加算・算定実務

個別機能訓練加算とは?(Ⅰ)イ・ロ・(Ⅱ)の算定要件と単位数、返還を防ぐ記録の4点

結論(この記事でわかること)

ミナ

個別機能訓練加算は運営指導で返還が多いと聞きました。何を見られるんですか?

ジムチョー

記録の4点なんだ。居宅訪問、計画書、実施記録、3ヶ月ごとの評価。どれか1つ欠けた利用者の分は、算定していても返還になってしまうよ。

ミナ

加算が大きい分、記録が1つ欠けたときに戻す額も大きくなるということですね。

ジムチョー

そういうことだね。返還の原因は、ほとんどが記録の不備なんだ。4点がそろっているかを、利用者ごとに一覧で確かめられるようにしておこう。

通所介護の個別機能訓練加算は、(Ⅰ)イが1日56単位、(Ⅰ)ロが1日76単位(2024年度改定で85単位から変更)、(Ⅱ)が1月20単位。延べ利用者480人日で算定すれば(Ⅰ)イで月268,800円、年間322万円(その他地域)と、通所介護の加算では最も大きい部類になる。

その分、運営指導での返還も多い。返還の原因はほぼ記録の不備で、次の4点に集約される。

  1. 居宅訪問の記録。計画作成前と3ヶ月に1回以上、利用者の居宅を訪問して生活状況を確認した記録
  2. 個別機能訓練計画書。多職種で作成し、生活課題に基づく目標、訓練項目、頻度、実施者を書いて利用者に説明・同意
  3. 実施記録。訓練を行った日、内容、時間、実施者、利用者の状態
  4. 3ヶ月ごとの評価。目標の達成状況を評価し、利用者・家族に説明して記録、必要なら計画を見直す

この4点が揃っていない利用者の分は、算定していても返還になる。1人分の返還は月56単位×利用日数で小さいが、全利用者に及ぶと年間数百万円になる。

区分と要件

ミナ

(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは、両方取れるんですか?

ジムチョー

イとロは併せては取れないんだ。(Ⅱ)は(Ⅰ)に上乗せする形だから、LIFEに提出してフィードバックを活用すれば一緒に取れるよ。

ミナ

訓練は、何人くらいまで一緒に行っていいんですか?

ジムチョー

5人程度以下の小集団か、個別で、機能訓練指導員が直接行うことになっているんだ。それより大きな集団体操を個別機能訓練として算定すると否認されるから、気をつけよう。

区分単位機能訓練指導員の配置訓練の形態
(Ⅰ)イ56単位/日専従の機能訓練指導員を1人以上配置(配置時間の定めなし)5人程度以下の小集団または個別。機能訓練指導員が直接行う(介護職員等は補助まで)
(Ⅰ)ロ76単位/日(Ⅰ)イの配置に加え、専従の機能訓練指導員が合計2人以上いる時間帯に限って算定できる同上
(Ⅱ)20単位/月(Ⅰ)イまたはロを算定し、計画の内容等をLIFEに提出しフィードバックを活用—

(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは併算定できない。(Ⅱ)は(Ⅰ)に上乗せする。人員欠如減算・定員超過減算に当たる月は、個別機能訓練加算を算定しない。

2024年度改定で、(Ⅰ)ロの「サービス提供時間帯を通じて機能訓練指導員を1人以上配置する」要件がなくなり、代わりに単位数が85単位から76単位になった。いまは、機能訓練指導員が合計2人以上いる時間帯に訓練した利用者の分を(Ⅰ)ロで算定できる。

機能訓練指導員になれるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、一定の実務経験のあるはり師・きゅう師。

はり師・きゅう師は、理学療法士などの機能訓練指導員を置いた事業所で、6か月以上機能訓練の指導に従事した経験がある場合に限られる。

記録要件の詳細

ミナ

居宅訪問は、送迎のときに玄関先で様子を聞くのでは足りませんか?

ジムチョー

足りない扱いが一般的なんだ。家の中の動作や構造を見て記録するのが要件で、電話や玄関先では居宅訪問にならないんだよ。

ミナ

介護職員が訓練を行った日も、算定できますか?

ジムチョー

それはできないんだ。訓練は機能訓練指導員が直接行うことが要件で、介護職員は補助までなんだよ。実施記録に、指導員が行ったことと内容・時間・利用者の状態を毎回残そう。

居宅訪問

時期内容記録に残すこと
計画作成前機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問し、生活状況(家の構造、日常の動作、本人・家族の希望)を確認訪問日、訪問者、確認した内容、写真や間取り図
3ヶ月に1回以上居宅を再訪問し、生活状況の変化と計画の進捗を本人・家族に説明訪問日、説明内容、本人・家族の反応、計画見直しの要否

居宅訪問は加算の要件そのもので、訪問していない利用者の分は算定できない。「電話で確認した」「送迎時に玄関で話した」は居宅訪問として認められない扱いが一般的。

個別機能訓練計画書

項目書くこと
利用者の状況居宅訪問で把握した生活課題、ADL・IADLの状況
目標生活機能に関する目標(「トイレまで自分で歩く」「台所に立って調理する」など生活行為で書く)
訓練項目目標に対応する訓練の内容
頻度・時間週何回、1回何分
実施者機能訓練指導員(直接行う。介護職員等は補助)
作成者多職種(機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員等)で共同作成
説明・同意利用者・家族への説明日と同意の署名

「筋力維持」「関節可動域の維持」だけを目標にした計画書は、生活機能に関する目標として弱いと指摘される。

実施記録

訓練を行った日ごとに、内容、時間、実施者、利用者の状態を記録する。訓練は機能訓練指導員が直接行うので、介護職員等が補助した場合も、指導員が行ったことが分かるように実施者を書く。実施記録がない日は算定できない。

3ヶ月ごとの評価

目標の達成度を評価し、利用者・家族に説明して記録する。評価日、評価者、達成状況、計画の見直しの要否を残す。居宅訪問と同時に行うのが効率的。

計画書の様式例は、厚生労働省の通知「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」(令和6年3月15日)の別紙様式3-3にある。記録の保存期間は、国の運営基準では完結の日から2年だが、条例で5年としている自治体もあるので、指定権者の条例で確かめる。

月あたりいくらか(計算例)

通所介護、延べ利用者600人日、うち個別機能訓練の対象480人日、実利用者50人、地域区分「その他」。

区分計算月額年額
(Ⅰ)イ56単位 × 480人日 × 10.00円268,800円3,225,600円
(Ⅰ)ロ76単位 × 480人日 × 10.00円364,800円4,377,600円
(Ⅱ)20単位 × 50人 × 10.00円10,000円120,000円
(Ⅰ)イから(Ⅰ)ロへの増分96,000円1,152,000円

上の表の(Ⅰ)ロは、480人日すべての訓練を、機能訓練指導員が2人いる時間帯に行った場合。2人目も専従で置く必要があり、非常勤の理学療法士を1日7時間・月22日(154時間)置くと、時給2,500円で月385,000円、法定福利費込みで約44万円になる。加算の増分96,000円では賄えない。(Ⅰ)ロは加算で回収するものではなく、定員が大きく訓練の質を売りにする事業所の選択になる。

記録不備で返還になった場合の額は、(Ⅰ)イで利用者1人が週2回利用なら月448単位(4,480円)。運営指導で指摘されるとさかのぼって返還を求められ、仮に2年分・利用者30人が該当すれば 4,480 × 24か月 × 30人 = 約320万円になる。

計算は例。2人目を一部の時間帯だけ置く場合は、その時間帯に訓練した利用者の分だけ(Ⅰ)ロになり、それ以外は(Ⅰ)イで算定する。

ミナ

記録の不備で返還になると、2年分で320万円にもなるんですね。

ジムチョー

1人分は小さいけれど、全利用者に及ぶからね。逆に(Ⅰ)ロは2人目の指導員の人件費が加算の増分を上回るから、加算で回収する発想では選ばないほうがいいよ。

ミナ

では、(Ⅰ)ロを選ぶのはどんな事業所なんでしょう。

ジムチョー

定員が大きくて、訓練の質を売りにしている事業所だね。加算の増分だけでは2人目の人件費を賄えないから、事業の方針として選ぶものなんだ。

実務の手順(誰が・いつまでに・どの帳票で)

ミナ

利用開始前の居宅訪問には、相談員も同行するんですね。

ジムチョー

機能訓練指導員に相談員が同行する形だね。3ヶ月ごとの訪問は評価と同じ日にまとめると、訪問と評価の記録を一度に作れるよ。

ミナ

指導員が異動するときは、何を確かめればいいですか?

ジムチョー

専従の配置を維持できるかを、事務長が確かめるんだ。維持できないなら変更届が要るから、異動の話が出た段階で早めに見ておこう。

時期作業担当帳票
利用開始前居宅訪問と生活状況の確認機能訓練指導員(相談員同行)居宅訪問記録
利用開始時多職種で計画書を作成、利用者・家族に説明し同意機能訓練指導員個別機能訓練計画書
毎回訓練の実施と記録機能訓練指導員(介護職員等は補助)実施記録
3ヶ月ごと居宅訪問、評価、説明、計画の見直し機能訓練指導員居宅訪問記録、評価記録、計画書(改訂)
3ヶ月ごと(Ⅱ)LIFEへの提出(評価月の翌月10日まで)提出担当LIFE提出の控え
毎月末利用者別に「居宅訪問日・評価日・次回期限」を一覧で確認管理者利用者別期限一覧
指導員の異動時専従の配置が維持できるか確認。できなければ変更届事務長変更届

よくあるつまずき

ミナ

3ヶ月ごとの評価は、利用者ごとに期限が違って管理が大変です。

ジムチョー

利用者別に「居宅訪問日・評価日・次回期限」の一覧を、毎月末に見るといいよ。過ぎた月から算定できないから、期限の一覧がそのまま加算の管理表になるんだ。

ミナ

計画書の目標を「筋力向上」だけにしている場合は?

ジムチョー

それだけだと、生活機能の目標としては足りないと見られるんだ。「トイレまで自分で歩く」のように、生活行為の言葉で書き直しておこう。

  • 居宅訪問をしていない、記録がない。返還の原因として最も多い。送迎時の玄関先の会話は訪問にならない
  • 3ヶ月の期限を過ぎる。利用者ごとに期限が違うので一覧で管理する。過ぎた月から算定不可
  • 計画書の目標が生活行為になっていない。「筋力向上」だけでは生活機能の目標として不十分
  • 実施記録に時間と実施者がない。訓練を行った事実の証明にならない
  • 5人程度を超える集団で実施する、介護職員だけで実施する。集団体操や、指導員が直接行っていない訓練を個別機能訓練として算定すると否認される
  • 指導員が生活相談員を兼務して専従が崩れる。専従の時間帯に他の業務をしていると要件を満たさない
  • (Ⅱ)のLIFE提出が遅れる。提出できなかった月から算定不可。科学的介護推進体制加算と同じ管理

経理・管理側の視点

ミナ

経理から見ると、この加算で気をつけるのはどこですか?

ジムチョー

記録が1つ欠けると返還になる構造だから、返還のリスクを金額でつかんでおくことなんだ。加算の額と並べて、どのくらい戻すことになりうるかを見ておこう。

個別機能訓練加算(Ⅰ)イの56単位は、通所介護の基本報酬(通常規模型・7時間以上8時間未満・要介護2で777単位)の7%ほどにあたる。この加算の管理は「記録の管理」で、記録が1つ欠けると返還になる構造なので、返還リスクを金額で把握することが経理側の役割になる。年間322万円の加算に対して、記録の不備率が10%なら32万円が返還の期待値。

現場の記録負担を減らすには、居宅訪問・計画・実施・評価を1つの様式にまとめ、介護ソフトで期限を管理する。記録に使う時間が月20時間増えても人件費は3万円程度で、返還リスクと比べれば安い。

ミナ

記録に月20時間かかっても、返還のリスクと比べれば安いということですね。

ジムチョー

年間322万円の加算で不備率が1割なら、返還の期待値は32万円。記録の人件費3万円と比べれば答えは出るよね。

出典

記事中の計算例は概算です。実際の算定・請求は自治体および国保連への確認が必要です。制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。