加算・算定実務

加算の返戻と過誤調整の手順|返戻・保留・過誤の違いと、資金繰りへの影響

結論(この記事でわかること)

ミナ

加算の区分を間違えて請求していたことが分かりました。もう入金されています。どう直せばいいですか?

ジムチョー

入金後の訂正は過誤という手続きになるんだ。保険者に取下げを申し立てて、国保連が取り消してから再請求する。同月過誤か通常過誤かで翌月の入金が大きく変わるから、申立の前に保険者に確認しよう。

請求の誤りは、入金前なら返戻、入金後なら過誤で処理する。返戻は国保連が差し戻すので翌月に再請求すればよい。過誤は事業所が保険者(市町村)に「取下げ」を申し立て、国保連が一度取り消してから再請求する。

過誤には2種類ある。

種類仕組み資金への影響
同月過誤取下げと再請求を同じ月に審査し、差額だけを調整差額分のみ。入金の遅れはほぼない
通常過誤取下げだけを先に処理し、翌月以降に再請求取下げた分が丸ごと翌月の入金から引かれ、再請求分は翌々月に入る

通所介護で月400万円の請求のうち、加算の算定ミスで1ヶ月分を取り下げると、通常過誤では翌月の入金が400万円減り、正しい額が入るのはさらに1ヶ月後になる。同月過誤なら差額の数万円だけ。どちらになるかは保険者の運用で決まるので、申立前に確認する。

返戻・保留・過誤の違い

ミナ

返戻と過誤は何が違うんですか?

ジムチョー

起こす側とタイミングが違うんだ。返戻は国保連が入金前に差し戻すもので、翌月に再請求すれば済む。過誤は入金後に事業所が自分で取り下げるものだよ。

区分誰が起こすか段階事業所の対応
返戻国保連(審査でエラー)入金前原因を直して翌月に再請求
保留国保連(保険者の確認待ち)入金前保険者の確認が済めば支払われる。受給者台帳の未登録が典型
過誤事業所(誤りに気づいて自ら取下げ)入金後保険者に過誤申立、取消後に再請求

返戻は「エラーコード」で理由が分かる。加算に関する返戻の多くは、体制届と請求データの不一致(届出をしていない加算を請求、届出の区分と違う区分で請求)か、算定要件の月内回数超過(口腔機能向上加算を月3回請求など)が原因になる。

過誤申立の流れ

順番作業担当期限・帳票
1誤りの内容を特定し、正しい単位数を確定請求担当請求明細の控え、サービス提供記録
2同月過誤と通常過誤のどちらで処理するか保険者に確認事務長電話または保険者のページ
3過誤申立書を保険者に提出事務長保険者の様式。締切は多くが毎月10日前後
4保険者が国保連に過誤データを送信保険者毎月15〜16日頃
5国保連が取消処理をして、過誤決定通知書を送付国保連申立の翌月
6正しい内容で再請求請求担当同月過誤なら申立と同じ月、通常過誤なら取消後
7入金と返金の突合経理支払決定額通知書

過誤申立書の様式名、締切日、同月過誤ができるかどうかは保険者(市町村)ごとに違う。利用者の保険者が複数ある事業所は、保険者ごとに様式・締切・同月過誤の可否を一覧にしておく。過誤申立のあとの再請求は、保険者が過誤を承認した日から6ヶ月以内に支払われるように出す。

資金繰りへの影響(計算例)

通所介護、月400万円(10割)の事業所で、サービス提供体制強化加算の区分を誤って3ヶ月分(Ⅱで請求すべきところをⅠで請求。差額は月26,400円)過誤申立する場合。

処理翌月の入金の変化正しい額の入金
同月過誤3ヶ月分の差額79,200円が引かれるだけ同じ月に調整済み
通常過誤取り下げた3ヶ月分の全額(約1,080万円の保険給付分)が翌月の入金から引かれる再請求分は翌々月に入金

通常過誤では、翌月の入金が1ヶ月分の売上を超えてマイナスになり、その月の人件費を手元資金で払うことになる。過誤申立は「いつ・いくら引かれるか」を先に資金繰り表に入れてから出す国保連入金カレンダー・資金繰りシミュレーターで入金月を確認できる。

サービス提供体制強化加算ⅠとⅡの差額(1日4単位 × 延べ利用者数)は例。過誤で取り下げる単位は明細書単位(利用者・月ごと)なので、加算1つの訂正でもその利用者のその月の明細書全体を取り下げて出し直すことになる。

ミナ

通常過誤だと、翌月の入金が3ヶ月分まるごと引かれるんですか。差額は8万円なのに。

ジムチョー

取下げは明細書単位だから、加算だけ直す場合でも利用者・月ごとの明細を丸ごと取り下げることになるんだ。だから申立の前に「いつ・いくら引かれるか」を資金繰り表に入れておこう。

返戻の処理手順

ジムチョー
順番作業担当帳票
1国保連の審査結果(返戻一覧)を確認。エラーコードを読む請求担当返戻通知(伝送で受信)
2原因を分類(体制届の不一致、受給者情報の誤り、回数超過、他事業所との重複)請求担当返戻管理表
3体制届の不一致なら届出の状況を確認し、必要なら変更届事務長体制等状況一覧表
4受給者情報の誤りなら利用者の被保険者証と居宅介護支援事業所に確認請求担当被保険者証の写し、給付管理票
5翌月10日までに再請求(月遅れ請求として)請求担当請求明細
6返戻額を資金繰り表の入金予定から減らし、翌々月に移す経理資金繰り表

返戻の再請求には期限がある。サービス提供月から2年を過ぎると請求権が時効になる。年度をまたいだ返戻は翌年度の実績に混ざるので、処遇改善加算の実績報告では元のサービス提供月に戻して集計する。

時効の起算日は「サービス提供月の翌々々月の1日」で、そこから2年(東京都国保連の案内)。4月分なら7月1日から数えて2年後の6月末までに請求しないと請求できなくなる。査定で一部支払いがあった明細書は、支払日に時効が中断する。

よくあるつまずき

ミナ
ミナ

返戻の再請求は、来月の請求と一緒に出せばいいんですよね?

ジムチョー

翌月10日までに、月遅れ請求として出そう。放置すると入金が1ヶ月ずつ遅れるし、2年で時効になってしまう。返戻管理表に「再請求月」を書いておくといいよ。

  • 返戻を翌月に再請求せず放置する。再請求のたびに入金が1ヶ月遅れる。返戻管理表で「再請求月」を管理し、翌月に必ず出す
  • 過誤申立の締切を過ぎる。保険者の締切(10日前後)を過ぎると翌月の処理になり、通常過誤なら入金の減少が1ヶ月後ろにずれる。資金繰りが読めなくなる
  • 同月過誤ができる保険者なのに通常過誤で出す。取り下げた分が丸ごと翌月の入金から引かれる。申立前に保険者に同月過誤の可否を確認する
  • 加算の過誤で明細書全体を取り下げる。過誤は明細書単位なので、加算だけを直す場合も利用者・月ごとの明細書を丸ごと取り下げて再請求する。取り下げる件数と金額を把握してから申し立てる
  • 返戻の原因を請求担当だけで処理する。体制届の不一致は事務長、受給者情報はケアマネジャーとの確認が要る。返戻管理表に担当を書く
  • 年度末の返戻を処遇改善加算の実績に反映しない。3月分の返戻を5月に再請求すると、加算総額の集計から漏れる。実績報告では元の月に戻す

経理・管理側の視点

返戻と過誤は、金額そのものより入金のタイミングを狂わせることで経営に効く。返戻率2%の事業所は、毎月の入金が2%少なく、翌月に2%多い状態が続く。この振れは資金繰り表に織り込んでおけば問題にならないが、通常過誤のような一時的な大きな減額は、賞与月と重なると資金ショートになる。

返戻管理表と過誤申立の一覧を経理が持ち、「翌月の入金がいくら減るか」を月次で確認する。返戻の原因別の件数を追うと、体制届の管理か受給者情報の確認かどちらを直せばよいかが見える。

ミナ

返戻管理表と過誤申立の一覧を経理でも持って、翌月の入金がいくら減るかを見るんですね。

ジムチョー

金額そのものより、入金のタイミングが狂うことが効くんだ。通常過誤が賞与月と重なると資金ショートになりかねないからね。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。