バックオフィス実務

運営指導(実地指導)で確認される書類一覧|通所介護の確認文書と返還につながる指摘

山積みの書類と電卓

結論(この記事でわかること)

ミナ

運営指導の通知が来ました。何を用意すればいいのか、全部の書類を出さなければいけないのか不安です。

ジムチョー

見られる書類は、厚労省の運営指導マニュアルに「確認文書」として一覧化されているんだ。確認文書以外の文書は原則求められないから、準備の土台はその一覧になるよ。ただし、加算の根拠書類は一覧の外から求められるんだ。

ミナ

つまり、手元の書類を全部出すのではなく、一覧に載っているものと、加算の要件にかかる書類を揃えればいいということですね。

ジムチョー

そういうことだね。通知は原則、実施日の1か月前までに来るから、その間に一覧と手元の書類を突き合わせて、足りないものを洗い出そう。

運営指導(2022年3月の運営指導マニュアルの策定で実地指導から名称変更)で見られる書類は、厚労省の運営指導マニュアルの別添にサービス種別ごとの「確認項目」と「確認文書」(以前は「標準確認項目」「標準確認文書」と呼ばれた)として一覧化されている。確認項目以外は特段の事情がない限り確認せず、確認文書以外の文書は原則求めないとされている(介護保険施設等指導指針)ので、準備の土台はこの一覧に沿って書類を揃えることになる。ただし、加算の根拠書類は確認文書に限らず算定要件ごとに求められ、確認文書に不備があって確認項目が確認できないときも、ほかの文書を求められることがある。

運営指導は次の3種類の指導からなり、通常は同じ日にまとめて行われる。

区分見られること主な帳票
介護サービスの実施状況指導計画に基づいてサービスが提供されているか居宅サービス計画、個別のサービス計画、サービス提供記録、モニタリング
最低基準等運営体制指導人員・設備・運営基準を満たしているか勤務形態一覧表、資格証の写し、運営規程、重要事項説明書、委員会・研修の記録、請求書・領収書
報酬請求指導加算・減算の算定が正しいか体制届の控え、加算ごとの根拠書類、請求明細とサービス提供記録

返還(過誤調整)につながるのは、主に3つ目の報酬請求指導での指摘だ。加算の算定要件を1つでも満たしていなかったと認められると、その加算は自己点検のうえ過誤調整で返還するよう指導される。加算の根拠書類(勤務形態一覧表と資格証、計画書と記録、委員会の議事録など)で要件を満たしていることを示せない加算は、算定していても返還を求められることがある。一方、運営基準の違反(たとえばサービス提供記録がない)だけでは、基本報酬の返還を求める根拠にはならず、改善指導になる。

実施は原則、実施日の1か月前までに文書で通知される(高齢者虐待が疑われるなど、あらかじめ通知すると日常のサービスの状況を確認できない場合は、指導の開始時に通知される)。運営指導は原則として指定の有効期間(6年)内に少なくとも1回行われ、居住系・施設系のサービスは3年に1回以上が望ましいとされている。書類の確認が中心の運営体制指導と報酬請求指導は、情報セキュリティの確保を前提に、オンライン会議システムなどで行うこともできる。施設・設備や利用者の様子を見る実施状況指導は実地で行う。

確認の対象は原則、前年度から直近(おおむね1か月前まで)の実績に係る文書で、利用者の記録は原則3名以内を抜き出して見る。電子で管理している書類(介護ソフトの記録や勤怠システムなど)は画面上で内容を確認する扱いで、印刷した書類の準備や提出は求めないとされている。事前や当日に出す資料や写しは1部でよく、指定申請や変更届で自治体にすでに出している文書は再提出を求められない。

確認文書の一覧(通所介護の例)

棚に並んだ書類ファイル
ミナ

一覧が長いです。どこが一番厳しく見られますか?

ジムチョー

返還につながるのは、主に報酬請求の区分なんだ。加算ごとの根拠書類、つまり勤務形態一覧表と資格証、計画書と記録、委員会の議事録などだね。ここが揃っているかを先に見ておこう。

区分帳票見られる点
実施状況居宅サービス計画(ケアプラン)通所介護計画・サービス提供が計画に沿っているか
実施状況通所介護計画書(利用者の同意があったことが分かるもの)目標と具体的な内容、利用者・家族への説明と同意、実施状況と目標の達成状況の記録
実施状況アセスメント・モニタリングの記録計画作成前のアセスメント、定期的なモニタリング
実施状況サービス提供記録提供日と具体的な内容、送迎の記録、身体的拘束等があればその記録。請求との一致
運営体制勤務形態一覧表(勤務表)、タイムカード・勤怠記録人員基準、常勤換算、加算の配置要件。実績との一致
運営体制資格証の写し、雇用形態(常勤・非常勤)が分かるもの職種ごとの資格、加算の資格要件
運営体制運営規程、重要事項説明書(同意が分かるもの)、利用契約書運営規程の必須項目、重要事項説明書との齟齬がないか、改定の反映
運営体制虐待防止・感染症対策の委員会の記録と指針委員会の開催状況と結果(感染症対策はおおむね6か月に1回以上)、指針の整備
運営体制研修・訓練の記録、ハラスメント防止の方針虐待防止・感染症・BCPの研修と訓練の計画と実績、認知症介護基礎研修の受講措置、職場のハラスメント防止の方針
運営体制業務継続計画(BCP)、非常災害対策計画、避難訓練の記録策定の有無、研修・訓練の実施
運営体制事故に際して採った処置の記録、苦情の受付簿と対応記録市町村・家族・ケアマネジャーへの連絡、処置と対応の記録(ヒヤリハットは面談で聞かれることがある)
運営体制個人情報の同意書、秘密保持の誓約書利用者・家族の同意、退職後も含めた従業者の秘密保持の誓約
運営体制請求書・領収書、国保連への請求書控え利用者からの費用徴収と領収書の発行、利用定員を上回っていないか
報酬請求体制等状況一覧表(体制届)の控え算定している加算と届出の一致
報酬請求加算ごとの根拠書類(確認文書に限らず、算定要件ごとに求められる)個別機能訓練の計画・記録・居宅訪問、口腔・栄養の計画・記録、割合の計算書、LIFE提出の控え
報酬請求請求明細書、サービス提供記録算定単位数がサービスの実態に合っているか、算定回数、減算の適用

確認文書として複数の例が挙げられているものは、そのうち1つで確認の目的が達成できるなら、複数を求める必要はないとされている。また、確認文書として例示されていても運営基準に明記されていないものは、出せなくても基準違反にはならない(マニュアル別添のはじめに)。確認項目はサービス種別ごとに違うので、通所介護以外は別添の自社のサービス種別のページで確かめる。施設・居住系のサービスでは、身体的拘束等の適正化や事故発生防止の委員会など、通所介護にない項目もある。

ミナ

「見られる点」の列に、「一致」という言葉がいくつも出てきますね。

ジムチョー

書類があるかだけでなく、書類どうしが合っているかを見られるんだ。勤務表と実績、提供記録と請求、算定している加算と届出。この組み合わせで突き合わせておこう。

事前提出資料や自己点検表は、自治体ごとの様式になる。2024年7月の改訂で、国のマニュアルにあった「各種加算等自己点検シート」と「各種加算・減算適用要件等一覧」は削除されたので、通知に添えられた様式か、指定権者のホームページの様式を使う。たとえば静岡県は、勤務体制一覧表、人員基準チェックリスト、加算等の自己点検シートなどを事前提出資料としている(2026年6月18日更新のページ)。事前提出資料は必ず求めなければならないものではなく、求めない自治体もある。

記録の保存期間

保管書類の箱
記録保存期間根拠
サービス提供に関する記録完結の日から2年。条例でこれより長く定める自治体がある(マニュアルは「2年から5年程度」としている)居宅サービス基準(通所介護は第104条の4)、指定権者の条例
処遇改善加算の関係書類計画書・実績報告書と根拠資料を併せて2年間保存。求めがあれば速やかに提示令和8年度 基本通知
労務関係(賃金台帳、勤怠記録、有給管理簿)本則は5年、当分の間は3年労働基準法第109条・第143条、同法施行規則第24条の7と附則
会計帳簿・計算書類税法は7年(欠損金が生じた事業年度は10年)。株式会社は会社法で10年、社会福祉法人は社会福祉法で10年法人税法、会社法第432条・第435条、社会福祉法第45条の24
ミナ

会計帳簿は税法で7年、会社法や社会福祉法だと10年と、記録によって保存期間がばらばらですね。

ジムチョー

根拠になる法律が違うからなんだ。サービス提供の記録は、利用者ごとに契約が終わった日から数えて、指定権者の条例で決まる年数だけ残すんだよ。自社の条例で何年かを確かめて、それより前に捨てないようにしよう。

ミナ

処遇改善加算の書類は、実績報告を出したら片付けていいですか?

ジムチョー

計画書も実績報告書も、根拠資料と併せて2年間保存する決まりなんだ。報告が済んだら終わりと考えずに、ほかの記録と同じように保管しておこう。

「完結の日」とは、個々の利用者について、契約の終了(解約・解除、他の施設への入所、利用者の死亡、自立など)で一連のサービス提供が終わった日をいう(解釈通知)。利用が続いている間は、保存期間は始まらない。保存期間は指定権者が条例で独自に定めてよく、条例に従っていれば基準違反にならない(令和3年度介護報酬改定Q&A Vol.3 問2)ので、自社の指定権者の条例で何年かを確かめる。労務の書類のうち、賃金台帳やタイムカードなどの労働時間の記録も、労働基準法第109条の「その他労働関係に関する重要な書類」に当たる。

条例が2年でも、サービス提供の記録は5年残しておくと説明しやすい。過誤調整で返還を求める場合の保険者の返還請求権は消滅時効が5年で(監査マニュアル 3.4.6)、運営指導で保存すべき文書がないと分かると、それより過去にさかのぼって確認され、法令違反や不正の可能性があるとして監査に切り替わることがあるからだ(運営指導マニュアル)。

返還につながる指摘の出どころ(計算例)

「注意」の文字と虫眼鏡

通所介護、延べ利用者が月600人日、地域区分「その他」(1単位10.00円)の事業所で、運営指導の指摘により返還を求められる例。金額は10割ベースで、要件を満たさなかった期間の加算を全額返還する場合の見込みとして計算している(月数や人数は仮定)。

指摘内容返還額の例
サービス提供体制強化加算の割合の根拠なし資格証の写しがなく、常勤換算の計算書もない。前年度(3月を除く)の割合を証明できない(Ⅰ)を全く算定できないとされた場合は 22単位 × 600人日 × 10.00円 × 12か月 = 1,584,000円(下位の区分を満たしていれば差額分)
個別機能訓練加算の居宅訪問なし利用者30人分の3か月ごとの居宅訪問の記録がない((Ⅰ)イ、月8日の利用と仮定)56単位 × 8日 × 30人 × 10.00円 × 24か月 = 3,225,600円
口腔機能向上加算の回数超過月2回の上限を超えて請求150単位(Ⅰ)× 超過回数 × 10.00円
体制届と請求の不一致要件を満たさなくなったのに変更届を出さず、届出のままの区分で算定を続けた算定できなかった月の加算(区分が下がるなら差額分)
勤務表と実績の不一致勤務表上は配置しているがタイムカードでは不在で、人員基準を満たさない月があった人員基準欠如の減算分(所定単位数の30%)。減算せずに請求した場合は、不正請求と判断されることもある

表の金額は10割ベースで、保険給付分は過誤調整で保険者に返し、利用者負担分は利用者に精算する(手順と資金繰りへの影響は過誤申立と返戻の手順)。

返還の対象は、要件を満たしていなかった期間の加算が基本で、どこまでさかのぼるかは指定権者が指導の中で示す。単なる請求上の誤りと判断されれば、事業所が自己点検のうえ過誤調整(取下げと再請求)で返還する。この場合の保険者の返還請求権は消滅時効が5年なので、最長でも5年分が上限の目安になる(監査マニュアル 3.4.6)。事業所が返戻分などを再請求できる期限(2年)とは別の時効である。自己点検では、ほかにも同様の誤りがないかの確認を求められ、利用者の保険者が複数なら、すべての保険者の分が対象になる。

一方、架空請求や、人員が足りないのに満たしているように装った請求のように、偽りその他不正の行為による請求と認められる(疑いを含む)場合は、運営指導を中止して監査に切り替わる。不正請求と認定されると、返還額に加えて返還額の40%の加算金が徴収され(介護保険法第22条第3項)、指定の取消しなどの処分もありうる。単なる誤りか不正かは、監査で事実関係を確かめて判断される。

準備にかける工数(帳票の整理40時間 × 1,800円 = 72,000円。時給は仮定)と比べれば、どの加算の根拠書類を優先して整えるかは明らか。

ミナ

居宅訪問の記録が示せないと、この例では2年分で320万円の返還になるんですか。

ジムチョー

要件を満たしていなかった期間の加算が返還の対象になるんだ。どこまでさかのぼるかは指定権者が示すけれど、消滅時効は5年だから、最長で5年分が上限の目安だね。準備の工数は40時間で7万円ほどだから、どの加算の根拠書類を優先して整えるかは明らかだよね。

ミナ

口腔機能向上加算の回数超過や体制届との不一致は、請求の段階で防げそうですね。

ジムチョー

そうだね。回数の上限や届出の区分は、請求前のチェックで止められるんだ。後から作れない記録の不備とは分けて、毎月の請求の中で確かめておこう。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ミナ

通知が届いたら、まず何から手をつければいいですか?

ジムチョー

最初に通知文を読んで、準備すべき書類と事前提出資料、当日の進め方を確かめるんだ。そのうえで1週間以内に、一覧に沿って書類の棚卸しをしよう。

時期作業担当帳票
通知を受けた日指定権者の通知文で、準備すべき書類、事前提出資料と提出期限、当日の進め方を確認。確認の対象は原則、前年度から直近の実績事務長通知文
通知から1週間確認文書の一覧に沿って、書類の有無を棚卸し事務長・管理者書類棚卸表
通知から2週間加算ごとの根拠書類を揃える。不足があれば、今から整えられるもの(規程の改定など)は整え、後から作れない記録は作らずに自己点検で把握する事務長加算管理台帳
通知から3週間勤務表とタイムカードは対象の各月、請求明細とサービス提供記録は抜き出した月について突合事務長・請求担当突合表
提出期限まで事前提出資料(自己点検表等)を提出事務長事前提出資料
当日管理者・事務長・相談員が対応(実情に詳しい職員や法人の労務・会計の担当者が同席してもよい)。聞かれたことに、書類を見せながら説明する管理者書類一式
指導後結果通知(文書)を受け取り、文書指摘には期限内に改善報告書を提出。過誤調整を求められたときは自己点検の結果を報告し、保険者へ過誤申立事務長改善報告書、過誤申立書

通知から当日までの進め方、当日の流れ、結果通知の後の対応は運営指導の準備チェックリストにまとめている。

ミナ

当日は、聞かれていない書類も並べておいたほうが丁寧ですか?

ジムチョー

聞かれていない書類まで並べなくても大丈夫だよ。見られるのは確認文書の一覧と、加算の要件にかかる書類が基本だからね。指摘があったときは、改善報告書を期限内に出すところまでやり切ろう。

よくあるつまずき

ミナ

勤務表はきちんと作っています。それで人員基準は証明できますよね?

ジムチョー

運営指導は実績で見るんだ。勤務表とタイムカードが合っていないと証明にならない。対象期間分を先に突き合わせておこう。

ミナ

加算の担当者が退職してしまった場合は、どうなりますか?

ジムチョー

書類の場所を本人しか知らないと、根拠を証明できなくなってしまうんだ。加算管理台帳に書類の所在を書いておけば、誰が担当でもすぐに出せるよ。

  • 確認文書や加算の要件にかかる書類以外を大量に用意する。通知の準備すべき書類等にないものを作る工数は無駄になる。一覧と通知に沿って揃える
  • 勤務表は整っているがタイムカードと合わない。運営指導は実績で見る。勤務表だけでは人員基準を証明できない
  • 加算の根拠書類が担当者の頭の中にある。退職で証明できなくなる。加算管理台帳に書類の所在を書く
  • 委員会を開いているが議事録がない。通所介護では虐待防止と感染症対策の委員会について、開催状況と結果が分かる記録が確認文書になっている 虐待防止の委員会・指針・研修・担当者が欠けたときの減算はこちらの記事にまとめた。
  • 重要事項説明書が改定前のまま。運営規程や重要事項説明書の記載に齟齬がないか、最新かを確認される。利用料や体制の改定を反映し、利用者に説明して同意を得ておく
  • 保存すべき記録を廃棄している。運営指導で保存すべき文書がないと分かると、過去にさかのぼって確認され、監査に切り替わることがある。条例の保存期間を確かめて、それより前に捨てない

経理・管理側の視点

ミナ

運営指導の準備に、経理はどう関わればいいですか?

ジムチョー

指摘されそうな加算の年額を一覧にして、根拠書類がそろっているかを四半期ごとに確かめるといいよ。年額に不備の確率を掛けた期待値が大きい加算から整えよう。

運営指導の準備は、加算管理台帳と勤務形態一覧表が月次で整っていれば、通知後の作業は突合と書類の取り出しだけになる。逆に、通知後に書類を作り始める事業所は、作れない書類(過去の居宅訪問記録、過去の議事録)が示せず、返還を求められる。

経理は、指摘の可能性がある加算の年額を一覧にし、根拠書類の充足度を四半期ごとに確認する。返還リスクの期待値(年額 × 不備の確率)が最も大きい加算から整える。運営指導は原則として指定の有効期間(6年)に少なくとも1回で、毎年来るわけではない。ただ、返還は最長5年分にさかのぼりうる(過誤調整の場合の消滅時効)ので、リスクの上限は加算の年額の5倍を目安に見る。

ミナ

加算管理台帳と勤務形態一覧表が月次で整っていれば、通知が来てからは突合と書類の取り出しだけなんですね。

ジムチョー

逆に通知が来てから作り始めると、過去の居宅訪問記録や議事録は作れないから、返還を求められることになるんだ。返還は最長5年分さかのぼりうるから、リスクの上限は加算の年額の5倍を目安に見ておこう。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。