支給月で切ってしまう、法定福利費を入れ忘れる。この3つで賃金改善額が加算総額を下回り、返還か追加支給になる。この記事は、集計の順番と帳票、つまずきの対処を7月末から逆算して並べる。
実績報告書の全体像
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 様式 | 別紙様式3-1(実績報告書)、3-2(事業所別の内訳) |
| 提出先 | 指定権者(都道府県、政令市・中核市、地域密着型は市町村) |
| 提出期限 | 最終の加算支払月の翌々月末。通常は7月31日 |
| 対象期間 | 前年度のサービス提供月(4月〜翌3月)分 |
| 記載する数字 | 加算総額、賃金改善実績額(うち法定福利費等の事業主負担増加分)、月額賃金改善要件の充足状況、職場環境等要件の実施状況 |
| 添付 | 自治体により賃金改善の根拠資料の提出を求められる。原則は事業所保管 |
賃金改善の根拠資料も、実績報告書と一緒に出すんですか?
原則は事業所で保管しておくものだよ。ただ自治体によっては提出を求められるから、指定権者の案内を確かめておこう。
様式は令和8年度も別紙様式3-1(総括表)と3-2(事業所ごとの個票)。提出先は指定権者で、政令市・中核市や事務移譲を受けた市町村にある事業所は都道府県ではなくその市に出す。都道府県が受け付けるのは県所管の市町村にある事業所分だけなので、複数の市町村に事業所がある法人は提出先が分かれる。
集計の順番
賃金台帳から先に集計してはダメですか?
加算総額を先に確定させるのがいいよ。そこから不足を出して、足りなければ一時金で精算してから様式に書く。逆にやると手戻りになりやすいんだ。
順番を間違えると手戻りが出る。加算総額を先に確定させ、そこから賃金改善額の不足を計算し、不足があれば一時金で精算してから様式に書く。
1. 加算総額の集計(4月中旬〜5月)
帳票は国保連の介護給付費等支払決定額通知書(または請求明細書の控え)。サービス提供月ごとに処遇改善加算の単位数と金額を拾う。
| 月 | 所定単位数 | 加算単位数 | 保険給付分 | 利用者負担分 | 加算額(10割) |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 118,000 | 14,160 | 127,440円 | 14,160円 | 141,600円 |
| 5月 | 121,000 | 14,520 | 130,680円 | 14,520円 | 145,200円 |
| … | … | … | … | … | … |
| 3月 | 123,000 | 14,760 | 132,840円 | 14,760円 | 147,600円 |
| 年間 | 1,452,000 | 174,240 | 1,568,160円 | 174,240円 | 1,742,400円 |
例は通所介護Ⅰロ(12.0%)、その他地域、利用者負担が全員1割の場合。加算額は10割で集計する。利用者負担2割・3割の利用者がいる事業所は、保険給付分の比率が変わるだけで10割の額は同じ。
数値は例。実際は利用者ごとに端数処理(加算単位数は1単位未満四捨五入、金額は1円未満切り捨て)があるため、所定単位数×加算率の単純計算とは数単位ずれる。
国保連からの入金は保険給付分だけですよね。10割の加算額にするには、どうすればいいですか?
利用者負担分を足して戻すんだ。2割や3割の利用者がいても変わるのは内訳の比率だけで、10割の額は同じだよ。月ごとに両方の列を並べておくと確かめやすいね。
2. 賃金改善実績額の集計(5月)
帳票は賃金台帳(給与ソフトの支給控除一覧)。対象は4月〜翌3月のサービス提供月に対応する賃金。給与の締め・支払いのずれをどう扱うかは、計画書で決めた「賃金改善実施期間」に合わせる。
| 項目 | 金額(年) |
|---|---|
| 処遇改善手当 | 1,080,000円 |
| 一時金(6月・12月支給分) | 420,000円 |
| 法定福利費の事業主負担増加分(15%) | 225,000円 |
| 賃金改善実績額 | 1,725,000円 |
3月末締め・4月払いの給与は、どちらの年度に入れますか?
計画書で決めた賃金改善実施期間に合わせるんだ。支給月で切ると3月分の手当が抜けてしまうから、計画書と同じ基準で1年分を切り出そう。
3. 突合と精算(5〜6月)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 加算総額 | 1,742,400円 |
| 賃金改善実績額 | 1,725,000円 |
| 不足額 | 17,400円 |
不足があれば、法定福利費込みで不足額を埋める一時金を支給する。不足17,400円なら一時金は 17,400 ÷ 1.15 = 15,131円(法定福利費2,269円を合わせて17,400円)。
厚労省の Q&A では、不足分を賞与などの一時金として追加配分すれば返還を求めない扱いにできるとされている(令和8年度 Q&A 問1-9)。その一時金をいつまでに支給するかは、基本通知にも Q&A にも定めがない。実績報告書にはその年度の加算に対応して支払った賃金改善額を書くので、少なくとも提出(通常は7月31日)の前に支給を終えておく。年度が終わってから支給する精算一時金を前年度の実績として扱えるかは、指定権者に確認する。
4. 様式への転記と提出(6〜7月)
別紙様式3-2で事業所ごとの加算総額と賃金改善額を書き、3-1で法人全体を集計する。月額賃金改善要件の欄には、加算Ⅳ相当額の2分の1と、基本給・毎月の手当による改善額を並べて記載する。
不足が17,400円なら、一時金も17,400円ですか?
法定福利費の分があるから、一時金は17,400円を1.15で割った15,131円でいいんだ。法定福利費の2,269円と合わせて17,400円になるよ。
様式は、3-1と3-2のどちらから書けばいいですか?
3-2で事業所ごとの加算総額と賃金改善額を書いてから、3-1で法人全体にまとめるんだ。月額賃金改善要件の欄も空けずに、金額を並べて書いておこう。
実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)
加算総額が確定するのは、5月末なんですね。
3月分の支払決定額が出てからになるからね。4月末に月別の仮集計をしておいて、5月末に返戻や月遅れの分を元の月に戻して確定させよう。
| 期限 | 作業 | 担当 | 帳票 |
|---|---|---|---|
| 4月10日 | 3月サービス分の国保連請求を完了 | 請求担当 | 介護給付費請求書 |
| 4月末 | 4月〜3月分の加算額を月別に仮集計 | 経理 | 請求明細の控え |
| 5月末 | 3月分の支払決定額を確認して加算総額を確定。返戻・月遅れ分を元の月に戻す | 経理 | 支払決定額通知書 |
| 5月末 | 賃金改善実績額を集計 | 経理・労務 | 賃金台帳、法定福利費の計算表 |
| 6月給与 | 不足があれば精算一時金を支給 | 事務長 | 給与台帳 |
| 7月15日 | 様式3-1・3-2を作成し、法人内で確認 | 事務長 | 別紙様式3 |
| 7月31日 | 提出 | 事務長 | 電子申請または郵送(指定権者の指示) |
よくあるつまずき
返戻になって翌年度に再請求した分は、どちらの年度に入れますか?
元のサービス提供月に戻すんだ。実績報告はサービス提供月の4月から翌3月で切る。提出後に分かったら修正報告を出そう。
年度の途中で退職した職員がいる場合は?
退職者に支給した手当も、賃金改善額に含まれるんだ。集計から落とすと過小になるから、在籍者だけで集計していないか確かめておこう。
- 入金額ベースで加算総額を集計する。国保連からの入金は保険給付分のみ。利用者負担分を足さないと1〜3割過小になり、賃金改善額が「足りている」ように見えてしまう。翌年の運営指導で指摘されると、遡って返還になる
- 返戻・過誤の反映漏れ。返戻後の再請求が翌年度に入った分は前年度の実績に戻す。逆に、前年度分の過誤調整で減額された分は前年度の加算総額から引く。提出後に発覚した場合は修正報告を出す
- 対象期間を支給月で切る。3月末締め・4月払いの給与を「4月支給だから翌年度」と扱うと、3月分の手当が抜ける。計画書で決めた実施期間と同じ基準で1年分を切り出す
- 法定福利費の入れ忘れ。事業主負担増加分は賃金改善額に含められる。入れ忘れると15%前後過小になる。逆に、加算と無関係な昇給分の法定福利費まで入れると過大になる
- 月額賃金改善要件の欄を空欄で出す。Ⅳ相当額の2分の1以上を月給で改善したことを、金額で示す必要がある。一時金だけで賃金改善した事業所はここで要件未達になる
- 退職者・中途入職者の扱い。年度途中の退職者に支給した手当も賃金改善額に含まれる。退職者の分を集計から落とすと過小になる
- 法人一括提出の按分ミス。複数事業所を法人でまとめて配分する場合、事業所ごとの加算総額と賃金改善額を3-2に分けて書く。事業所間で加算を融通した分は説明できるようにしておく
- 職場環境等要件の実施記録がない。実績報告には取り組みの実施状況も書く。計画書に書いた項目を実施した証拠(研修の記録、会議の議事録、機器の導入記録)を年度中に残しておく
運営指導で見られる書類
実績報告そのものより、その裏付けを運営指導(実地指導)で確認される。
実績報告を出したら、それで終わりではないんですね。
裏付けは運営指導で確認されるんだ。賃金台帳だけでなく、職員への周知の記録や法定福利費の計算根拠まで見られるから、報告と同じ時期にそろえておこう。
- 処遇改善計画書と実績報告書の控え
- 賃金改善の内容を職員に周知した記録(就業規則、賃金規程、通知文)
- 賃金台帳と、加算による改善額が分かる資料(手当の支給明細、一時金の計算表)
- 法定福利費の計算根拠
- 職場環境等要件の実施記録と、Ⅰ・Ⅱの場合は公表したページ
- キャリアパス要件の根拠(等級表、研修計画、昇給基準、440万円対象者の年収計算)
書類の保存期間は、通知では実績報告書と根拠資料を2年間保存し、求めがあれば速やかに提示するとされている。運営指導は過去5年分まで遡ることがあるので、賃金台帳や計画書は5年を目安に残しておくと安全。
経理・管理側の視点
実績報告は年に1回なので、7月にまとめて取りかかるものだと思っていました。
年度末にまとめて集計すると、返戻の年度帰属や退職者の分で数字が合わなくなりやすいんだ。だから月次で加算額と支給額の差額を追っておくのが、いちばんの近道だよ。
実績報告は年に1回の作業だが、月次で加算額と支給額の差額を追っていれば7月の作業は転記だけになる。逆に、年度末にまとめて集計すると、返戻の年度帰属や退職者の分で必ず数字が合わなくなる。
月次の管理表は次の5列で足りる。サービス提供月、加算額(10割)、処遇改善手当、一時金、法定福利費。累計の差額がプラスなら年度末一時金の原資、マイナスなら持ち出し。この表は運営指導の説明資料にもそのまま使える。
月次の管理表は、サービス提供月・加算額・手当・一時金・法定福利費の5列でいいんですね。
それで足りるよ。累計の差額を見ていれば、7月の作業は転記だけになる。運営指導のときの説明資料にもそのまま使えるんだ。
出典
記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。
