加算・算定実務

高齢者虐待防止措置未実施減算と身体拘束廃止未実施減算|要件・減算率と研修・委員会の回数

手すりのある明るい通路

結論(この記事でわかること)

ミナ

運営指導の通知が来て、施設長に「虐待防止と身体拘束の委員会、ちゃんと開いているよね?」と聞かれました。どちらも減算があるんですよね?

ジムチョー

あるんだ。虐待防止はほぼ全サービスで基本報酬の1%、身体拘束は特養やグループホームなら10%、ショートステイや小規模多機能なら1%だよ。どちらも、虐待や拘束が起きたかどうかではなく、委員会・指針・研修といった仕組みがそろっているかで決まるんだ。

ミナ

何も起きていなくても、仕組みが1つ欠けていれば減算になる、ということですね。

ジムチョー

そういうことだね。しかも減算は、欠けていた事実が分かった月の翌月から、最短でも3か月続くんだ。帳票で「やった」と示せるかを、先に確かめておこう。

高齢者虐待防止措置未実施減算と身体拘束廃止未実施減算は、どちらも措置が講じられていないことに対する減算で、事業所で虐待や身体拘束が起きたかどうかは関係ない。措置のうち1つでも欠けていれば、利用者全員の所定単位数から減算される(令和6年度介護報酬改定Q&A Vol.1 問167、令和7年1月20日のQ&A 問1)。

項目高齢者虐待防止措置未実施減算身体拘束廃止未実施減算
減算率所定単位数の1%施設・居住系は10%、短期入所系・多機能系は1%
対象居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く全サービス(福祉用具貸与は2027年3月31日まで適用しない)施設・居住系、短期入所系、多機能系。訪問系・通所系・居宅介護支援などに減算はない
欠けると減算になる措置委員会の定期的な開催と結果の周知、指針、研修、担当者身体的拘束等の記録、3か月に1回以上の委員会と結果の周知、指針、研修
研修の回数年1回以上。施設・居住系は年2回以上年2回以上(解釈通知)
減算の期間事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで。改善の報告は事実が生じた月の3か月後なので、最短で3か月同じ
運営指導で見つかったとき遡らない。見つかった月が「事実が生じた月」になる短期入所系・多機能系について、同じく遡らないとQ&Aが示している

押さえる点は3つ。

  1. 起きたかどうかではなく、仕組みがあるか。委員会・指針・研修(虐待防止は担当者も)のどれか1つが欠けても減算になる
  2. 研修の回数がサービスで違う。虐待防止の研修は、訪問・通所・短期入所などは年1回以上、特養・老健・介護医療院・特定施設・グループホームは年2回以上
  3. 業務継続計画未策定減算と違って遡らないが、最短3か月は続く。減算の月は処遇改善加算も一緒に減る

減算にならないための4つの措置(要件)

長机が並ぶ会議室
ミナ

虐待防止の委員会は、年に何回開けばいいんですか?

ジムチョー

虐待防止のほうは「定期的に」とだけ書かれていて、回数の決まりはないんだ。身体拘束のほうは「3か月に1回以上」とはっきり決まっているよ。

ミナ

研修は、虐待防止も身体拘束も年1回でいいですか?

ジムチョー

そこはサービスで違うから気をつけよう。虐待防止は訪問や通所なら年1回以上、特養や特定施設、グループホームは年2回以上なんだ。身体拘束は、減算がかかるサービスならどこも年2回以上というのが解釈通知の考え方だよ。

高齢者虐待防止の4つの措置

運営基準(訪問介護なら居宅基準第37条の2)で、すべての介護サービス事業者に義務づけられている措置。2021年度改定で導入され、2024年3月31日までは努力義務だった。

措置解釈通知に書かれている中身運営指導の確認文書
委員会管理者を含む幅広い職種で構成し、定期的に開催して、結果を従業者に周知する。検討するのは、組織の体制、指針の整備、研修の内容、従業者が相談・報告できる体制、市町村への通報の方法、再発防止策とその効果の評価など委員会の開催状況及び結果がわかるもの
指針基本的な考え方、委員会その他の組織、研修の基本方針、虐待等が発生した場合の対応方法と相談・報告の体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決の方法、利用者等が指針を閲覧できることなどを盛り込む虐待の防止のための指針
研修指針に基づく研修プログラムを作り、定期的に実施する(年1回以上、施設・居住系は年2回以上)。新規採用時には必ず実施し、実施内容を記録する。事業所内の研修でもよい研修の計画及び実績がわかるもの
担当者上の3つを適切に実施するための担当者を置く。委員会の責任者と同じ人が望ましい担当者を置いていることがわかるもの

委員会は、テレビ電話装置等を使って開いてよく、ほかの会議体と一体的に設置・運営しても、ほかのサービス事業者と連携して行ってもよい。担当者は2024年度から、職務に支障がなければ、身体的拘束等適正化担当者・感染対策担当者・事故防止の担当者などとの兼務や、ほかの事業所・施設の担当との兼務も認められている。運営規程には「虐待の防止のための措置に関する事項」を定める。

研修の中身について、厚生労働省は2024年12月の要請文で、虐待防止の基礎的な事項に加え、ストレスマネジメントやアンガーマネジメントを含めるよう、事業者団体を通じて周知を求めている。虐待の要因として、職員の知識・意識の不足、ストレスや感情のコントロール、倫理観の欠如が多かったという調査結果を受けたもの。

身体的拘束等の適正化の措置

減算がかかるサービス(施設・居住系、短期入所系、多機能系)の運営基準に定められている措置。

措置解釈通知に書かれている中身運営指導の確認文書
記録身体的拘束等を行う場合に、その態様と時間、そのときの利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録する。切迫性・非代替性・一時性の3つの要件を満たすことを組織として慎重に確認し、その内容も記録する。記録は2年間保存(運営基準。保存期間は指定権者の条例でも確かめる)身体的拘束等の記録(拘束がある場合)
委員会3か月に1回以上開催し、結果を従業者に周知する。第三者や専門家(精神科専門医など)の活用が望ましい。報告の様式を整え、事例を集計・分析し、適正化策を周知して効果を評価する委員会の開催状況及び結果がわかるもの
指針基本的な考え方、委員会その他の組織、研修の基本方針、報告方法などの方策、発生時の対応、利用者等が指針を閲覧できることなどを盛り込む身体的拘束等の適正化のための指針
研修指針に基づく研修プログラムで、定期的な教育(年2回以上)を開催し、新規採用時には必ず実施する。実施内容を記録する研修の開催状況及び結果がわかるもの

3つの要件は、令和7年1月のQ&Aで次のように示されている。切迫性は、本人やほかの利用者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。非代替性は、身体拘束その他の行動制限以外に代わる介護方法がないこと。一時性は、行動制限が一時的なものであること。3つすべてを満たしたことの記録が確認できなければ、減算になる(同Q&A 問3)。

委員会は、関係する職種や扱う事項の関係が深いほかの会議体と一体的に設置・運営してよく、テレビ電話装置等で開いてもよい。研修の教材には、厚生労働省の「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和7年3月)が使える。

対象サービスと減算率、研修の回数

ミナ

うちの法人にはデイと訪問介護と特養があります。身体拘束の減算がかかるのは特養だけですか?

ジムチョー

特養には虐待防止の1%と身体拘束の10%の両方がかかるんだ。デイと訪問介護は虐待防止の1%だけだよ。ただ、デイや訪問でも2024年度から身体拘束は原則禁止で、行う場合の記録は義務になっているから、記録がなければ指導の対象になるんだ。

サービス虐待防止の減算身体拘束の減算虐待防止の研修身体拘束の研修
介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院1%10%年2回以上年2回以上
特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設、認知症対応型共同生活介護1%10%(特定施設の外部サービス利用型と、各サービスの短期利用は1%)年2回以上年2回以上
短期入所生活介護、短期入所療養介護1%1%年1回以上年2回以上
小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護1%1%年1回以上年2回以上
訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハ、定期巡回、夜間対応型訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハ、居宅介護支援、介護予防支援1%なし年1回以上—
福祉用具貸与2027年3月31日まで適用しない(経過措置)なし——
居宅療養管理指導、特定福祉用具販売対象外なし——

介護予防サービスは、対応するサービスと同じ扱い。減算率は告示、研修の回数は虐待防止が令和7年1月のQ&A(問1)、身体拘束が各サービスの解釈通知による。居宅療養管理指導は、虐待防止の措置そのものも2027年3月31日まで努力義務になっている(2024年度改定で経過措置を3年延長)。

経緯。身体拘束廃止未実施減算は2006年度に施設・居住系で1日5単位の減算として始まり、2018年度に所定単位数の10%になった。2024年度改定で、短期入所系・多機能系に委員会・指針・研修を義務づけて1%の減算を新設し(2025年3月31日までは経過措置)、訪問系・通所系・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅介護支援には、緊急やむを得ない場合を除く身体的拘束等の禁止と、行う場合の記録を義務づけた。高齢者虐待防止措置未実施減算は2024年度改定で新設された。なお、委員会の開催と研修の未実施にかかる減算の適用は、基本的に2025年4月1日からとされた(厚生労働省 令和6年12月27日の要請文)。

減算の期間と、運営指導で見つかったときの扱い

ミナ

運営指導で「去年の研修の記録がない」と言われたら、さかのぼって減算になるんですか?

ジムチョー

虐待防止の減算は、さかのぼらないことがQ&Aで示されているんだ。見つかった月が「事実が生じた月」になって、その翌月から減算だよ。ここは業務継続計画未策定減算と逆なんだ。

ミナ

指摘されたあとに急いで研修をすれば、すぐ元に戻せますか?

ジムチョー

すぐには戻らないんだ。改善計画を出して、3か月後に改善状況を報告する流れだから、最短でも3か月は減算が続くよ。指摘される前に自分たちで整えておくのが、いちばん安く済むんだ。

留意事項通知が定める流れは、2つの減算で同じ。

  1. 措置が講じられていない事実が生じたら、速やかに改善計画を指定権者に提出する
  2. 事実が生じた月から3か月後に、改善計画に基づく改善状況を報告する
  3. 事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月までの間、利用者全員について所定単位数から減算する

改善計画が出ていなくても、指定権者は翌月から減算できる。減算は、事実が生じた月から3か月以降に改善が認められた月まで続く(Q&A Vol.1 問169)。

遡らない。運営指導などで措置が講じられていないことが分かり、その事実が過去にさかのぼる場合でも、過去に遡及して減算することはできず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になる(虐待防止はQ&A Vol.1 問168、身体拘束は令和7年1月のQ&A 問2)。身体拘束のQ&Aは短期入所系・多機能系の見出しの下にあるが、施設・居住系も留意事項通知の文言は同じなので、扱いは指定権者に確かめておく。業務継続計画未策定減算は逆に「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡る(Q&A Vol.1 問166。BCPの作り方と未策定減算)。

2026年11月の運営指導で、虐待防止の研修の未実施が分かった場合の流れは次のとおり。

月起きること
2026年11月運営指導で研修の未実施が分かる(事実が生じた月)。改善計画と体制届(減算型)を出す
2026年12月減算が始まる。12月サービス分(2027年1月10日までの請求)から減算を入れる
2027年1月減算が続く。この間に研修を実施し、記録を整える
2027年2月事実が生じた月から3か月後。改善状況の報告と体制届(基準型)を出す。認められれば、減算は2月サービス分まで
2027年3月改善が認められていれば減算なし

届出は、体制等状況一覧表の「高齢者虐待防止措置実施の有無」または「身体拘束廃止取組の有無」を「減算型」にして出し、解消したら基準型に戻す(届出の留意点通知)。改善計画の様式や期限は指定権者が決めている。たとえば大阪府は、改善計画と改善報告を1枚の様式にし、事実が生じた月の3か月後の月(4月なら7月)の15日までに改善報告を出せば、改善が認められると翌月1日から減算がなくなるとしている。届出と請求の減算がずれると返戻になるので、届出の月と請求の月をそろえる(国保連の返戻・エラーコード一覧)。

月いくら減るか(計算例)

表紙に帳簿と書かれたノート

前提は、地域区分6級地(通所介護・特養とも1単位10.27円)。処遇改善加算は令和8年6月以降の加算Ⅰイ(通所介護11.1%、介護老人福祉施設16.3%)とした。減算は基本報酬にかけて出した(改定事項でも「基本報酬を減算する」とされている)。処遇改善加算は、基本サービス費に各種加算減算を加えた総単位数に加算率をかけるので(老発0313第6号)、減算の月は処遇改善加算も減る。

通所介護で虐待防止の減算になった場合

基本報酬(加算を除く)が月300,000単位(約308万円)の通所介護。

項目計算月額
虐待防止の減算300,000単位 × 1% = 3,000単位 × 10.27円30,810円
処遇改善加算の減少3,000単位 × 11.1% = 333単位 × 10.27円3,420円
合計34,230円

特養で身体拘束・虐待防止の減算になった場合

ユニット型の介護老人福祉施設で、入所者60人、1人1日平均850単位(ユニット型の要介護3が815単位、要介護4が886単位)、30日。基本報酬は 60人 × 850単位 × 30日 = 1,530,000単位(約1,571万円)。計算を簡単にするため、2つの減算はそれぞれ基本報酬にかけた。

減算減算する単位数減算額処遇改善加算の減少月の合計
身体拘束(10%)153,000単位1,571,310円24,939単位、256,124円1,827,434円
虐待防止(1%)15,300単位157,131円2,494単位、25,613円182,744円
両方168,300単位1,728,441円27,433単位、281,737円2,010,178円

減算が続いた月数ごとの額

事業所・減算3か月(最短)6か月12か月
通所介護・虐待防止102,690円205,380円410,760円
特養・虐待防止548,232円1,096,464円2,192,928円
特養・身体拘束5,482,302円10,964,604円21,929,208円

措置を回す費用と比べてみる。人件費を1時間1,500円と仮定する。特養で、身体拘束の委員会を年4回(虐待防止の委員会と一体的に開く)各1時間・委員8人で32時間、研修を虐待防止2回・身体拘束2回の計4回、各1時間・職員50人で200時間、指針の見直しと記録の整理に20時間とすると、年252時間で378,000円。身体拘束の減算は最短の3か月でも5,482,302円で、年間の運用費の14倍を超える。通所介護なら、委員会年2回・各1時間・4人で8時間、研修年1回・1時間・職員15人で15時間、記録の整理に7時間として年30時間・45,000円で、最短3か月の減算102,690円の半分以下。

ミナ

特養の身体拘束の減算は、1か月で180万円を超えるんですね。

ジムチョー

10%は基本報酬の1割だから、1か月だけでも収支への響き方が大きいんだ。最短の3か月でも548万円を超えて、委員会と研修を1年回す費用の14倍を超えるよ。

ミナ

自分の事業所で計算するときは、どこを置き換えればいいですか?

ジムチョー

基本報酬の月の単位数と、地域区分の単価、処遇改善加算の区分の3つだね。通所介護と訪問介護なら、加算算定シミュレーターの減算の欄で1%の額を出せるよ。

1単位の単価は地域区分とサービスで変わる(地域区分と1単位の単価)。同じ特養でも1級地(10.90円)なら、身体拘束の減算額は月1,667,700円になる。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

カレンダーとペンのスケジュール管理
ミナ

委員会と研修の予定は、誰がいつ決めるのがいいですか?

ジムチョー

年度初めに、担当者と管理者で1年分の日程を決めて、研修計画にしておくのがいいよ。事務長は、その日程どおりに開かれて、議事録と出席の記録が残っているかを3か月ごとに確かめよう。

時期作業担当帳票
年度初め虐待防止の担当者を決め、辞令か委員会の名簿に書く。委員会と研修の年間計画を作る(身体拘束の委員会は3か月に1回以上、研修の回数はサービスで確かめる)管理者辞令・委員会名簿、年間の研修計画
委員会の都度日時・出席者・検討した内容・決めたことを残す。結果を従業者に周知する担当者議事録、周知の記録(回覧・掲示など)
研修の都度実施内容、資料、出席者、欠席者へのフォローを残す担当者研修記録、出席簿、資料
職員の採用時新規採用者に虐待防止の研修(減算がかかるサービスでは身体拘束の研修も)管理者研修記録
年1回指針を見直し、改訂日を残す。利用者・家族が閲覧できる場所に置く担当者指針(改訂履歴)
身体的拘束等を行うとき3要件を組織で確認し、態様・時間・心身の状況・理由を記録する。解除できないかを検討し続ける管理者・看護職員・介護職員身体的拘束等の記録、経過の記録
3か月ごと委員会と研修が計画どおりかを点検する。担当者の退職・異動がないかも見る事務長加算・減算の管理台帳
措置が欠けたと分かったとき改善計画と体制届(減算型)を出し、翌月サービス分から請求に減算を入れる事務長改善計画、体制等状況一覧表
3か月後改善状況を報告し、体制届を基準型に戻す事務長改善報告、体制等状況一覧表

運営指導の確認文書は、上の表の帳票と対応している。虐待防止は「委員会の開催状況及び結果」「指針」「研修の計画及び実績」「担当者を置いていることがわかるもの」の4つ、身体拘束は「記録」「指針」「委員会の開催状況及び結果」「研修の開催状況及び結果」の4つ。確認文書の全体は運営指導で見られる帳票、通知が来てからの準備は運営指導の事前準備チェックリスト、台帳の作り方は加算の算定管理の仕組み化にまとめている。

よくあるつまずき

ミナ

虐待防止の委員会は、毎月の職員会議の議題に入れるだけでもいいですか?

ジムチョー

ほかの会議体と一体的に運営するのは認められているんだ。ただ、議事録の中で「虐待防止の委員会として何を検討したか」が分かるように、見出しと出席者を分けて残しておこう。

ミナ

職員が数人しかいない小さな事業所でも、委員会や研修は要りますか?

ジムチョー

規模にかかわらず要るんだ。Q&Aでは、法人内の複数事業所での合同開催や、自治体の研修への参加が例に挙がっているよ。合同にするときは、自分の事業所の誰が出たかを記録に残しておこう。

  • 研修の回数を数え違える。特定施設とグループホームは、虐待防止の研修も年2回以上(令和7年1月のQ&A 問1)。短期入所や小規模多機能は、虐待防止は年1回以上でも、身体拘束は年2回以上
  • 新規採用者の研修がない。解釈通知は、採用時に必ず研修をするよう求めている。中途採用が多い事業所は、入職時のオリエンテーションに組み込むと抜けにくい
  • 委員会を開いたが、周知の記録がない。結果を従業者に周知するところまでが措置。回覧の押印や掲示の記録を残す
  • 担当者が退職したまま空席になっている。担当者を置いていないことも減算の事実になる。後任を決めて辞令を出す。2024年度からは兼務も認められている
  • 身体拘束をしていないので、委員会も研修も要らないと思っている。拘束がなくても、委員会・指針・研修が欠ければ減算(令和7年1月のQ&A 問1)
  • 家族の同意書だけで身体拘束をしている。3つの要件すべてを満たしたことの記録がなければ減算になる(同 問3)。訪問系・通所系は減算はないが、記録が確認できなければ指導の対象
  • 小規模事業所で合同開催の記録がない。合同で開いた委員会や研修は、参加した各事業所の従事者と実施内容が記録で確認できるようにしておく(Q&A Vol.1 問170)
  • テレビ電話で委員会を開くとき、個人情報の扱いを決めていない。テレビ電話装置等での開催は認められているが、個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスなどを守ることが条件
  • 業務継続計画未策定減算と同じだと思っている。BCPは研修・訓練の未実施が減算の要件ではなく、未策定が分かると遡る。虐待防止は研修の未実施も減算の要件で、遡らない

経理・管理側の視点

ミナ

経営会議では、この2つの減算をどう説明すればいいですか?

ジムチョー

「何か起きてから払う罰金」ではなく、「仕組みの記録がないと毎月の売上が削られるもの」と説明するといいよ。特養なら、身体拘束の10%がいちばん大きなリスクなんだ。

厚生労働省の集計では、2025年10月サービス分で減算を請求した事業所の割合は、虐待防止が平均0.33%、身体拘束が平均0.05%だった(第263回介護給付費分科会 資料3)。ほとんどの事業所は「基準型」で請求している。リスクは、措置を回しているつもりでも、議事録や研修の記録が欠けていて、運営指導で「講じられていない」と判断されることにある。遡りがない代わりに、分かった月の翌月から最短3か月の減算が確実に来るので、記録の整備がそのまま売上の防衛になる。

費用の面では、委員会と研修に参加する時間の人件費を年間の予算に入れておく。特養の例で年378,000円、通所介護の例で年45,000円。法人に複数の事業所があるなら、委員会と研修を法人で合同開催すれば、日程の調整と資料づくりを一本化できる(Q&A Vol.1 問170)。指針・委員会・研修の参考例は、Q&Aも紹介している認知症介護研究・研修仙台センターの「施設・事業所における高齢者虐待防止のための体制整備」が使える。研修にストレスマネジメントを入れるなら、利用者や家族からのハラスメントへの対策(介護のカスハラ対策)と合わせて設計すると、職員の負担を減らす取り組みとして一体で説明しやすい。

2024年度改定では、介護サービス情報公表システムに登録する事項に、虐待防止と身体的拘束等の適正化の取組状況を加えることとされた。取り組んでいるかどうかは、利用者や家族、求職者からも見える情報になっていく。

次の改定にも目を配っておきたい。2026年8月28日の第263回介護給付費分科会では、令和9年度改定に向けて、経過措置が設けられているサービスや措置の義務の対象外となっているサービスの扱いと、身体拘束の減算率がサービスで10%と1%に分かれている点が、現状と課題として示された。福祉用具貸与の経過措置は2027年3月31日までなので、2027年4月からの扱いは改定の告示で確かめる(2027年度改定の論点まとめ)。

ミナ

まずは、事業所ごとに委員会と研修の回数、担当者の名前を一覧にしてみます。

ジムチョー

それがいちばんの近道だね。身体拘束の委員会は3か月ごとだから、次の開催日まで台帳に入れておこう。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。