バックオフィス実務

介護の有給休暇 年5日取得義務とは?時季指定の方法・パートの付与日数・管理簿の保存期間

有給休暇申請書とペン

結論(この記事でわかること)

ミナ

有給を年5日取らせないと罰金と聞きました。うちはシフトがぎりぎりで、休みを入れる余地がないんですが。

ジムチョー

だからこそ「取らせる」のではなくて、シフトを組む前に有給を先に置く運用に変えるんだ。付与日を揃えて4月に年間の計画を作り、毎月のシフトに取得予定を先に入れる。管理簿で、5日に届いていない人を毎月確かめていこう。

ミナ

休みが取れそうなときに入れるのではなく、シフトを組む前に有給を先に置いておく、ということですね。

ジムチョー

そういうことだね。人員基準ぎりぎりのシフトだと、後から入れる余地はまず残らないんだ。先に置いたうえで、足りない分を時季指定で補おう。

年10日以上の有給休暇が付与される職員には、付与日(基準日)から1年以内に5日を取得させる義務がある(労働基準法第39条第7項、2019年4月から)。パートや有期雇用の職員、管理監督者も対象になる。職員が自分で取った分は5日に数えてよく、足りない分は事業所が時季を指定して取らせる。違反は対象の職員1人につき1罪として、30万円以下の罰金(第120条)。ただし、労働基準監督署の指導は、原則としてまず是正に向けた指導とされている。

介護現場でこの義務が守られにくい理由は、人員基準ぎりぎりのシフトで休みを入れる余地がないことにある。対処は「取らせる」運用ではなく、シフト作成時に有給を先に置く運用に変えること。具体的には次の3つ。

  1. 付与日を全員同じ日に揃え(斉一的付与)、年間の取得計画を4月に作る
  2. 月のシフトを組む前に、その月に取得予定の有給を勤務表に入れる
  3. 年次有給休暇管理簿を月次で更新し、5日に届いていない職員に、基準日から6か月を目安に時季指定する

有給を取った日が常勤換算や人員基準の勤務時間にどう入るかは、常勤か非常勤かで違う。常勤の従業者の休暇は、期間が暦月で1か月を超えない限り、常勤として勤務したものとして扱う。非常勤の従業者の休暇の時間は、勤務延時間数に含めない(厚生労働省の介護サービス関係Q&A集、平成14年3月28日の運営基準等に係るQ&A)。数え方の全体は常勤換算の数え方と管理にまとめている。自社の配置への影響は常勤換算・人員基準チェッカーで確認する。

付与日数

スマートフォンとカレンダー
ミナ

パートの職員も、年5日の義務の対象になりますか?

ジムチョー

付与日数が10日以上になれば対象になるんだ。週の所定労働日数が少ない人は比例付与だから、勤続年数で10日に届いたところから数え始めよう。

ミナ

うちのパートさんは週4日勤務ですが、比例付与の表でいいんでしょうか?

ジムチョー

週4日でも、1週間の所定労働時間が30時間以上なら比例付与にはならないんだ。たとえば1日8時間の週4日勤務なら32時間だから、フルタイムと同じ表を使うんだよ。

週5日以上、または週30時間以上の職員

勤続6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
付与日数10111214161820

週4日以下かつ週30時間未満の職員(比例付与)

週の所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
4日78910121315
3日566891011
2日3445667
1日1222333

年5日の義務は「付与日数が10日以上」の職員が対象。週4日(1週間の所定労働時間が30時間未満)のパートは勤続3年6か月で10日になり、そこから対象になる。週3日は勤続5年6か月で10日。前年度から繰り越した日数を足して10日以上になっても、その年に新たに付与される日数が10日未満なら対象にならない。

比例付与の対象は、1週間の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下(週以外の期間で定めている場合は年216日以下)の職員に限られる。週4日勤務でも週30時間以上なら、上の週5日以上の表を使う。

付与の前提は、雇入れの日から6か月継続して勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤していること(第39条第1項)。2年目以降も、直前の1年間の出勤率が8割以上であることが要る(第2項ただし書)。業務上の負傷・疾病による休業、産前産後の休業、育児休業・介護休業をした期間は出勤したものとみなし、年次有給休暇を取った日も出勤として扱う。有期契約でも、更新されて6か月以上勤務していれば「継続勤務」に当たる。

取得の方法

マグカップと本のある部屋
ミナ

時間単位で少しずつ取ってもらえば、5日に届きませんか?

ジムチョー

時間単位は5日の義務には数えられないんだ。半日単位なら0.5日として数えられる。時間単位を多用すると、別に5日分が必要になってしまうよ。

ミナ

計画的付与で割り当てた日も、5日に数えていいんですか?

ジムチョー

数えていいよ。ただ労使協定が必要で、割り当てられるのは付与日数のうち5日を超える部分なんだ。4月の年間計画と合わせて使うと、シフトに組み込みやすいよ。

方法内容5日への算入
職員の請求職員が時季を指定して取得算入できる
計画的付与労使協定で、付与日数のうち5日を超える部分を計画的に割り当てる算入できる
事業所の時季指定職員の意見を聴いたうえで事業所が時季を指定算入できる。5日に満たない分だけ指定できる
半日単位職員の希望で半日単位の取得0.5日として算入できる
時間単位労使協定で年5日以内算入できない

時間単位の有給(第39条第4項)は5日の義務に数えられない。介護現場で時間単位を多用すると、義務の履行に別途5日分が必要になる。

事業所が時季を指定するときは、あらかじめ、時季を指定して取得させることを職員に明らかにしたうえで、取りたい時季の意見を聴き、その意見を尊重するよう努める(労働基準法施行規則第24条の6)。意見の聴き方は、面談、取得計画表、メール、勤怠システムなど任意でよい。指定するだけでは足りず、基準日から1年以内に実際に5日取得していなければ違反になる。職員が指定日に出勤し、事業所がその労働を受け取った場合も、取得したことにならない。

事業所が時季指定をする場合は、対象の職員の範囲と指定の方法を就業規則に書いておく必要がある(第89条。書いていないと第120条の罰金の対象になる)。計画的付与(第39条第6項)を使う場合も、就業規則への規定と、労働者の過半数を代表する者などとの書面の労使協定が要る。この労使協定は労働基準監督署への届出が要らない。

計算例:職員30人の通所介護

項目値
対象職員(30人のうち付与10日以上と仮定)25人
年5日の義務の合計125日
前年度の実績(対象者全員が3日取得したと仮定)75日
不足50日

不足50日を時季指定で取らせるとき、本人の賃金は増えない(有給の日も、働いた日と同じ所定労働時間分の賃金を払うだけ。第39条第9項)が、その日の穴を埋める人員のコストが発生する。非常勤で埋めるとして、時給1,400円・1日8時間と仮定すると1日11,200円で、50日分をすべて埋めた場合は56万円になる(上限の目安)。穴を埋めずに、利用者数に応じた配置や常勤換算の基準を割ると、人員基準欠如の減算の対象になる(人員基準欠如減算の記事)ので、必要な分は経費として予算に入れる。

年間の取得率を上げるほうが、時季指定で年度末に集中させるより穴埋めのコストが平準化する。

有給を取った日の常勤換算への入り方は、常勤か非常勤かで違う。常勤の従業者は、休暇の期間が暦月で1か月を超えない限り、常勤として勤務したものとして扱うので、有給を取っても常勤換算は下がらない。非常勤の従業者は、休暇の時間を勤務延時間数に含めないため、有給を取った日の時間は勤務表の勤務時間から外して計算する。非常勤の割合が高い事業所では、非常勤の有給が続く月に常勤換算の余裕が減っていないかを、月次の計算表で確かめておく(厚生労働省の介護サービス関係Q&A集、平成14年3月28日の運営基準等に係るQ&A)。

ミナ

不足50日分の穴埋めで56万円。取らせても賃金は増えないのに、意外とかかるんですね。

ジムチョー

有給の日も働いた日と同じ賃金を払うだけだから、本人の分は増えないけれど、その日の穴を埋める人員のコストは出るんだ。埋めずに配置の基準を割ると減算になるから、必要な分は経費として予算に入れておこう。年間で平準化して取ってもらうほうが安く済むよ。

ミナ

この例だと前年度は平均3日です。まずは職員が自分で取る日数を増やすところからですね。

ジムチョー

そうだね。職員が自分で取った分も5日に数えられるから、取得率が上がるほど時季指定で埋める日数は減っていくんだ。

年次有給休暇管理簿

クリップボードのチェック表とペン
ミナ

管理簿は、運営指導で見られることもあるんですか?

ジムチョー

国の運営指導マニュアルにある確認文書の例を訪問介護や通所介護で見ると、年次有給休暇管理簿は入っていないんだ。労働基準法に基づく帳簿だから、確かめるのは主に労働基準監督署になるよ。ただ、勤務表やタイムカードは運営指導でも確認されて、有給の日はそこにも載るから、管理簿と日付が合っているかを見ておくといいね。事前に届く提出書類の一覧も、指定権者ごとに確かめておこう。

作成と保存が義務で、保存期間は原則5年だが、当分の間は3年間とされている(労働基準法施行規則第24条の7、附則第71条)。法令で求められるのは、時季、日数、基準日を職員ごとに明らかにすること。次の表の項目を職員ごとに持ち、残日数と時季指定の記録は運用で足す項目にあたる。

項目内容
基準日付与日
付与日数基準日に付与した日数
取得日取得した日付(時季指定・計画的付与の別)
取得日数基準日からの累計
残日数繰越を含む
時季指定の記録事業所が指定した場合の意見聴取の記録

必要なときにいつでも出力できる仕組みなら、勤怠システム上の管理でも差し支えない。労働者名簿や賃金台帳とあわせて調製してもよい。出力できない場合は表計算で作り、月次で更新する。年次有給休暇の請求権の時効は2年(労働基準法第115条)で、前年度に取得されなかった分は翌年度に繰り越されるので、残日数は繰越分を分けて持つ。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ミナ

4月は、付与日数の確定と取得計画の聞き取りが重なりますね。

ジムチョー

付与日数の確定と管理簿の更新は労務、希望の時期の聞き取りは管理者と、担当を分けておくといいよ。どちらも基準日の4月に合わせて動くんだ。

時期は、基準日を4月に統一した場合の例で、自社のシフトの締めに合わせて変える。基準日を統一するときは、法定の付与日より前倒しの日に揃える(法定の付与日より遅い日に揃えると、法定の日に与えなかったことになる)。統一によって5日の義務の期間が重なるときは、重なりを含む全体の期間の月数を12で割って5を掛けた日数(18か月なら7.5日)を、その期間内に取得させればよい(施行規則第24条の5第2項)。

時期作業担当帳票
4月(基準日)全職員の付与日数を確定し、管理簿を更新労務年次有給休暇管理簿
4月職員ごとの年間取得計画(希望の時期)を聴取管理者取得計画表
毎月20日翌月のシフト作成前に、取得予定の有給を勤務表に入れる管理者勤務表
毎月末管理簿を更新し、残り日数と5日までの不足を確認労務管理簿
基準日から6か月取得が5日に届いていない職員に意見を聴き、残りの期間で時季を指定管理者時季指定通知、意見聴取の記録
基準日から12か月5日の達成を確認労務管理簿
退職時残日数を確認し、退職日までの消化日数を本人と相談(退職日をもって年休の権利は消滅する)労務管理簿、退職手続書類

よくあるつまずき

ミナ

「休みたくない」と言う職員には、無理に指定しなくてもいいですよね?

ジムチョー

義務は事業所側にあるんだ。意見は聴くけれど、指定はする。年度末にまとめて指定すると人員基準を割りやすいから、基準日から6か月を目安に、残りの期間へ分散して指定しよう。

ミナ

パートの人の契約は週3日なのに、実際は週4日入っている場合は?

ジムチョー

付与日数の基になるのは、基準日に予定されている週の所定労働日数、つまり契約で決めた日数なんだ。ただ、実際に働く日数と契約の日数が離れたままなのは避けたほうがいいね。厚労省の留意事項でも、両者が離れないようにすることが望ましいとされているから。本人と話し合って契約を見直してから、比例付与の表と照らし合わせておこう。

  • 年度末に5日をまとめて指定する。3月に集中すると人員基準を割りやすい。基準日から6か月を目安に、不足分を残りの期間へ分散して指定する
  • 時間単位の有給を5日に数える。数えられない。半日は0.5日で数えられる
  • パートの付与日数を誤る。比例付与の対象は週30時間未満かつ週4日以下の職員だけで、週4日でも週30時間以上なら通常の表を使う。所定労働日数を予定できない登録型のヘルパーなどは、雇入れ6か月後の付与では過去6か月の労働日数の実績の2倍、1年6か月後以降は前年の労働日数の実績を、1年間の所定労働日数とみなして付与日数を出してよい(厚労省の留意事項、訪問介護労働者の通達)
  • 管理簿がない。勤怠システムで出せるか確認し、出せなければ表で作る
  • 有給の賃金を時給×実働で払う。有給の賃金は、就業規則等で定めた方法(所定労働時間労働した場合の通常の賃金、平均賃金、または労使協定を結んだ場合の標準報酬日額)で払う。時給制なら時給×その日の所定労働時間で、訪問が入らなかった日の有給を少なく払うと未払いになる(第39条第9項、施行規則第25条)
  • 職員が「休みたくない」と言うので指定しない。義務は事業所側にある。意見は聴くが指定はする。指定しても本人が出勤して事業所がその労働を受け取れば、取得したことにならず違反になる

経理・管理側の視点

ミナ

経理として、有給について持っておく数字は何ですか?

ジムチョー

職員別の残日数と、年5日の不足日数の合計だよ。不足日数に穴埋めの日額をかければ、年度内に必要な予算が出せるんだ。

有給休暇は、取得しても本人の賃金は増えない(働いた日と同じ所定労働時間分の賃金を払うだけ)が、穴埋めのコストと人員基準のリスクが出る。経理が持つべき数字は、職員別の残日数と、年5日の不足日数の合計。不足日数の合計に穴埋めの日額をかけた額が、年度内に必要な予算の上限の目安になる。

取得率が低い事業所は、退職時に残日数をまとめて消化され、最終月の人員が突然減る。退職の申し出があった時点で残日数を確認し、引継ぎ期間と消化日数を本人と相談する運用にする。

ミナ

退職する人が残りの有給をまとめて消化すると、最終月の人員が急に減るんですね。

ジムチョー

退職の申し出があった時点で残日数を確認して、引継ぎ期間と消化日数を本人と相談する運用にしておこう。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。